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3章 王城編 12話 それぞれの準備



 「あっコラ!・・待てって!」


 俺達に追いかけられる形になったリルとクウコが振り向きながら走り、テンションが上がってさらに加速して行く。もうその先には守衛達がいる詰所が・・・・。


 ドン!・・ガラガラガラ・・


 守衛がいる詰所が前触れも無く倒壊した・・きっとあの2人の仕業だろう。そのまま俺達も崩れ去った詰所の横を走り抜けて行く。


 すると、貴族街の通りを先に進んでいたリルとクウコが道の真ん中で急停止して、俺の元へ戻って来た。


「どうした急に?」


「「・・抱っこ」」


 2人は両手を上げて抱っこを所望しているため、こんな時にでも抱っこかよと思いつつ2人を抱き抱え走り出す。

習慣とは恐ろしいものだ。


 貴族街を抜け出た俺達は、呼吸を整えて大通りを歩き宿屋スーピーを目指す。


 宿屋スーピーに入ると、受付に茶髪茶目のルミナがちょうど座っていた時だった。


「久しぶりルミナ、元気してた?」


「あ〜!ハル兄さん、お久しぶりですね!元気してましたよー」


 ルミナは、愛想よく笑い対応してくれる。


「今夜は空き部屋ある?できたら大部屋で」


「ちょっと待っててくださいね〜調べますから〜」


 受付の棚にしまっている簿冊を出して、空き部屋を確認してくれている。


「・・あっパーティー用の大部屋が空いてますけど、6人部屋なんですよね・・」


 ルミナが俺達の人数を数えて心配してくれる。


「まぁ、6人部屋なら全然問題ないよ・・とりあえず1泊で」


 ルミナが商売顔になり礼を言う。


「ありがとうございます。1部屋利用で金貨1枚です」


 俺は、金貨2枚を渡し、きっとかかる追加分を先に渡すとルミナは必要になってからと断って来たが強引に手渡す。


 ルミナから部屋のカギを受け取り、階段を上がり3階へ向かい部屋のドアを開けると2人用ベッドが3つ並び中央にはソファが置いてある大部屋だった。


 なんとなく真ん中のベッドに腰掛けると、リルとクウコが膝の上に座りミオが足元の床に座り俺の足に寄り添っている。ミリナは、ソファに座りジッと俺を見ている。


 すると、遅れてリサとカラが俺が腰掛けているベッドに上がり、背中に寄り添う状況を、ソファに座っていたルーシーが呆れた顔をで見ている。


「なんだかな・・この状況は・・」


 背中に寄り添っていたリサが首に手を回し耳元で囁く。


「嫌かな?・・こういうの」


「・・全然嫌じゃないんだけど・・急過ぎない・・かな?ってね」


「ふ〜ん」


 リサさん、正面にいるルーシーの視線が痛いんですよ。見た目が若くなっただけに、なんか辛い・・誰か助けてくれ」


「おねぇちゃんは、そこなの?」


 ミリナが俺の足元で座っているミオに聞いている。


「わたしは、ご主人さまのここが落ち着くからいいの」


 ・・やっぱコイツ猫だよ。じゃなきゃ、こんな場所で落ち着く訳ないよ。っと思っていると、ミリナが立ち上がりミオの隣に寄って来て、器用に体を隙間に入れる。


「じゃーわたしも、ここに決めちゃう」


 あ〜コイツも猫だった。とりあえず、両足の親指を使い2匹の猫の尻尾の付け根辺りをグリグリ弄ってやると、ミオとミリナは尻尾をピンっと立てながらお尻を少し浮かせ気持ち良さそうな表情に変わっていく。


「そうだ、久しぶりのベッドで寝れるし今夜は、早めに寝ような」


 そう言った俺は、アイテムボックスから寝間着を出してリル達に生活魔法クリーンをかけて体を綺麗にして着替えさせ寝る支度を済ませた。


 リルとクウコはソファに座り、何やらリサ達と話をしているが俺はベッドで横になっていたため眠気に勝てずあっと言う間に眠りに就いた。


 

・・ふと誰かに呼ばれた気がして目が覚め、両隣にはいつもの寝姿でリルとクウコが寝ている。


 上半身を起こし部屋を見渡すと、足元にはミオとミリナが丸まって寝ていて右のベッドにルーシーが1人で寝ていた。


 左のベッドにはリサとカラが寝ていて、俺は2人の寝顔をジッと見つめていたらパチっとリサの目が開き視線が重なる。


「・・おはよ、リサ」


 リサは、ニコっと笑う。


「おはよ、ハル」


 リサは、スッと布団から出て来てソファに座ると俺に手招きをする。

 俺は、ゆっくりとベッドから降りてリサの隣に座るとリサが俺の膝の上に向かい合うように座って来た。


 そのまま、互いの顔が近づいたところで短いキスを交わし抱擁をして、もう一度キスをした。


 すると、カラも起きていたようでリサと入れ違いに膝の上に座ってくる。


 カラの対抗心なのか、リサと同じようにカラにキスをした時に舌を入れてきた。


 少し驚いたけど、俺も負けじとやり返すと強く抱きしめられてしまう。


 そして、カラは満足したのかベッドへ戻っていく。その姿を見送った後、冷たい視線を感じその正体を見ると、ルーシーが一連の行動を見ていたようだ。


 俺は、頭を掻いて苦笑いをしたが、ルーシーは不満そうな顔をして背中を向けて横になってしまった。


 1人ソファに残された俺は、静かな部屋に取り残されてしまう。



 コンコン・・コンコン  


 部屋のドアがノックされドア越しにルミナの声がした。


「ハル兄さん、朝食の時間です。そろそろ食堂にお願いします」



 ガチャッ


「おはよう、ルミナ」


「おはようございます。ハル兄さん」


 ドアを開けると、ルミナが一歩下がり立っている。


「ありがと・・みんなの支度を終わらせたら食堂に行くよ」


「はい!待ってますね」


 ルミナは笑顔で手を振り、廊下を走って階段を下りて行く。


 その姿を見送った後、ドアを閉めてまだ寝ているみんなを起こした。


 8人全員で食堂へ向かい、食堂の一角を占領する。男1人が美少女と美女に囲まれた状態・・絶対に、ジロジロ見てくる男冒険者パーティーの奴らに恨まれているだろうな。


 俺達が席に座っていると、ルミナがワゴンを押して朝食を運んできてくれた。


 そして、俺が食べ始めてからみんなが食べ始めた。気づくと、食事を摂っているのが俺達だけになったため今後のことを話す。


「みんな、これからなんだけど・・」


 リルとクウコ以外は食事を中断して俺を見ている。


「明日には王都を出て、西の都市ニシバルに行こうと思う。だから、今日はその準備をしたい」


 リサ達5人は無言で頷く。


「ハル、おかわり・・」


 リルがおかわりを所望してきた。俺はリルを見ることなく、アイテムボックスから肉串を2本取り出し渡す。


「あいあと・・」


「クウコも、おかわ・・あむ」


 俺は、クウコも必ずおかわりをすることがわかっていたため、クウコが言い切る前に肉串をクウコの口にねじ込む。


「・・あんあと」


 リルとクウコが肉串に夢中になっている今、続きを話す。


「生活資金は十分あるから心配はいらないから。それでリサとカラは、リルとクウコを連れて日用品とかの消耗品を買い集めてほしい。俺とルーシー、そしてミオとミリナで武器屋と馬車商店に行こう」


 リルとクウコは、俺と離れることに嫌がっていたが、リサ達を守れるのは2人しかいないと伝えると渋々受け入れてくれた。


「細かい話は、部屋に戻ってからにしよう」


 リルとクウコが食べ終わったあたりで話しを終え、食後のリルとクウコの口を拭いてから部屋へと戻る。


「ルミナ、ごちそうさま〜」


「は〜い!また夕食を食べにきてね〜」


 食堂を出て、3階の大部屋に戻り出掛ける支度をする。


「リサ、カラは旅に必要な物も買い足してくれ」


 2人に金貨20枚づつ渡し、俺達は宿屋スーピーを出る。この時、もう1泊分の料金をルミナに支払った。


 俺は、ルーシーの案内で馬車を取り扱う商店に行ったが、想像以上の高額のため今は断念することにした。そのまま武器屋に行ってリサ達の護衛用武器を買い揃えた。


「ミオ、こっちにおいで」


 武器屋で陳列されている短剣を眺めているミオを呼んだ。


「どうされましたか?ご主人さま」


「コレをミオに渡すの忘れてた・・ごめんね」


 アイテムボックスから出した双剣をミオに渡す」


「こ・・これは!」


 ミオを双剣手に取ると、涙ながらに抱きついてくる。


「この双剣は、ご主人さまが持っていてくれたのですね」


「ぐ・・偶然な・・」


 さすがにイノストール公爵の小屋で、たまたま拾ったとは言えない。


 双剣をしまう鞘がなかったため武器屋で購入しミオは嬉しそうに腰に帯刀した。


 ミリナにも気に入った短剣を買い与えたが、ミオと違い双剣を選ばなかった。


 そして、宿屋に戻る途中にあった大きな商店に立ち寄り、野営キットや個人的に必要なものを買い終えて店を出て大通りを歩いていると、飯屋から見覚えのある少女が現れ視線が重なる。


「琴音様・・美音様・・」


「あっ!!おにぃ(にぃに)ってか呼び捨てでって言ったよ」


「そうでしたね・・・・あの、琴音と美音は買い物?」


「そうだよ。今日はお休みだから、みんなで街に買い物にきたんだ〜!おにぃも?」


 琴音と美音が俺の側へ笑顔で寄ってくる。その後ろには、2人の少女がいた。


「そうだよ。・・うしろの方は?」


 琴音が見慣れない少女を紹介してくれた。


「マイさんとマナさんだよ!」


「あの、初めまして・・冒険者のハルと言います」


「「初めまして」」


 2人は軽くお辞儀をするが、少し警戒している視線を俺に向けている。


「それでは、王都の買い物をお楽しみください」


「それじゃ、また会おうね!おにぃ(にぃに)」


 2人が手を振って別れようとした時に、俺は伝えるか伝えまいか一瞬悩んだが伝えることにした。


「琴音、美音!」


「「なぁに?」」


 振り返る2人に王都を離れることを告げる。


「じつは・・明日には、王都を離れます。たぶん、もう戻ってくることはありません。西の都市ニシバルで拠点を移します」


「「・・ウソ!!もう会えなくなっちゃうの??」」


 俺は無言で頷く。


 すると、一度は離れ始めた2人がダッシュで俺に飛び込み抱きついて見上げる。


「・・琴音、美音?」


「いや・・嫌だよ!おにぃ」


「にぃに、もう会えなくなっちゃうの?」


 俺は、2人の頭を撫でながら口を開く。


「そうだね。明日には出発するから、この王都では会えなくなっちゃうね・・元気でいてね」


 2人の目に涙が溜まって、今にも溢れ落ちそうになる。


「おにぃ、やだよ・・せっかく会えたのに」


「にぃに・・行かないで!ずっと王都に居てよ〜」


 2人の気持ちが理解できないことはない。だが、リサ達を危険な王都で過ごさせる訳にはいかない。


「ごめんな・・琴音、美音。西の都市ニシバルに来たら、会えるから。もし気が向いたら遊びにおいで」


「おにぃ・・ぜったいに、絶対会いに行くからね!約束だよ」


「にぃに、私もおねぇちゃんと一緒に行くから。必ず会いに行くからね」


 2人は耐えきれなくなったのか、綺麗な黒い瞳から涙を流している。


「あぁ、待ってるから。2人の活躍を遠くから祈っているからね」


 

 こうして、たまたま出会った黒髪少女のコトネとミオに別れを告げて、宿屋に戻って行った。




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