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4章 西の都市編 2話 北からの襲撃 


 カーン!カーン!・・カーン!カーン!カーン!・・カーン!カーン!


 鳴り続ける鐘の音が、民衆の不安を煽っているように感じる。


「みんな・・部屋で待機していてくれ。リルとクウコはみんなをこの部屋で守ってくれるか・」


 リルが、俺のズボンを掴む。


「ハルはどうするの?」


「ギルドに行って、状況を聞いてくる」


「クウコも行く!」


 俺はしゃがんで、2人の頭を撫でながら告げる。


「リルとクウコまでいなくなると、俺の大切な人達を守ってくれる人が少なくなってしまうから、ここにいてくれ。俺なら大丈夫だから・・ね?」


「「・・むぅ・・わかった」」


 俺は部屋を出て急いで冒険者ギルドへ向かうが、もう陽が沈んでいたため通りは暗くなっていたが、大勢の人々が荷物を背負い走り逃げて行く。


 逃げて行く人達の流れに逆らいながら冒険者ギルドに向かっているため、思うように進めない。


 かなりの時間を要し、やっとの想いでギルドのドアを開けようとしたら複数の冒険者パーティーが勢いよく飛び出して行く。


 落ち着いたところでギルドに入ると冒険者の姿は無く、ただ1人金髪エルフの女職員が椅子に座っているだけだったから彼女に状況を聞く。


「あの・・この鐘の合図は、どういう意味ですか?」


 金髪エルフの女職員は、驚いたような顔で答えてくれた。


「・・あ、あれは都市に多数の魔物が迫っている音です。あなたも、早く逃げてください!」


「でも、冒険者達が出て行くのを見ましたし・・大丈夫なのでは?」


 金髪エルフの女職員は、悲壮感を纏いゆっくりと口を開く。


「もう・・この都市は廃墟と化すでしょう、王都にいると聞く勇者様が居てくれたら・・救われたのかもしれません」


 彼女は、もう諦めているようだった。


「でも、この都市には警備兵や冒険者がいるじゃないですか・・」


「今の都市には、最小戦力しかいません。領主様の方針で警備の予算を大幅に削減されましたから」


「それじゃ、ギルド依頼討伐に出す資金も無く、まともに冒険者を雇えないと?」


 椅子に座り彼女は俯いたまま口を開く。


「・・はい。ですから、もう・・終わりなんです」


 この都市には、世話になっている人がいる。昼間の大通りですれ違った。子供の笑顔を失いたくない。


「わかりました・・俺も支援します!」


 そう言い残しギルドを飛び出して行く。背中から彼女に何か言われたが気にせず大通りに出てから気配探知スキルを発動した。


「たしかに、これじゃ勝ち目は無いな・・」


 気配探知に反応した魔物達は、ゴブリンが1000、ウォーウルフが400、オークが200でトドメにフォレストベアが300もいる。


 全部で1900もいる・・一方で都市の戦力は100人しかいない。

「距離と魔物達の移動速度を考えると、あと数分で北門に到達か・・」


 思っていたより時間が無い・・俺は急いで宿屋リメインに戻り中に入ると、モーナとグリスが1階の食堂の椅子に座り俯いていた。


「2人は逃げないのか?」


 モーナが顔を上げて、俺を見ると覚悟を決めていたような顔つきで話す。


「・・ハル、あんたこそ逃げないのかい?わたしらは、ここが大事な場所だから離れる訳にはいかないんだよ」


「そうか・・俺は逃げないよ・・なら。任せてくれ!」


 そう言って階段を一気に上がりリル達が待っている部屋に飛び込む。


「リル!クウコ!俺に付いて来てくれ!ミオとミリナは、この部屋でリサ達とこの宿を頼む!」


 リルとクウコは、俺が呼んだ瞬間に飛びついて来て、いつもの抱き抱えた体勢になりつつミオとミリナにリサ達の護衛を頼み部屋を出た。


「リル、クウコはこれを食べてくれ」


 走りながらアイテムボックスから出した肉串を渡し、食べさせながら北門へと急ぐ。


「ハル、喉乾いた・・」


 果実水が入った瓶をアイテムボックスから出してリルに渡し飲ませる。


 ゴフッ!!・・ブハァ・・ケホッケホッ・・・・うぇ〜〜ん!


 果実水を飲んでいたリルが誤嚥し、果実水を豪快に吹き出し号泣する。俺の顔も果実水でびしょ濡れになり泣きたい気分だよ、リル・・・・。


 リルが号泣したため急停止しながら見渡し、近場の座れる場所に2人を座らせた後、リルをあやす。


 続いてクウコも飲みたいと言ってきたため、果実水入り瓶を渡した。


「リル・・大丈夫か?」


 咳き込むリルの背中を優しくさすり、落ち着くのを待つ。


「う゛ぅ〜苦しいよ〜ハル〜!」


 まだ子供だったから、揺れる中では器用に飲めなかったようだ。

 

 水で湿らしたタオルでリルの顔を拭き、落ち着くまでここで休むことに決めた。


「ハル、クウコの顔も拭いて?」


 リルの横で座っていたクウコも食べ終わったため、綺麗に拭いてあげているとリルが甘えて抱きついてくる。


「ま・・待てリル、俺の服が乾いていないから・・」


「ヤダ・・」


 リルが抱きついて来て離れなくなった。それを見たクウコも抱きついてくる。


「これは、戦いどころじゃ無いな・・」



 ドドーーン!!


 俺たちが向かう方向で、大きな爆発音が響き渡る。もう、戦いが始まったようだ。


「リル、クウコ出発するよ!」


 2人の返事を聞かず抱えて走り出す。2つ目の角を曲がったところで北門が見え、そこには・・。


「おいおいマジかよ・・オークが北門の障害を突き破ろうするところでその周囲には、動く気配のない冒険者が地面に多数転がっている。


 なんとか指揮を執っている冒険者に近づき状況を聞く。


「あんた、ここの指揮官か?」


「あぁ、そうだ。ここが突破されるのも時間の問題だがな・・」


 障害の間隙をぬって、ウォーウルフが侵入し防御する冒険者を次々に集団で無力化させている。


「なぁ、ここの領主様は何してたんだ?」


「ふん・・ここの領主様はとっくに逃げているのさ!」


 俺は指揮を執っている男から信じられないことを聞いた。とっくに領主は逃げていると。


 ドドン・・ドドン・・


 もう最後の障害も崩れ落ちそうになっている。必死で冒険者達が踏ん張っているが、もうダメだろう・・。


「お前・・そういえば見ない顔だな?」


「あぁ、最近王都から来たばっかだからな」


「そうか・・王都にいる勇者様が来ていてくれたら、ニシバルの未来は変わっていたのかもしれんな・・」


 指揮官の男の士気も高くない。このままでは、街が魔物に蹂躙されてしまう。


「俺は、ハルだ!・・あんたの名前は?」


「ザンクスだ!」


 俺は、ザンクスに侵入しているウォーウルフの対応を頼むと、リルとクウコを降ろし北門の障害を突破しかけているオークの元へ向かう。


「ザンクス!・・門にいる冒険者に撤退指示を!」


 ザンクスの指示で、障害で抵抗していた冒険者達が一斉に撤退して行く同時に轟音をたてて、障害が崩れ去りオークが侵入して来た。


「くらえ!ウィンドカッター!」


 先頭のオークの頭が吹っ飛び、首の切断面から血飛沫を豪快に出しながら倒れていく。


 仲間の死体を躊躇なく踏み潰しながら次々にオークが入ろうとしている。


 北門の崩壊した障害の幅が狭く、1体ずつしかオークが入ってこれない。


 これを利用して、侵入してくるオークを斬り殺していった。


 すると、北門の外から低音の唸り声が響き渡ってくる。


 グルルゥオオオォォォ・・・・


 オークより背の高いフォレストベアが、北門にいるオークを投げ飛ばし侵入して来た」。


「なんてことだ!フォレストベアまで出てくるとは・・もう、ダメだ・・勝てない」


 後ろで立っていた、ザンクスの情けない声が響き渡る。


「まだ、諦めるんじゃねー!なんとかするんだ!」


 俺は、いまだに侵入しようとするフォレストベアに火魔法ファイヤーアローを放ち、怯んだ隙に間合いを詰めて首を切り落とし、北門の外へと出た。


 北門から外に出た俺は、迫り来る魔物が全てを飲み込むほどの数で迫り来る状況に対し、一瞬恐怖を感じて後ずさり生唾を飲み込む。


「これは・・流石に死ぬかもな・・」


 ザザッ!!


 そう感じていたと同時に、隣で誰かが地面に着地する音がした。


「「大丈夫・・リル(クウコ)が側にいるから・・」」


 剣を構える俺の両手に、そっと包み込むように触れているリルとクウコが、見上げながら呟いてくれた。



「ありがとう、頼りにしてるぜ!・・・・リル!クウコ!」




「「 ん・・ 」」




 そして、俺たち3人は迫り来る魔物達へ反撃の狼煙を上げた・・・・。

 




 

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