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3章 王城編 13話 新たな旅立ち



 大通りで黒髪召喚者コトネ達と別れ、宿屋スーピーに戻り部屋に入るとリサ達は先に帰っていたようだ


 みんなに馬車が高すぎて買えなかったことを話し、乗合馬車で西の都市ニシバルに行くことに変更することを伝え納得してもらう。そして、リサ達に護身用の武器を渡す。


 それと商店に売ってある冒険者必需品であるマジックポーチも渡し個人的に必要な物入れるようお願いする。


 とりあえず空っぽだとかわいそうだと思い、1週間分の水と食料を入れてあげた。


 このまま宿屋の部屋でゆっくり過ごし、夕食を摂って明日の出発に備えて寝ることになった。


 翌朝、順調に支度を済ませて宿屋を出て、乗合馬車乗り場へ向かった。


 俺は、西の都市ニシバル行きの乗車窓口で乗車受付けを済ませて、出発の時間まで近場の商店で買い出しをする。


 しばらくして、出発時間を知らせる鐘が鳴り響き動き始める。

 全員が無事に集まったことを確認して、馬車に乗り込む。


 一番最後に乗った俺は、あの時をふと思い出していると馬車が動き出した。


 俺はなんとなく、街並みを眺めていると、平民服でフードを被った2人が馬車乗り場周辺でウロウロしているのが目に入る。


 その2人は、乗車窓口に駆け寄り何か話しているようだ。


 すると、2人が何かを知ったのか同時にこの馬車を向いて一気に駆け出してくるとフードが外れ2人の顔が顕になった。


「・・あっ!!」


 思わず出た俺の声に、2人が反応する。



「おにぃ!(にぃに!)」


 馬車を追いかける2人は、昨日出会った黒髪少女の琴音と美音だった。


 2人は、走りながら馬車についてくる。


「おにぃ、もう行っちゃうの?」


「急いでるからね」


「にぃに、いつ王都に帰ってくる?」


「・・もう、王都には戻らないと思う」


「「・・そんな」」


 コトネとミオが俺が王都に戻らないことを知ると、落ち込んだ顔になり俯いて馬車との距離が開いていく。


「・・そうだ2人とも」


 少女2人は顔を上げて、離れた距離を一気に詰める。


「あのね、しばらくは西の都市ニシバルを拠点に生活するから」


「はぁ・・はぁ・・わかったよ!必ず会いにいくから」


 琴音が小走りに伸ばしてくる手を俺は馬車から乗り出して手を握る。


「あぁ、元気で!」


 コトネは笑顔になり手を離すと美音が両手で握ってくる。


「にぃ、に・・美音も、美音も行くから待っててね!」


「ありがとう、元気でね」


 美音も笑顔になり手を離す。ただ、召喚者の2人は知らないのだろう。

 この世界で一度別れたら必ず会えることが絶対じゃないことを。


 それを伝えられないことに胸が痛む俺だが、ほんの罪滅ぼしにと思い別れ際にプレゼントを渡す。


「琴音、美音!・・コレは俺からの餞別だ!この先必ず役立つ日が来ると思うから受け取ってくれ」


 アイテムボックスから、マジックポーチを2つ取り出し彼女達に向け投げる。


 それを2人は、あたふたしながら落とさずに受け取ってくれた。


 2人に渡したマジックポーチには、所有者を登録済みにして収納限界近くまで、食料と水とポーション類を詰め込んだ。

 

 きっと勇者達と共に行動し、ずっと危険な旅をするためには必要だろう。


「ありがとう、おにぃ(にぃに)」


 2人は立ち止まり、ずっと手を振ってくれている。俺も手を振っていると、いつの間にか隣にリサとカラが座っていた。


「まるで、あの時の私たちみたいだね・・」


 リサが、そっと呟く。


「そうだね・・あの時は、西門まで追いかけてきて、トニーに止められていたっけな」


「もう、そんなことあったかしら・・」


 リサが恥ずかしそうな顔になり、俺の肩で顔を隠す。


「大変だっだのよ〜号泣したリサをギルドまで連れて帰るのが・・」


 いたずら顔になるカラが、リサの顔を下から覗き込むようになって教えてくれる。


 つっこまれたリサは、俯き無言を貫き通している。


「2人とも、ありがとな」


 そっとリサの頭に触れると、そのまま体を委ねてきた。


 琴音と美音が見えなくなってしばらくすると、馬車は西門を通過し西の都市ニシバルに向け速度を上げていく。


 王都を出ると、森か山の景色しかない。


「・・・・ヒマだ」


 ニシバル行きの馬車に乗っているのは、男冒険者パーティーらしき5人と俺達8人だった。


 俺と猫人族のミオを除いてみんな寝ている。


「ご主人さま」


 向かいに座るミオが、スッと俺の元へ寄ってきた。


「床に座ったら、お尻痛いだろ?」


「平気です。ここが一番落ち着きますか・・にゃっ」


 俺の足元に座るミオを強引に抱き抱え、向かい合うように膝の上に座らせる。


 しばらくは、リルとクウコの特等席だが今はミオに座らせてもいいだろう。


「やっぱり、シックリ来るな」


 ミオの腰に手を回して馬車から落ちないように抱き締めると、黒く長い尻尾がゆっくりと揺れているのが見え、尻尾の先っぽを摘み動きを止めると尻尾がフリフリっと揺れた。


「んにゃ・・先っぽをつまんじゃダメですよ〜」


「ごめんごめん。つい懐かしくなってな」


 リルとクウコは、出会った当初は尻尾を出して生活していたが、南の森へ行く頃には服の中にしまうようにさせていた。


 一方のミオとミリナは普段からずっと尻尾を出させている・・それは、俺がいつでも尻尾を触りたいだけだったからだ。


 馬車に乗っているみんなは、まだ寝ているのを確認してからミオの頬をそっと両手で挟むように触れるとミオが目を閉じる。


 俺は、目を閉じたミオにキスをすると、ミオが強く抱き締め互いの唇が離れるとミオの熱い吐息を感じる。


 もう一度キスをしたところで、馬車がゆっくりと止まってしまう。


 前から慌てた御者がやって来て、同乗している男冒険者パーティーを起こしたためみんなも起きてしまう。


「御者さん、どうしたんですか?野営にはまだ早いと思いますが」


「こ・・この先に山賊が現れて道を封鎖しているんで、護衛の冒険者にお願いしたところです」


 御者に起こされた冒険者は、勢いよく馬車から降りて行くのを見送る。


 俺も馬車から降りて前方を眺めると山賊らしき男達がたくさん立っている。


「ありゃ〜人数的に護衛が不利かな?」


 護衛冒険者と山賊達が睨み合って対峙している。すると、山賊のリーダーらしき男が出て来て、護衛冒険者達が笑いながら山賊のリーダーと共にどこかへ消えていく・・。


「・・あれ?あの冒険者は護衛じゃなかったの?」


 驚く俺は1人呟いていると、リルが俺の背中によじ登って来て肩車状態になる。


「ハル・・なにかあったの?」


「リル・・なんか俺達、山賊に囲まれちゃったみたい。このままじゃ・・」


「このままじゃ?」


「このままじゃ、ニシバルで売ってるオススメの肉串が食べれなくなっちゃうよ」


「それだけは・・ダメ。アレは敵?リルの敵なの?」


 肩車しているリルが前屈みになり、俺の顔を覗き込んで見てくる。顔が逆さまになったリルの目を見たまま俺は告げる。


「アレは敵だな・・リルの肉串を邪魔する、許せない敵だな」


「・・わかった。リル頑張るから、街に着いたら食べたい」


 ペロっと唇を舐めるリルの目にヤル気がみなぎっている。


「いいよ。いっぱい買ってあげるから」


 前屈みになっていたリルが姿勢を戻した時に山賊のリーダーらしき男が馬車に近づき脅してくる。


「おい!そこのお前!ここは、俺たちの縄張りだ・・女を全員置いて行けば通してやる。死にたくなければ、素直に言う事を聞くんだな!」


 山賊が、一斉に笑いを上げていると、さらに40人ほどの山賊が茂みから出てくる。


「ハル・・アレは、なんて言ってるの?」


 クウコも馬車から降りて来て、俺の側で立っている。


「クウコ・・簡単に言えば、リルとクウコから俺を遠ざけて、ここで俺を殺すってことだよ」


 その瞬間、俺の周囲に静寂が支配する・・・・。


「「わかった・・」」


 リルが俺の肩から飛び降り、山賊リーダーに近づいていく。その後ろをクウコが追いかけて行く姿が可愛い。


「お〜なかなか上物のお嬢ちゃん達だ。たっぷりと可愛がってやろうじゃないか!」


 山賊リーダーが、リルとクウコの容姿を見て興奮している。


 クウコがリルの隣りに立ち、美少女2人が素直にやって来たと思い込んでいる山賊達はお祭り騒ぎ状態になり、その状況を見ている2人は、背中を合わせ両手を前に出した。


 この後、自分たちに降りかかる惨劇を山賊達は気付いていない。


 リルとクウコの真似をして、ニヤついた顔で腕を上げている。


 リルが前に伸ばしていた両手をゆっくりと下におろすと同時に、山賊達が地面に平伏し呻き声を上げている。


 そしてクウコがその場で1回転した瞬間、山賊達の全身から血飛沫が一斉に噴き上がり山賊達が消えて静寂が訪れた。


「なんて力だよ・・」


 馬車から身を乗り出して見ていたルーシーが呟く。俺は、2人の元へ歩み寄り抱き抱える。


「ありがとう。リル、クウコ」


「「ん・・抱っこ」」


 2人を抱えた俺は、そのまま馬車に乗せ、御者を探すが見当たらない。


「・・あれ?みんな、御者見てない?」


 みんな御者を見ていないようだ。俺は気配探知スキルを発動して居場所を探すが、周囲にいるのは俺達だけだった。


「まぁいっか・・馬車欲しかったしな」


 みんなが乗ったのを確認して、俺が御者の役を務め出発をする。


 ガタゴトガタゴト・・。


 みんなは、後ろで座って会話が盛り上がっている。一方で1人の俺は、馬の尻を見るか遠くの風景を眺めながら時間を潰していると小腹が空いてきた。


 アイテムボックスから、果実水の入った瓶と肉串を1本取り出し小腹を満たすことにした。左手に持った肉串を食べようとしたら左腕が上がらない。


 パクッ・・・・ササッ


「なっ・・」


 ミオが肉を1つかぶりつき笑顔で後ろに戻っていく。肉は残り3つになってしまった。道から外れないよう、前を見ながら残りを食べようとしたら・・。


 

 パクッ・・モグモグ・・


 今度はリルが1つ串から器用に抜いて食べている。


「あいあと・・」


 リルは食べ終え、グビッと俺の果実水を1口飲んで戻って行く。


「マジかよ・・」


 俺の肉串の肉が残り2つになってしまった。いや、まだ2つある。


 ゴトンッ


 車輪が小石を乗り上げたようで馬車が揺れてしまう。横に置いてあった果実水の瓶が倒れそうになり、肉串を持っていた手で支える。


 パクッ・・モグモグ・・


 この隙をついて、クウコが狙いすましたように食いついてきた。


「あいあと、ハル」


「おぅ・・」


 3連続で俺の肉串が狙われてしまった。最後の1つは死守しないとと思い口に持っていくと。


 バタンッ!


 ミリナが目の前で倒れ涙目で見上げ俺をみている・・?違う、肉串を見ている。


「くぅ〜痛いよ〜」


「ミリナ・・食べたいのか?」


 コクッと頷くミリナに負けて、最後の肉を食べさせる。


 パクッ・・モグモグ・・


 チュッ・・


 食べ終わったミリナが、礼のつもりなのか左頬にキスをして後ろに下がっていく・・。串だけになった肉串を見つめ、せめて串についたタレを舐めてやろうと咥えようとしたら左腕を掴まれる。


「ソレは、わたしの・・」


 最後の希望の串をも、リルに奪い取れてしまう。


「リル〜そりゃないよ〜・・ん〜」


 串を奪い取ったリルが口付けをされ、言葉を押し込まれ諦めた俺は、果実水を飲んで我慢することにした。


 王都を朝出発して、山賊に足止めされたがそれ以降は順調に進んだ。


 そして3つ目の山を越えたあたりで陽が沈み、空がオレンジ色に染まってきたため野営をする決心をした。

「みんな〜ここで野営するよ〜!」


 馬車を止めたあと、アイテムボックスから野営キットを出してみんなに手伝ってもらう。


 今夜の夕飯は簡単に済ませた後、リルとクウコに魔物避けグッズを周囲に置いてくるよう頼んだ。


「リル、クウコ〜これを周りに適当な間隔で置いてきて」


「「は〜い」」


 テント前に並べたイスに座り、焚き火をして外での灯りを確保する。


「「終わったよ〜」」


 魔物避けグッズを周囲に置いて戻ってきた2人が帰ってきて、そのままテントに入って行く。


「あの子達、いつも一緒ね」


 隣に座っているリサが呟く。


「たしかに、別々になったことは見たことがないな」


 焚き火を囲んでいるのは、人族のリサ、カラ、ルーシーそして俺の4人だ。


 獣人のリル、クウコ、ミオとミリナはテントの中で過ごしているようだ。


 「ハル、これからどうするんだい?」


 ルーシーが心配そうに聞いてくる。


「そうだね、しばらくは宿を拠点にしてギルドの依頼をこなして稼ぎながら、ニシバルの北にある地下ダンジョンに潜ってみようと思う」


「わたしらも地下ダンジョンに行くのかい?」


 3人はジッと俺をみている。


「ルーシー達は、宿で待っていてほしい。将来的には家を持って、商店でも開けたらと思っているよ」


 3人は安心したように頷いていた。


「冷えてきたし、テントに入ろうか?」


 そう言って俺達もテントの中に入って行くと、リル達4人は毛布に包まってテント内をクルクル回って遊んでいた。いったい何が楽しいのだろう。


 「そろそろ寝間着着に着替えるぞ〜」


 リルとクウコが動きを止めて、素直に俺の前にやって来て服を全部脱ぎ全裸になる。ここまでは、いつも通りだった。


 なぜだろう、下着姿の少女が2人増えているような気がする。銀髪と金髪に加え、黒髪と茶髪が・・。


「ミオ・・ミリナ・・お前たちもなのか?」


 ミオは、当たり前のように頷いているが、ミリナは恥ずかしそうな顔をしている。


「はぁ・・わかったよ。とりあえず体を綺麗にするからな」


 4人に生活魔法クリーンをかけてやり、着ていた下着を着替えさせ、寝間着を着せる作業を4回繰り返すと着替え終わった子から遊び始める。


 流石にリサ達は恥じらいがあるようなので、俺は何も言わずにテントから出てイスに座りリサ達が着替え終わるのを待つことにした。


「・・さすがに夜は冷えてくるな・・」


 しばらく待っていても、テントに入って来ていいと連絡がこないと思いつつ待つことにした。


「ん〜寒いな・・」


 夜空を見上げ、星を眺めて時間が過ぎていく・・だんだん眠くなって来てでもしまい、そのまま眠りについてしまった。

 

 「おっ・・」


 一気に目が覚めた俺は、全身が寒さに襲われ震えてしまう。




「さっ・・みぃ・・」




 いつの間にか、焚き火の火も消えてでもしまい暖を取れなくなってしまっていた。


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