4章 西の都市編 7話 避けられる依頼
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向かい側のソファで横になっているミオを見ながら、ゆっくりとした時間を過ごす。リルとクウコは、俺の横に座りミリナは足元でゴロゴロしている。
「・・なんか、腹減ったな」
無意識に呟いた俺の声に反応したのか、3人のケモ耳がピコッと動いた。
「肉串・・食べる?」
ズズイ!!!
3人の顔が一気に近寄り、目が輝いて口が半開きになり、せっかくの美少女が残念なことになっている。
「あいよ・・」
アイテムボックスから、グリス特製の肉串を取り出し3人に渡すと行儀良く食べ始める。
モグモグ・・モグモグ・・モグモグ・・
この部屋に肉串の香りが充満し、食欲をそそられてしまう。俺はリル達の食べる様子を見ながら肉串を食べていると強烈な視線を感じてしまう・・。
恐る恐る俺に向けている視線の主を見ると、横になったままのミオが涙を流しながら目を見開き、瞬きをする事なく俺を凝視している。
「・・おぅ・・ミオ、起きていたなら言えよ・・マジ恐怖だよ・・はい、ミオの肉串」
アム・・
肉串を咥えてから体を起こし、食べ始める・・あの頃と変わらない本能的な食べ方だ。
「ミオ、調子はどう?」
「・・はい。だいぶ良くなりました」
「さっそくだけど、ステータスを見せてくれるか?」
「はい、ご主人さま」
ミオは、食べ終わるとステータスを表示し俺に見やすくしてくれる。
ステータス
名 ミオ=リンクス(女)
種族 猫人族 17才
職業 冒険者 Fランク
HP 600/600
MP 500/500
魔法 水属性 火属性
スキル 気配探知Lv3 暗視Lv5 双剣術Lv5 鑑定Lv3 念話Lv1
称号 ???
隷属 ハル(戦闘奴隷)
ミオのステータスを全て確認し、隷属が俺の名に変わっていることが嬉しかった。そして、久しぶりにアレを使ってみる。
『ミオ・・聞こえるかい?』
『こ・・これは・・』
念話スキルを使いミオに問いかけてみた。
『ちゃんと通じたみたいだね・・良かった』
『はい、またご主人さまとの繋がりを感じられるなんて・・ミオは幸せです』
すると、左に座っているリルが俺の袖を引っ張り顔を見上げ笑顔になる。
「リル、どうかしたの?」
『リルも念話を使えるよ〜』
『クウコちゃんもだよ〜』
「マジか!」
『ミリナも!』
まさか、リルとクウコとミリナが念話を使えることに驚き声を出してしまった。
『もう、ご主人さまは驚きすぎですよ〜』
獣人シスターズにからかわれてしまった俺は、溜息をついて念話を終わらせた。
「ミオも起きて、お腹も落ちついたことだし冒険者ギルドに行こう」
モンスを呼び出し、今回の手数料を払おうとしたが、頑なに断られてしまい仕方なく奴隷商を後にした。
裏道を抜けて大通りに出ると、すぐそこに目的の冒険者ギルドがある。このままギルドに入ると、依頼掲示板の依頼票を整理している金髪の女ギルド職員と目が合う。
「どうも・・」
「・・あ、あなたは」
「勇者様の力で、この街は救われましたね・・」
「え?・・あっはい。今まで通り、この街で生きていけます。ゆ・・勇者様には感謝しかありません」
そう言った金髪の女ギルド職員は不本意そうな感じだったが、依頼票の整理が終わると事務所の奥へ消えていく。
「さて・・どんな依頼があるかな?」
この依頼掲示板に張り出されている依頼票は、街の復興がほとんどだった。俺が眺めている間にも後から来た冒険者パーティーは迷わず、復興の依頼票を剥がし受付へ持って行っている。
その中で埋もれていた1枚の依頼票が目に入った。
依頼
北の地下ダンジョンでの冒険者捜索。報酬は現地で前払い。掲示から受付期間は10日以内とする。
「珍しい依頼だな・・」
その依頼票を手に取ると、掲示日は6日前だった。なぜだか気になり、これを受理することに決めて窓口へと向かう。
受付窓口の列に並び、俺に順番が来ると受付嬢は先ほどの職員だった。
「コレ、お願いします」
「はい、しばらくお待ちくだ・・本当にコレを受けるのですか?」
「そうだけど・・何か問題でも?」
「えっと、この依頼は・・いえ、なんでもありません。ギルドカードを提示してください」
ついでに、パーティーを作りこの依頼をやることにした。
「そ・・それでは手続きが済みましたので、こちらの細部依頼票をお読みください」
受付嬢に渡された手紙には、受理後速やかに北のダンジョン入り口まで来いとのことだ。細部の内容は合流した時に伝えるらしい。
「なんか、前にもあったような手紙だな・・・・」
そして、依頼を受理した俺達はギルドを出て宿屋リメインに戻ることにした。部屋のドアを開けて中に入ると、リサ達は楽しそうに過ごしている。
「みんな・・突然だけど、明朝出発して北のダンジョンに行って来るよ」
「ちょっと待って・・ハル、突然どうしたの?」
リサが不安そうに聞いて来る。
「ギルドの依頼でさ、どうも気になった依頼があって勝手に受けてきちゃったんだ。内容は、北のダンジョン内で冒険者捜索なんだ」
「そう、わかったわ・・・・ハルが決めたなら」
「ありがとう、リサ」
リサは俯いてしまったため、俺は寄り添い抱きしめる。
「私たちは、ここにいるのかい?」
ルーシーが率直なことを聞いてくる。
「あぁ、北のダンジョンは、街の離れた位置にあるからね」
「ハル・・私とカラは一緒に行きたいの・・・・」
「リサ・・カラ・・本気なのか?」
リサとカラは頷き、2人の後ろにいるルーシーは苦笑いで溜息をつく。
「なら、私も一緒に行くよ」
「はぇ?・・ルーシーも?」
「なんだい?私はダメなのかい?」
物凄い剣幕で迫ってくるルーシーに負けて、全力で首を横に振り否定する。なんだか、最近若返ったルーシーに逆らえない俺がいるような気が・・・・。
そして、俺たちは明日に備えて早めに就寝し静かな夜を過ごした。
翌朝、モーナに別れの挨拶をして宿屋リメインを出発した俺達は馬車を引き取りに行く。長い間寝てしまった俺の代わりにリサ達が定期的に様子を見ていてくれたので、売り払われることはなかった。
馬車を引き取った後に、荷台にテントを広げて寒さを凌げる空間を確保して、それぞれの荷物を載せていく。俺は、相変わらずの御者のためテントに入れない。
俺は、出発をしようとした時に、リルとクウコが俺の横に座ってくる。
「お?なんだ、一緒にいてくれるのか?」
「ハル、テントにベッド置いて・・」
リルが、荷台にベッドを置いてと所望されている。
「・・・・ん?」
「揺れるから、ベッドがいい〜」
クウコもベッドを所望されている。
「・・・・はぁ。ちょっと、待っててな」
俺は、一度みんなをテントから出して丁度いいサイズのベッドをテントに置いて馬車の荷台の後ろに出る。
「みんな・・入っていいよ〜」
「「わ〜い!!」」
はじめにリルとクウコが走ってきたので、捕まえて荷台に投げ入れる。2人は荷台でキャッキャ騒いでいる。それを見ていたミオとミリナも目を輝かせ、長い尻尾をピンッと立てて走ってくる。
「はぁ、しょうがないな・・」
ミオを捕まえて、一度屈ませたタイミングで軽く口付けをして荷台に放り投げる。
「うにゃっ!」
ミオは俺の予想外の行動に動揺し、小さな声を漏らし荷台へダイブして行く。次に来たミリナにも同様のことをしてやる。
「んにゃにゃ」
ミリナもミオと同じ反応をし荷台へダイブして行った。残りの3人に流石に獣人シスターズと同じ扱いはできないため、踏み台を置いて荷台に乗ってもらう。
ルーシーが先に乗り、次はカラが乗り込む。その瞬間に腕を掴み抱き寄せて軽く口付けをして見送る。
「・・バカ」
ポツリと囁くカラは、顔をほんのり赤くさせて乗り込んでいく。
最後に乗るリサには、何かを期待している顔をしている。カラと同じじゃダメだと思い、俺は右手を差し出す。
「・・ありがとう」
そう言ってリサは左手で俺の右手を掴み踏み台に足を載せて荷台に乗るが、まだ俺は行動しない。一瞬リサが動きを止めたが何もしない俺に諦めたのか、そのまま荷台に乗り込んで行く。
その直前に両手でリサの腰を持ち抱き抱えたまま振り向かせ、強めに抱擁し驚いたリサに口付けをする。
「んっ・・・・もう、ハルったら」
「サプライズだよ・・」
「なにが、サプラんっ・・・・」
言い返そうとするリサにもう一度口付けをして、唇を離し見つめ合った後にお姫様抱っこをして荷台のベッドに乗せた。
この時のリサの顔はずっと涙目で赤い顔をしていた。
「みんな乗ったから、出発するからね〜」
「「はぁ〜〜い!!」」
今回も御者の役目は俺だ。後ろの荷台は改造してテントをを張りベッドも置いたから、みんなは快適だろう。
馬車を動かし、北のダンジョンに向け出発する。後ろからは楽しそうな声が聞こえるが、少しして隣にミオが座ってくる。
「ミオ、寒くないか?」
「ちょっとだけ寒いですね、ご主人さま」
アイテムボックスから、残りすくない大きめの毛布を取り出し俺とミオを包むようにした。
「はぁ〜暖かくて気持ちいいですぅ〜」
一つの毛布に包まれた俺とミオは、互いの体を密着させていたが、ミオは向かい合うようになり膝の上に座っている。
毛布の中で、ミオの尻尾がユサユサと動いている。物凄くモフりたい衝動に狩られるが、腕を入れると隙間から冷気が入ってきそうなので諦めることにした。
順調に街の大通りを抜けて、修復が終わった北門を通過し街の外へ出ると同時に、気配探知スキルを発動し警戒する。
北から吹く風が冷たく気晴らしに、ネコ耳を弄っていくたびに体を左右にクネクネさせ熱い吐息を漏らすミオの体温が急激に上昇してしまった。
「んにゃ・・はぁ、はぁ・・ご、ご主人さま・・気持ちいいです・・ミオは・・はぁ、はぁ・・ダメです」
ミオのネコ耳を弄りすぎたことを反省し、脱力し寝てしまったミオをそのままにして馬車を走り続けさせる。
道中に、俺を呼ぶリルとクウコが顔だけを出しニコッと笑い片手をフリフリ振って、またテントの中に戻る。その度に探知していた遠くの魔物が無慈悲に絶命し探知から消えて行く。
「お前ら、マジで強いな・・もう勇者なんていらなくねーか・・・・」
そう呟き、胸元で寝ているミオを毛布の外から抱き寄せて北のダンジョンへ順調に向かう俺達だった・・・・。




