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4章 西の都市編 5話 再生と獣人の気持ち 


 崩れ去った北門から街に入り、負傷した冒険者達が転がっている姿や絶命したウォーウルフを横目に大通りを歩き続ける。


 北門から離れて行くと、戦闘の傷跡が無い街並みが広がっている。どうやら、地元冒険者達が食い止めたのだろう。



「・・ここまでくれば、大丈夫だろう」


 隠密スキルを解除し、人の気配が無い大通りを歩き、リサ達が待つ宿屋リメインを目指す。


「リル・・クウコ、帰ったらまずは湯浴みをしないとな・・」


「「・・・・・・」」


 2人は俯き黙ったまま歩き続いている。宿屋まではまだ距離があり、いつもなら抱っこを所望するリルとクウコなのだけど今はそんな雰囲気は無い。


 暗く静かな街の道を歩くのは、不気味な感じがする。しばらく歩いていると、部屋の灯りがついている宿屋リメインの前にたどり着いた途端にリルとクウコが足を止めて動かなくなる。



「さぁ、入ろう・・リル、クウコ」


 右手で2人の頭を交互に撫でてやり、宿屋の中へ入るよう催促するが、2人は顔を上げケモ耳を力なく倒し今にも号泣しそうな表情になっている。


「「・・・・・・」」


「・・そんな顔すんなよ・・」


 しゃがんだ俺はリルとクウコと視線の高さを合わせ、右腕を大きく回し2人を抱き寄せ頬ずりをする。


「「・・ハル」」


「右腕だけでも、リルとクウコを抱きしめることはできるさ・・」


 リルとクウコは両目に限界まで溜めてしまった涙を流し、静かに泣いている。


 俺は、左腕でリルをなんとか抱え上げクウコを右腕で抱き上げてから宿屋に入って行く。抱き抱えられた2人はギュッと抱きつき黙ったままだ。


「・・いつまでも、俺達は一緒だろ?左腕は、なんとかなるさ・・」


 そう言いいながら歩き始めると、涙を流しながらリルとクウコが頬ずりをして謝ってくる。それをあやしていると、モーナとグリスが出発する時と同じ場所に座っていた。


「戻ったよ・・もう、魔物からの襲撃の心配は無いから」


 モーテとグリスは、俺を見つめ信じられないような顔をしている。


「王都から・・王国騎士団と勇者様一行が魔物から救ってくれたんだ・・」


 それを聞いて安堵した表情になる2人は、抱き合い喜んでいる。俺は、2人の様子に満足し何も言わず階段を上ろうとした時にモーナに呼び止められた。


「ハルッ!・・・・あんた、その腕・・」


「・・あぁ、コレか・・戦闘の代償かな・・」


 そう言い残し階段を上がって部屋の前で立ち止まってしまう俺・・。


「これは、ドアを開けられないな」



 ガチャ・・


 部屋のドアが少しだけ開き、隙間から覗く猫目と視線が重なる。


「・・ご主人さま!!」


 一気にドアが開いて、ミオが抱きついてくる。


「ただいま、ミオ」


「お帰りなさい」


 ミオは、そっと離れてから部屋に入り続いて俺達も部屋に入る。


「「「おかえりな・・さ・・い」」」


 俺達の帰還を笑顔で出迎えてくれるが、リサ達の視線が俺の顔から腰あたりに集まってしまうと、そこにリサが最初に口を開く。


「ハ・・ハル!・・そ、その手が・・左手が・・」


 リサとカラは口を両手で多い目を見開き涙を流し、ミオとミリナは呆然としていて、ルーシーは驚きのあまり床に座り込んでしまった。


「驚かせてゴメン。フォレストベアにやられたんだ・・でも、俺は大丈夫だから」


 リルとクウコが俺から飛び降りて床に頭を擦り付き泣きながら、みんなに謝っている。


「ちょ・・やめろよ2人とも」


「「わたしたちが・・わたしたちが悪いの・・ごめんなさい。ハルの近くに、側にいたのに・・・・」」


 リルとクウコが感情をむき出しにして泣きながら謝り続けている姿に、誰も咎めようとする者はいないことに安心した俺は、謝り続ける2人を右手で一気に抱え込み湯浴み部屋に向かう。


「ごめん、みんな。ちょっと2人を湯浴みさせてくる」


 キィ・・バタン!!


「リル、クウコ・・もう泣かないでいいから」


 俺は、ステータスを表示させ魔力の回復具合を確認するとほぼ全回復していたことに安心していると、クウコが小さな声で聞いてくる。



「ハルゥ・・なにかするのぉ?」


「ん?・・まぁな。とりあえず湯浴みだ」


 石造りの大きめ浴槽に生活魔法ボイルを使い熱くなった水を溜めて、水魔法で水を注ぎ足し入れるように調整した。


「服を脱いで一緒に入るよ」


 自分の服を脱ごうとするが右手だけでは上手く脱げず踠いていると、先に脱ぎ終わっていたリルとクウコが手伝ってくれて脱ぐことができた。



「あ・・ありがとな」


「「 うん 」」


 3人が裸になれた後は、一緒に浴槽に浸かる。まだ、リルとクウコは背丈が低いため胡座をかいている俺の足の上に並んで座ることで肩まで浸かれている。


 気持ちのいい温度で浸かっていると、今日の疲れが取れそうな感じがする。リルとクウコも体が温まって気持ちがいいのか、体を俺に委ねてくる。


 しばらく温もった後に、髪と身体を綺麗に洗って乾かした後に下着を履かせ寝間着に着替えさせ、湯浴みの部屋を出てソファに座らせ、果実水を飲ませ水分補給をさせた。


 リルとクウコに果実水を飲ませている間に、俺は真ん中のベッドで横になる。


「ハル・・(ご主人さま)・・」


 リサとカラが俺の左側に腰を掛けて左腕を愛おしそうにそっと触れ、ミオが右側に座りにくる。


「リサ、カラ・・ミオ。  俺は大丈夫から・・もう遅い時間だから寝よう」


 

 そう言って今夜は、みんなに寝てもらうことにしてもらった。部屋の灯りをリサに消してもらい、それぞれが決めたベッドで横になる。今夜は、誰も俺のベッドには来ないようだ。


「・・なんか寂しいけど、ちょうどいいな」


 俺は目を瞑り寝た振りをして、みんなが寝静まるのを待つ。しばらく時間が経ったあたりで、アイテムボックスから切断された左手を取り出す。



「・・まさか、自分にやるなんてな・・・・よしっ」



 左腕の切断面同士を圧着させ、オリジナル再生魔法グルーを発動させると切断面がゆっくりと溶け始め腕が接着されていく。


「はぁ、はぁ、さすがにこれだけじゃ感覚は戻らないのか・・」


 再生魔法グルーを発動し、左腕を接着させただけでも全身が汗でビショビショになってしまったため、掛けていた布団を剥いで部屋の少し冷えてきた空気を感じて身体を冷やす。


「次は・・再生だな・・・・ふぅ」


 心を落ち着かせ呼吸を整えてから、オリジナル再生魔法リジェネレーションを発動すると左腕が赤黒い光に包まれて熱を帯びていくと同時に、腕の中に小さな生き物が動き回る感覚と同時にフォレストベアに踏み抜かれたときに似た激痛が走る。



「ぐぁ〜〜あ゛あ゛あ゛あ゛」


 一気にあの激痛に襲われた俺は、全身を捻り発狂ししてしまう。我慢できずに布団を噛んで耐え忍んでいると、リルとクウコが叫びながら飛びついてくる。


「「ハル!」」


「ぐぅぅ〜う゛う゛う゛う゛・・くっ」


 右手で強く掴んだままの激痛の左腕をベッドにねじ込み、耐えようとするが意識が飛びそうな状態が永遠に続く絶望感に支配されていく。


 突然、部屋が明るくなり視界にリサやカラ達が見え何か言っているが激痛との闘いで返事すらまともにできない。


 このまま激痛に苦しんでいると、左手を握られているような感覚を僅かに感じながら意識を手放してしまった。





 ふと目が覚めると、部屋の天井が視界に入る。


 ふわっ・・ふわっ


 天井を見つめていた視界に、黒と茶色の尻尾が交互に入ってくる。


 しばらく交互に見える尻尾を眺めていた俺は、次に視界に入った時に掴もうと決める。


 ふわっ・・


 パシッ!


「にゃっ!」


 黒い尻尾を左手で掴む。



 ふわっ


 パシッ!


「んにゃ!」


 茶色の尻尾を右手で掴む。


 そして2本の尻尾の先っちょを弄る。


「「んにゃ〜〜〜〜!!」」


 部屋にミオとミリナの甘い声が響き渡り、俺に身体を寄せてくる。


「ん〜まだ左手は馴染んでないな・・」



 ガチャッ


「「ハル!!」」


 部屋のドアが開いて、リルとクウコが入って俺にダイブをかましてくれた。


「うおっ・・と」


 ミオとミリナの尻尾を解放し、リルとクウコをベッドで横になったまま両手で抱き止める。


「ご主人さま・・やっと起きてくれました」


 左に座っているミオは涙目で口を開く。


「ミオ・・そんなに寝てた?」


「はい・・30日ほど・・・・」


「えっ?」


 こんなに長く寝てしまうとは、思わなかった俺は驚いてしまった。


「よかった、目が覚めたのね」


 カラがベッドのそばに立ち、覗き込むような姿勢で俺を見てくる。


「カラ・・ゴメンな」


「謝らなくて良いよ。それよりも・・」


 カラが顔を向ける方に視線を動かすと、クシャクシャな顔をしているリサが立っていた。


「ハルゥ・・起きてくれて良かった・・怖かったよ〜」


 号泣するリサをカラが優しく抱き、落ち着かせている。


「ハル、あんたに1つ頼みがあるんだけどさ・・」


 最後に部屋に入ってきたルーシーが告げてくる。


「ルーシー・・なんだい?」


「リルとクウコに食事を与えてくれないかね?あんたが寝てる間は、1度足りとも何も口にしてくれないんだよ・・」


 ルーシーに言われたことで、抱きついているリルとクウコを抱き上げ顔を見ると、2人と頬がこけて唇がカサカサになっている事に気付く。


「リル、クウコ・・」


 そのまま上半身を起こしベッドから立ち上がると、2人の体重が激減していることがわかるほど軽くなっている。しかも、自慢の銀髪と金髪に艶やかさが無い。



 フラつきそうな身体を騙して、2人に食事を摂らせる事にした。


「ちょっと3人で飯食ってくるから」


 そう言い残し部屋を出て、宿の食堂に移動する。


 食堂に着くと、モーナがテーブルを拭いて回るところだった。


「おはよう、ルーシー。今からでも飯作ってもらえるかな?」


「ハル・・おはよう。任せな、たくさん作るから座って待ってなよ」


 モーナは、右手を振りながら、奥の調理場へと消えて行く。


 俺は真ん中に座り、左にリル、右にクウコを座らせてモーテの食事が出来上がるまでに、アイテムボックスから果実水入りの瓶と肉串を渡して食べさせ始めた。


 

 ゴクゴク・・ぷはっ・・


 モグモグ・・モグモグ・・


 リルとクウコは久しぶりの食事を夢中になって食べている姿を俺が眺めていると、モーテが食事を持って来てくれてテーブルに並べてくれる。


「はい、どうぞ!それにしても、本当にハルがいないとリルちゃんとクウコちゃんは食べないんだね・・」


 モーナは、不思議そうな顔でリル達を見ている。


「そうなんだよ。いくら顔見知りでも、その場に俺がいないと一切口にしないんだ・・」


 俺はモーテに伝えたあと、モーナが作ってくれた料理を食べ始めると、肉串を食べ終わった2人はモーテの手料理を食べ始める。


「モーナ、そういえば街の様子はどうなったの?」


「そうだね・・勇者様達が街の復興を手伝ってくれて、なんとかなったよ」


「そうか。それは良かった・・さすが勇者様だな」


 俺は、何も知らないような態度をとって勇者様に感謝をする仕草をするが、モーナは疑っているような目をしている。



「それにしても、いい食べっぷりだね・・あんなに拒絶していたのが別人みたいだよ・・」


「そうなんだよな・・俺が急に居なくなったらどうするんだか」



 ガチャガチャン!


 

 そう言った瞬間にリルとクウコが手に持って居たスプーンを落とし、俯いて動かなくなってしまった。



「「 うっうっ・・ひぐっ」」



 突然リルとクウコが大好きな食事をやめて泣いてしまう。


「・・リル?クウコ?どうした?」


「・・ヤダ・・いなくならないで・・」


「・・ずっと・・いっしょがいい・・」


 か細く震えた小さな声で、リルとクウコが口を開く。


「・・リル、クウコ」


 俯いたままの2人を抱き寄せて頭を撫でた俺は、2人に居なくならないことを約束し涙を拭いて食事を続けさせた。


「「ハル・・食べた・・」」



 リルとクウコが食事を食べ終わったので、2人の口を綺麗に拭いてから食堂を後にして2階の部屋へ戻る。


「みんな、待たせたね」


 すると、ソファに座って居たルーシーが立ち上がり俺に近づき聞いてくる。




「ハル、あんたは勇者様と・・敵対するのかい?」


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