4章 西の都市編 6話 隷属ミオの立場
「ハル、あんたは勇者様に敵対するのかい?」
ルーシーが真剣な顔で俺に問い詰めてくる。
「・・・・・・」
俺は、すぐに応えることができないでいると・・。
「ルーシーさん!ハルは、勇者に敵対なんてしていません・・」
リサが俺を庇うようにルーシーに反発する。
「そうかい?街へ買い物に行ったときに・・・・街の人々が話していたんだ」
あまりにも、あの勇者といざこざがあった状況を住民は見ていない。きっと騎士団の連中が住民に紛れて噂話を流したのだろう・・。
「ルーシーさんは、どっちを信じるのですか?」
「・・・・聞くだけ野暮だったね」
ルーシーは、溜息をついて窓際へ移動し外を眺めていると、リサとカラがルーシーの側へ歩み寄った。
俺はソファに座り、横にリルとクウコを座らせるとミオが俺の膝の上に座り尻尾を俺の顔の近くで揺らしている。
ふりっ・・ふり・・
これはきっと、ミオは続きをシテ欲しいアピールだと気付き黒く長い尻尾の毛並みを確かめるように撫でてやり、先っちょを弄るのも忘れない。
「・・にゃっ」
ミオの小さく短く発した甘い声を聞くと、今度は茶色の尻尾がフワフワと現れてきたから同じように軽く掴んで先っちょを弄りはじめる。
「・・んにゃっ」
ミオより快感に慣れてない感じで声を漏らすミリナが、俺の足元で座っている。しばらく弄っているとミオとミリナは満足したのか、ゆっくりと俺から離れてベッドで横になり大人しくしている。
「・・そうだ、街でも見てくるかな」
ソファから立ち上がり、今から街に出掛けてくることをみんなに伝えると、リルとクウコそしてミオとミリナの獣人シスターズが俺と一緒に行くと強請る。
「それじゃ、リル達と行ってくるよ。暗くなるまでには戻ってくるから、留守番よろしくね」
獣人シスターズを連れて部屋を出る俺は、目的もなく街を散策する事に決めた。大通りを歩いていると商店の壁に何かが貼られている。
気になる俺は、近くの商店に入り、陳列されている商品を見ながら内容を読んでみる。
告
都市ニシバルを襲い掛かってきた、前代未聞の多数の魔物を王都から参られた、勇者オキタ様一行と王国騎士団が魔物を排除し、この街を救ってくれた。都市ニシバルは、勇者様方を手厚く歓迎しなければならない。
3代目 ニシバル領主 クンソ=タレッサ
「本当は、ご主人さまとリルちゃん達が守ってくれたのに・・・・」
ミオがそっと背中から俺に抱きつき、耳元で囁いてくる。
「・・まぁな」
そっと呟くようにミオに伝えて、商品の品定めを再開する。
「どうですか?欲しい物は見つかりましたか?」
白髪の老人店主が声をかけてきた。
「・・そうですね、初めて見る物があるので目移りしていますよ」
老人店主は笑顔で頷き、ゆっくり見ていくよう言い店の隅に置いてある椅子に座った。その頃のリルとクウコは買い物に飽きたようで窓際に並んで座り外を眺めている。
俺は、いくつか気になった商品を手に取り、金貨2枚を払い購入した。
「ゴメン、遅くなった・・次に行こう」
そう言ってリル達を呼び商店から出て、大通りを歩き裏道に入り、奴隷商に向かうが裏道に入った途端にミオとミリナが不安がる様子が見えた。
「ミオ、ミリナ大丈夫だよ。ミオとの奴隷を改善するために行くだけだから」
そう言ったが、ミオとミリナは俺の背中にベッタリくっつき歩いている。
しばらく裏道を歩いて行くと、奴隷商の看板を掲げている建物の前で立ち止まり眺めていると、待っていたかのように建物のドアが開きモンスが出てきた。
「・・これはこれは、ハル様でしたか。どうぞ中へお入りください」
「・・あっはい。お邪魔しますね」
俺が奴隷商の建物に入ると、後からみんながついてくる。モンスの案内により。階段を上がり大きめな部屋に入り大きめのソファに座った。
モンスが、遅れて俺の正面に座る。
「あの、モンスさん・・こないだ話したミオのことなんですが・・」
正面に座っていたモンスは、視線を俺からミオへ動かす。
「あぅ・・」
静まり返る部屋の中で、ミオが耐えきれず声を漏らす」
「・・・・なるほど、そういうことでしたか」
モンスは。高レベルな鑑定をミオにしたのだろう。そして、何かに感づいたようだ。
「ハル様、1つ質問をよろしいでしょうか?」
「・・はい。なんでしょうか?」
俺に緊張が走る。
すると、モンスはカバンから小さな木箱を取り出し1つの小さな宝石を出して見せてくれる。
「このような宝石をつけた装飾品を見た覚えはありませんか?」
赤い宝石・・いや、よく見ると赤黒い宝石だ・・確かにどこかで見た事が数回ある。
「・・こ、これは!」
「どうやらご存知のようですね・・」
この宝石の正体を知っているモンスの顔を、俺は凝視してっしまった。
「ハル様、これは高位魔術師が特定の相手を任意のタイミングで操る事ができる宝石です。また、魔術師でなくても身に付けさせてしまえば、誰でも操れます」
「そ・・そんな事が?」
「はい。普段は普通の状態なので周囲は気づきません。しかし、登録された主人の声を聞くと本人の意思とは正反対の行動を取ります。
「本人の正反対の行動を?」
俺は、いつの間にかモンスの言葉を聞き入ってしまい、あの時のアイナの行動が脳裏を過ぎる。
「はい」
「それじゃ・・親しく話していた相手を主人の声を聞くと暴力を振るうとか?」
「・・もちろんです。本人の意識では抗えず、好意を持つ相手にでも強烈な殺意を持って行動します。もちろんの事ですが、その時の記憶は残っているそうです」
俺の頭の中で何かが繋がろうとしてモヤモヤしている。
「あの・・記憶操作も?」
モンスはゆっくりと頷く。
「もちろんです。記憶操作の長短は不明ですが、全くの別人になり関わった者の記憶を全て封印されますが、術が解けると封印された記憶は徐々に戻ると言われています」
いつの間にか前のめりになって聞いていた俺は、ソファに背中を預けて深い溜息をつく。
「そうですか・・・・」
隣に座るミオに視線を向けると、コクッと頷き微笑んでいる様子を見て安心した俺は、頭を優しく撫でた。
「ハル様、本題に入りますが・・ミオさんのステータスの隷属を確認させていただいても?」
「・・そうでしたね、ミオいいかな?」
ミオは頷き、疑う事なくステータスを表示させ一番下にある隷属をモンスに見せた。
隷属・・イノストール=死亡 (略奪強制不法奴隷)
モンスは、隷属欄を見た後に深く溜息をついた・・。
「ミオさんをハル様から奪った貴族は、すでに死んでいるのですね・・・・」
「あぁ、俺が殺したんだ・・」
モンスは、難しい顔をして右手で自身の顎を触っている。
「このままでは、ミオさんの身が危険なので急いでやりましょう」
「いったいどうすれば?」
モンスは自信があるのかニヤついている。
「このモンスにお任せください。これでも最上級の隷属魔法を持っていますので・・さらに隷属を上書きしましょう」
俺は、モンスの言われるがままにミオの体に浮き上がった奴隷紋に大量の血を垂らしていく。すると黒く濁っていたミオの奴隷紋が赤くなり、そして白くなると最後に虹色に輝きを放った後はゆっくりとミオと同じ肌の色に変わり奴隷紋が消えた。
モンスと俺は、力尽き座りこんでしまう。ミオは、モンスが座っていたソファで横になり意識を失っているがリル達が見守っているから心配はいらないようだ。
「モンスさん、これで大丈夫なのでしょうか?」
「・・はぁ、はぁ、だ・・大丈夫ですよ。彼女が起きたらステータスを確認してあげてください」
「・・わかりました」
俺は、アイテムボックスから魔力回復ポーションを取り出しモンスに渡し、俺は体力回復ポーションを一気に飲み干した。
「あの・・ミオが起きるまでこの部屋にいても?」
「よろしいですよ。私は、業務のため部屋を出ます。何かあればお呼びください」
モンスは言い終わると部屋を出て行った・・。
俺は誰も座っていないソファに座り、3人の名前を呼んだ。
「リル・・クウコ・・ミリナ・・」




