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4章 西の都市編 4話 招かねざる援軍と・・・


 地面に横たわったままの俺は、右腕で両目を覆い眩しさを和らげていると不意に2人に抱きつかれる感覚が伝わり目を開けると、リルとクウコがグシャグシャになった顔で泣きながら抱きついてきていた。


「リル・・クウコ・・」


 2人の名前を呼ぶと、リルが涙ながら口を開く。


「・・ハル、魔物は全部消したから・・だから・・わたしたちを捨てないで・・」


「・・・・リル」


 2人は俺の失った左腕に責任を感んじているのだろうか、小さく震えている。


「なに言ってんだ・・2人を見捨てるだなんて。あの噴水広場で出会ったてから一度も考えたことないぞ。まぁ、2人一緒に頭を撫でたり抱っこしてやることが、できなくなったけどな」



「「・・・・・・うえ〜ん」」

 

 2人が急に号泣してしてしまった。


「おいおい、こんな場所で泣くなよ・・」


「「・・だって・・だって・・」」


 リルとクウコが、これ以上ない感じで密着してくる。2人とも横になっているため泥だらけになっても構わないようだが、さすがにこのまま宿に帰るとリサ達になんて言われるか・・。


 しばらく3人で横になっていたため俺の体調も回復し、ゆっくりと起き上がる。だけど、泥だらけのリルとクウコはべったりとくっついたままで泣き続けている。


「これは・・参ったな・・」


 抱っこができないため、非常に歩き難いがそのまま北門へと向かっていると気配探知に人族の集団が近づいていることに反応した。


 泣き噦る2人を俺の背後に回し、迫り来る人族の集団に警戒すると少しずつ騎乗している姿が見えてきた。



「・・あの格好は、騎士団か?」


 先頭を進む騎士が右手を上げると速度を落とし、俺達と距離をとって止まる。


「ここの魔物達は、貴様らがやったのか?」


 騎乗した男が見下した口調で言ってくる。


「・・だったらどうした?」


 俺が質問を質問で返すと、騎士の手が剣に添えられる。


「貴様っ!この王国騎士団団長の私に無礼だぞ・・」


「・・なんだ、ハイド騎士団長様か・・何しに来た?」


 すると、ハイド騎士団長の後方から野戦用の照明が打ち上げられ、周囲が一気に昼間のように明るくなり互いの姿がはっきりと捉えれるようになった。


「な・・貴様は、冒険者ハル」


「で、王国騎士団様が何しに来たんだ?」


 ハイド騎士団長が、馬から降りると側近の騎士も馬から降りて口を開いた。


「この平民冒険者がハイド騎士団長様に失礼だ!」


 俺は、脳筋騎士の話を無視して、ハイド騎士団長に問い掛ける。


「だから、このタイミングで王国騎士の団長様自ら率いて何しに来たんだ?」


「ふん・・大量発生した魔物の討伐だ!」


「本当にそれだけか?・・どうして騎士団が馬車まで連れているんだ?」


 ハイド騎士団長は、俺の質問に答える気はないようだ。話題を変えようとする。


「おい!・・先程の不可解な光がこの辺りで見えたのだが。教えろ!」


「・・光?そんなもの見なかったけどな」


 さすがに光を放っていた者がリルとクウコだとは言えないから知らないことにしよう。


「そんな筈はない。あの光を目指してここまで来たんだ」


 ハイド騎士団長と俺は、終わりの見えない会話を続け時間を潰していると騎士達が立ち並ぶ方から、数人が走ってくる気配を感じた。


「ハイド騎士団長!先程から止まったままなので様子を伺いに来ました・・」


 ハイド騎士団長に話しかける彼は、他の騎士が纏っている鎧とは別格の雰囲気を放っている。それは、白銀の鎧で青い線と独特な模様があった。



「これは、申し訳ございません。勇者オキタ様・・」


 ハイド騎士団長が深く頭を下げている。


 

 なに・・・・勇者オキタ?あの黒髪少年がいるってことは・・。



「もう!・・沖田くん、勝手に馬車から降りたらダメだよ!」


 向こうから黒髪少女琴音(コトネ)の声が聞こえてくる。どうやら彼女の忠告を無視して、勇者は馬車から飛び出し仲間が追ってきたのだろう。


「マズイな・・」


 今の俺は、左腕を失い魔力も十分回復していない状態で、しかもリルとクウコは絶賛泣き泣きタイム中だ。この状態で勇者が絡んできたら勝ち目はない。


 もう、魔物の脅威も去ったことだし・・ここは早く逃げよう。そう思い、北門へ歩き出した瞬間・・。


「「置いていかないでぇ〜! うわぁ〜ん」」


 最悪のタイミングで、リルとクウコが再び大声で泣き始めた。その声に気付いたのか、白銀の鎧を纏った勇者達がこっちに視線を向ける。


「おい!そこでなにしているんだ?」


「・・・・」


 俺は、勇者オキタの問いかけを無視して、北門へ向かっていると俺だと気付いたようだ。


「お!・・お前は!」


 勇者が抜刀し俺に斬りかかってくる!


「沖田くん!どうしたの?」


 勇者オキタは、琴音(コトネ)の声が聞こえていないようだ。


 俺は右手に持った剣で迎え撃とうと態勢をとるが、勇者が持つ剣が異様な力を纏っていることに気付くが遅かった。


 ガキィィィン!!


 ズシュッ


「がぁっ・・」


 勇者が思いっきり振りかざした剣を片手で受け止めたが、勢いを殺せず俺の剣ごと左肩を切り裂き食い込んでくる。


「お前!・・女の子を泣かせて、しかも2人も・・許さない!」


「ぐっ・・バカかお前は・・俺たちの関係を知らないくせに・・勝手な正義を・・クソがぁ・・」


 俺の言葉を聞いて、どんどん力を込めてくる。


「だまれ、黙れ!俺は・・お前を許さない!!」


 左肩に食い込んでいく剣に流れ出てくる血が伝わり、下へ滴り落ちて行く先にはリルとクウコがいる。


 力負けしてこの状態が続いてしまったため、リルとクウコの頭から顔にかけて俺の血で赤く染まっていく。


「ゆ・・勇者、なんだその剣は・・こないだは持ってなかったよな?」


 勇者は、ニヤリと笑い口を開く。


「ふん・・これはな、この俺の・・勇者様専用の聖剣だ!・・がぁっ」


 ゴンッ!


 勝ち誇っている顔の勇者に頭突きを食らわせて、勇者が怯んだ隙に腹を蹴飛ばし間合いを取ると勇者は顔を押さえて鼻血を出し顔が痛みに歪んでいる。


「沖田くん!なにやっているの?」


 痛がっている勇者の背後から、黒髪少女の琴音(コトネ)美音(ミオ)が近づき勇者の側に寄る。


「えっ?・・沖田くん、血が・・美音(ミオ)、治癒魔法を」


「うん、おねぇちゃん・・傷を癒せ!ヒール!」


 勇者の顔が光に包まれて出血が止まると、痛みも引いたようで俺を睨んでくる。


「クソッ!あの野郎は絶対にブッ飛ばす!」


 再び俺に向かって飛び出そうとする勇者を琴音(コトネ)美音(ミオ)が立ちはだかり、琴音(コトネ)が口を開く。


「ダメよ!私たちは大量発生した魔物の討伐に来たんだよ!だから、早くいかないと!!」


「・・その前に、まずはヤツをブッ飛ばしてからだ!」


 勇者が俺に指を指し宣告してくる、勇者の言葉を聞いてその指先を見ながら振り向き、俺は琴音(コトネ)美音(ミオ)と視線が重なる。


「おにぃ!(にぃに!)」


 勇者を置き去りにして、俺に駆け寄る2人だが、俺の異変に気付いたようだ・・。


「にぃに!肩を怪我してる・・傷を癒せ!ヒール!」


 あぁ、そっちか・・と思い左肩の傷口が塞がり治っていった。


「ありがとう、美音(ミオ)。まさか、こんな形で2人に再会するとはね」


「そうだね、たまたま西の都市へ出発する時に魔物大量発生の情報が入って、急いで騎士団と来たの」


 コトネが教えてくれるが、いったいどこからの情報何だろうか・・。


 そう思っていると、リルとクウコが落ち着いたようで、抱きついていたのをやめて俺から離れた。


「リルちゃん、クウコちゃん・・顔が・・」


 俺の血で真っ赤に染まったリルとクウコの顔をコトネとミオが驚愕の表情で見つめている。


「「・・顔が??・・どうしたの??」」


 リルとクウコは、俺の血で顔が真っ赤になっている自覚は無く不思議そうな顔をしている。


「あぁ、ゴメンな・・俺の血で2人の顔を汚してしまったんだ」


 右手に持っていた剣を地面に置いてアイテムボックスからタオルを取り出し、リルとクウコの顔を拭いて綺麗にしてやる。


 2人の顔を拭き終わった俺は、地面に置いていた剣を右手で拾い上げるとリルとクウコは背後に回ってコトネ達から隠れるように立つ。


「おい!・・勇者、まだ続きをやるのか?」


「ちっ・・・・もういい!琴音、美音、馬車に戻るぞ!」


 勇者はそう言って、剣を収めると先に騎士団がいる方へ去って行く。


琴音(コトネ)美音(ミオ)・・勇者行っちゃったよ・・」


「うん・・またね、おにぃ(にぃに)」


 2人は俺に近づき握手を求めてきて、このタイミングで左手を差し出すが、今の俺には左手を失っていて握手ができず動けずにいると、2人が俺のあるはずの左手を凝視し美音が口を開く。


「・・・・に、にぃに・・手・・手は?・・左手が・・」


「あぁ、コレか・・気付かれちゃったか・・」


 俺の背後にいる2人が、一瞬ビクっとしたことを感じたが、俺は肘から先を失っている左腕を前に上げて、コトネとミオに見せた。


「・・うそ、どうして・・・・どうしてこうなったの?おにぃ!」


 琴音(コトネ)が俺の左腕の肘に手を触れて、泣きながら聞いてくる。


「これは・・フォレストベアとの戦闘中に油断して、踏み抜かれたんだ・・」


「そんなのイヤ・・イヤだよ!にぃにの手が・・・・傷を癒せ!ヒール!」


 美音(ミオ)が泣きながら欠損した左手を復活させようとヒールを何度もかけてくれるが、欠損部位にヒールをかけても効果が無いことを知らないようだ。


美音(ミオ)・・欠損部位にヒールは効かないんだよ・・ありがとな」


「ヤダヤダ!・・わたしが・・治すから・・私が必ず・・治すから・・はぁ、はぁ」


 美音(ミオ)に魔力欠乏症の症状が出始めてきたが、気に留めることなくヒールを連発するが治癒魔法の光がどんどん小さく弱くなっていくのに、本人は止めようとはしない。


 俺は、そんな美音の姿を見て居た堪れなくなり剣をアイテムボックスに収納し、右手で美音を抱き寄せ強制的に止めさせた。


「もう、いいんだよ。ありがとう・・美音(ミオ)。俺は大丈夫だから、勇者の・・みんなの所へ戻るんだ」


 そう言って美音(ミオ)を離し、頭を撫でてやり続いてコトネも右手で抱き寄せて礼を伝えてから、頭を撫でてあげた。


 すると2人の顔はクシャクシャになって泣いてしまっている。まるで、リルとクウコと同じ状態だ。


 すると、ハイド騎士団長が近づき口を開く。


「お二人とも、そのような平民の近くにいては危険です。早く馬車へお戻りください」


 俺は、ハイド騎士団長に左腕のこと気付かれたくないと思い、別れの間際に琴音(コトネ)美音(ミオ)の耳元で囁いた。


琴音(コトネ)美音(ミオ)・・今日は戻るんだ。また、必ず会おう。そのときは、また可愛い2人の笑顔を見せてくれ」


 そう言い残し、隠密スキルを発動し琴音(コトネ)美音(ミオ)のでも視界から消える。


「「あっ!!おにぃ(にぃに)待って・・」


 琴音(コトネ)美音(ミオ)が離れた俺に手をのばでもしたが、空振りに終わり遠くを見つめる姿を見ながら、俺は北門から街の中に入り宿屋リメインに向かったのだった。


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