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4章 西の都市編 3話 油断 


「いったいコイツら何処からやって来たんだ・・」


 崩壊した北門を背に3人でフォレストベアも集団と対峙する。だが、リルとクウコが俺の隣りに来てからは無闇に襲い掛かる気配は無い。


「リル・・クウコ、夢中になり過ぎて魔物に囲まれるなよ」


 2人にそう告げてから、前に飛び出し正面にいるフィレストベアに一太刀食らわせるが、周囲のフォレストベアの動きを警戒しながらだったため、踏み込みが甘く傷は浅かったようで反撃がくる。


「おっと・・」


 傷を負わされたフォレストベアが、右前足で俺の頭を狙って来たのを左側に躱しガラ空きの背中から心臓に向けて突き刺す。


「セイヤッ!」


 グオォォォ・・


 苦しもがきながら倒れたフォレストベアの首を全力で切り落とし、左右から突進してくるフォレストベアに風魔法ウィンドカッターを扇型に放ち同時に斬殺する。


 目の前にいる大量のフォレストベアを斬撃と風魔法ウィンドカッターで一方的に斬殺していき順調に見えたが、多勢に無勢だった。


「このままじゃ、埒が明かないな・・リル!クウコ!」


 2人の名前を呼ぶと、近場の瓦礫の上に仲良く座り笑顔で手を振っている。


 もう片方で襲い掛かる魔物達を余裕で屠りさっているようで一安心する。


 すると、リルとクウコは、瓦礫の上に立ち上がり動きを止めて、迫り来る魔物をジッと見ている。


 あと数歩で届くまでの距離で2人が指を鳴らした瞬間に魔物の姿が消え、その場に血溜まりだけを残している。


 パチン!・・パチン!


 ビチャッビチャッ


 フリフリ・・フリフリ・・


 リルとクウコが指を鳴らすと魔物は姿を消し、その場に血溜まりが残る。


 そして、腕を可愛く振ると血溜まりが消えて何もなかった状態になる光景を見た俺は、身震いがした。


 「まるで命を操作しているようだな・・さすが神獣ちゃんだ」


 そう呟き、前を向いて自分の戦いに集中していく。


「ハァ・・ハァ・・」


 疲労を感じる前に体力回復ポーションと魔力回復ポーションを一気に飲み干し、瓶を魔物に投げて挑発する。


 速効性がないため、消耗しきってから飲んでいたら戦いに影響が出る。


 よく初心者冒険者が死に陥る原因の一つだ。


 気配探知スキルを常時発動し、範囲を近傍に限定に絞っているため、魔物の動向が手に取るようにわかる。


 フォレストベアの数も減り、オークとゴブリンが主な敵だ。


 ズルッ!


「うわっ!あぶね・・」


 同じ場所で戦っていたため、地面が魔物の血を吸うのに時間がかかり血の池状態になっていることに気付かなかった俺は、右足を取られてしまう。


 「クソッ・・場所を変えるか」


 絶命したフォレストベアを踏み越え、リルとクウコから離れた場所で戦うことにした。


 新しく陣取った場所で、オーク達は連携もなく声を荒げ突っ込んでくる。


「力任せのお前らは、隙だらけなんだよ・・ウィンドカッター!」


 俺を囲むように迫り来る7体のオークに重ねがけしたウィンドカッターを連続で放ち、先頭の列のオーク達の腰を切り裂き後方にいるオーク達にも死の風を叩き込む。


グアァァ


ズドドーン!


 気配探知に反応していた、オークがほぼ全滅したことを確認し探知の範囲を北に広げると、人族の集団がこちらに迫っていることがわかった。


「・・このタイミングで増援か?あの金髪ギルド職員は、そんなこと言ってなかったよな・・」


 増援を期待した俺は、無意識に気を抜いてしまい、背後から静かに迫る敵に気付くのが遅れた。


 それはちょうどアイテムボックスから果実水入り瓶を取り出し乾いた喉を潤していた時だった。



 ガァウ!!


 右足と腰に同時に衝撃を受けて、姿勢を崩し前のめりになってしまう。


 慌てて瓶を離し剣を小さく振って腰に噛み付いたウォーウルフに突き刺し口を離させるが、バランスを崩し左に回転しながら倒れこんでしまう。


 ギャンッ


 ドサッ!


「しまった・・・・ヤバい!」


 ガァウ!!ガァウ!!


 倒れこんだ俺は、すぐさま足に噛み付いているウォーウルフの頭に剣を突き刺して絶命させ、治癒魔法ヒールをかけ立ち上がろうとした瞬間、隙を狙っていたウォーウルフに囲まれ全身を一気に噛まれてしまい激痛のあまり剣を手から落としてしまった。


「ぐあ゛〜」


 俺の叫び声に関係なく、ウォーウルフに強引に引き摺られフォレストベアやオークのいる中へ連れて行かれてしまい周囲を囲まれてしまった。


 「ヤバいヤバい!!」


 全身に痛みを襲われ、冷静さを失っていた俺は、火魔法ファイヤーボールやファイヤーウォールを連発し炎を怖がる魔物に連発して放ち一気に魔力を失っていく。


 俺を噛み付いていたウォーウルフは灰と化し、自由になった俺は立ち上がり離れた場所に落ちている剣を取りに行く。


 そして全身の傷に治癒魔法ヒールを使い傷を治した瞬間に魔力欠乏症が現れてしまい視界が霞んでしまう。


「こんな時に出るなんて、ついてない・・がはっ!」


 背中に猛烈な衝撃を受けて、前方へ一気に吹っ飛ばされ地面を転がって大木に激突し止まることができた。


「ゴホッ・・ゴホ・・」


 咳とともに吐血し地面を赤く染めてしまう。立ち上がれない俺は、背中に衝撃を与えただろう奴が来るのを捉える。


 敵意を剥き出しにした、フォレストベアだ。


「ゼェ、ゼェ・・これは詰んだな・・」


 ガァウ!!ガァウ!!


 フォレストベアの足元をウォーウルフがすり抜けて、俺の全身を噛み付いてきた。


「ぐぁあああ〜!!」


 再び俺に襲い掛かる魔物達、魔力も失い全身の力が入らない俺には、抗う力が残っていない・・。


 すると、俺の側に立つフォレストベアがウォーウルフ数匹を剥がし遠くに投げ飛ばした。


「な・・何する気だ・・」


 グォオオオオオ!


 雄叫びをあげたフォレストベアが、二本足立ちになり片足を高く振り上げた・・。


「おい・・踏み潰す気なのか・・」


 躊躇いなく踏み抜いてくる足から逃げるため、体を捻るがウォーウルフが邪魔して思うように避けれない。


「クソがー!」



 ブチュンッ!ズズーン!!



「ぐぁがぁーーーー!!!」


 


 フォレストベアが俺の左腕とウォーウルフを一緒に踏み抜いた・・。


 左腕が激痛に襲われ、発狂する俺は左腕から血と体温が奪われていくのを感じる・・。


 俺の左足を踏み抜いたフォレストベアは、続いて俺の頭を踏み込んでトドメを刺そうと足を高くあげた直後に上半身と下半身が別れ崩れ落ち、俺に折り重なってきて俺は吹き出した血で全身を赤く染めてしまう。



 だんだんと寒さに襲われ、意識が遠くなっていく中で俺の名を呼ぶ声がする。



「「・・・・・・ハル・・・・ハル・・ハル!どこ??」」



「・・こ・・ここ・・ここだ・・」


 絶対に聞こえるハズのない音量で囁く俺の声を聴き分けたのか、2つの足音がする。


 この足音だけを聞くだけでも絶望の中で心が落ち着くのが不思議だ・・。


「「ハルッ!!」」


 たったあれだけで俺の居場所を正確に見つけてくれたようだ。


 上半身に乗っていたフォレストベアの重みから解放され呼吸が楽になった。


「・・はは、悪い・・ゆ・・油断してた。ちょっと引っ張りだしてくれないか?」


 まだ魔力欠乏症が治っていないため治癒魔法ヒールが使えない。このままでは血を失い過ぎてしまう。


「ハル、手・・手をだして」


 俺は右手をそっと出すとクウコが掴んでくれたようだ。


「ハル・・左手も・・リルがつかめないよ」


 リルは、俺が左腕の肘から先を失っていることに気付いてないようだ。


「・・ごめんな、リル。俺の・・俺の左手は・・もう、無いんだ・・」


「えっ?・・ここに・・あっ・・う、うそ。嘘だよね、ハル」


 リルが俺の二の腕辺りを持ち上げたようで、ちょうどリルの顔の高さに目の前で肘から先が千切れた状態を目の当たりにしてしまった。


「くっ・・。ごめんな、これじゃリルの頭を撫でれないよな」


「ハル・・これは魔物がやったの?」


「あぁ、そこで死んでるフォレストベアに踏み抜かれてしまったよ。きっと、あいつの下に千切れた左腕が埋もれてるはずさ」


 リルはソッと俺の左腕を置いて、絶命しているフォレストベアの亡骸を消滅させ、地面に溜まっている血糊を消して俺の左手を自分の顔に当てて大事そうに抱え持ってくる。


「ありがとう、リル。アイテムボックスに入れてくれるか?」


「・・うん」


 切断面はグチャグチャだが、その先は原型をとどめていることが救いだった。


 グォォォ


 グギャッギャギャ


 周囲には、まだ魔物が残っているようで俺達を囲んでいる。


「「ハル、ここはリル(クウコ)に任せてね」」


 2人は立ち上がり、真剣な面持ちで周囲を見渡す。


「お前達・・覚悟はできているんだろうな・・」


 リルが普段は出さない低い声と威圧的な口調で告げている。


「お前達には死を・・そして消滅を与えよう・・」


 続いてクウコもリルと同じように告げる。



 すると、俺の全身に優しい風に包まれ冷え切った体が温められていくと同時に光に包まれていくと傷口が塞がっていき痛みが無くなっていく。だが、千切れた左腕は元に戻ってはいない。


 俺はリルとクウコを見つめていると、2人が振り返りいつもの笑顔を見せて前を向いたその直後にリルが銀色の光に包まれはじめ、クウコが金色の光に包まれていく。


 銀色と金色の光に包まれた2人の長い髪が逆立っていき、普段は見せていない長い尻尾が立ち上がり大きく膨らんでいる姿が見える。


 「リル・・クウコ・・」


 ソッと2人の前を読んだ時、2人のケモ耳がピコピコッと動くのが見えたと同時に、さらに輝きを増し直視できなくなった俺は耐え切れず目を瞑ってしまった。

 


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