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3章 王城編 11話 逃げるが勝ち



 リルとクウコがミオの手を引っ張り、テントの中へ入っていくのを見て俺も続いて入ろうとしたら、中からミリナの声が響いたため、急いで中に入った。


「どうした?何かあったのか?」


 テントに入った俺には予想外の光景が目に飛び込んでくる。


 なんと、ミリナがミオに抱きついて泣き、それをミオがあやしていたのだ。


「どういうこと?」


「おかえり、ハル」


 リサがそばに寄ってきて出迎えてくれた。


「ミオちゃんが、入ってきた途端にミリナちゃんが急に抱きついたの」


「そうなんだ・・。ミリナ、ミオと知り合いなのか?」


「たし・・ちゃん・・なの。・・わたしのおねぇちゃんなの・・」


「「「えーーー!!!」」」


 俺達全員が驚いた。獣人族は、人族からだと細かい容姿の違いはわからない。


 確かに、髪や目の色が違うが姉妹とかの見分けは人族よりも難しい。


 でも、同じケモ耳があるリルとクウコも驚いたことに俺も驚いたけどな。


 ミリナの話を聞いているとどうやら数年前に、村へミオが帰ってこなくなり1人で探しているうちに路銀が王都で底をついて、いろいろあって今に至るらしい。


 落ち着きを取り戻したミリナは、ミオから離れてりさ達の近くに座り雰囲気が落ち着いた頃に俺は口を開いた。


「・・みんな、これからイノストール公爵に会ってくる。テントで待っていてくれ」


 リサ達は了承してくれたが、若干2名の銀髪と金髪少女の顔は膨れっ面になっていた。


「それじゃ、行ってくる」




 ぐきゅるるるるるぅぅ〜〜〜


 

 俺の側で膨れっ面になっていた、リルとクウコのお腹が盛大に鳴る。



 忘れていた・・この2人は基本的に俺が直接与えた物か出された物を俺と食べる時じゃないと、空腹になっても一切口にしないんだった。きっと俺がいない間に、リサ達から出された物も食べなかったのだろう。



「・・と思ったけど、夕食の後にするかな。リル、クウコ大至急準備するよ」



 テントから出て、置きっ放しにしている簡易調理場のイスに座りアイテムボックスから調理鍋を出し水を入れて火にかける。


 その間にリサ達が買ってくれていた野菜を適当に刻んで鍋に放り込む。


 そして味付けをしてない肉を串から外し鍋に放り込み煮込む。


 このままだと時間がかかるため、空間魔法を応用し鍋を完全密閉にさせて火力を上げ高温にしていく。


 なんとなく、鍋がヤバい感じになってきた頃に鍋を火から遠ざけてしばらく待つ。


 理由もなくドキドキしながら空間魔法を操作して鍋のフタを開けて、蒸気が抜けきったところで再度火にかける。


 少し煮込んだところで、香辛料やソースを加えたら出来上がりだ。


「・・よし!これで完成だ」


 俺は鍋を持ってテントの中に入ると、リサ達が配膳の準備を終わらせてくれていた。


 そして8人揃って初めての夕食を摂り俺は適当なところで食事を終え、まだみんなが食べている間にテントを出て屋敷へと向かった。




 コンコン・・・・コンコン・・コン・・ 裏口のドアを叩く。


 しばらくして、ドアの向こう側からメイド長の声がした。



「・・誰ですか?」


「俺です・・ハルです。処理完了の報告に来ました」


「ゴミ処理ですか?」


「はい、南で処理です」



 ガチャッ


 ドア鍵が解除されドアがゆっくりと開く。

 

 俺は一歩下がり、メイド長が出てくるのを待つ。


「お一人ですか?」


「・・あぁ、2人はテントで休ませています」


「・・・・・・」


 メイド長が中に入り、それに続く。


 今夜は初めて入る部屋へと案内された。


「このままお待ちください」


 メイド長は部屋を出て、イノストール公爵を呼びに行ったようだ。


「・・なんかこの部屋は落ち着かないな」


 部屋を見渡し、ソファとテーブルしかない簡素な部屋だ。



 カツカツカツカツ・・


 廊下を歩く音が近づいてくる。


「やぁ、終わったんだってね」


 開いたままのドアからイノストール公爵が入り、メイド長がド廊下に出ながらアを閉めた。


「はい・・ウォーウルフに処理させました」


「まぁ、座りたまえ。ウォーウルフか・・なかなかのセンスだ。で、処理した証拠は?」


 イノストール公爵は、腕組みをして俺を見ている。


「食べられた場所にコレが落ちてました」


 偶然見つけたあのネックレスをイノストール公爵に見せつける。


「確認しても?」


「はい、どうぞ」


 イノストール公爵は、俺からネックレスを受け取りじっくりと調べているようだったが、ニヤつきながら二回頷いた。


「・・・・チェーンに噛みちぎられた痕跡が確かにあるな」


「・・・・・・」


 公爵は、ネックレスを何かの箱にしまい込むと、テーブルに金貨5枚を置く。


「最後の報酬だ・・」


 テーブルに置かれた金貨を、右手で取ろうとした時、右手に激痛が走る。


 ダンッ!!


 俺の右手の甲に短剣が深く突き刺さっていた。


「この私が気付いてないとでも?」


 手の甲に突き刺した短剣を両手で握るイノストール公爵が、俺に不快な笑みを浮かべながら聞いてくる。


「がぁ!・・ぐっ・・いっ・・てっ・・な、なんのことだか・・」


「ふっ・・とボケるのか?」


 短剣に力を込められ、また深く短剣が入っていき激痛に襲われ気絶しそうになるはずだが、無詠唱でヒールをかけているため痛みは微塵も感じない。


「う゛ぐっ・・・・クソッ・・だから、なんの話しだ」


 イノストール公爵は、俺が痛がる姿を見て楽しんでいるようだ・・俺の演技もなかなかなのだろう。


「そうか、わからないのか・・平民ごときにはな!」


 イノストール公爵は、短剣から両手を離し立ち上がると右足を短剣に乗せる。このまま踏み込んで根元まで一気にやる気だろう・・。


「どうせ平民の俺にはわかんねぇよ。狂った貴族の考えなんて、知ったこっ・・」


 ガッ!!


「ぐわぁーーーー!!」


 あまりの激痛で意識が、ぶっ飛ぶほどの発狂する悲鳴が部屋に響き渡る・・・・が、ちっとも痛くない。


 流石に感触までは消せないため、短剣が机までも突き抜けていくのは伝わるため気持ちが悪い。



「はっはっはっ!どうだ?貴族様の優しさは!・・ん?・・どうなんだ?・・優し・・」



ガシャン!!  ババンッ!!



 突如、部屋の窓ガラスが粉砕され強制的に窓枠ごと外に落下していく・・。


「はぇ?・・」


 イノストール公爵は、背後からの轟音に驚き振り向く。

 その先にあるバルコニーに2つの影が見えた。月明かりに照らされた銀髪と金髪の髪がキラキラと反射し夜風に揺れている。


 その2人のてっぺんには、2つづつの小さなケモ耳がピンと立ち普段は見せない尻尾が限界になるまで膨らみ激しく揺れている。


 その姿が見えた俺は、そっと名前を呼んだ・・。



「リル・・クウコ・・」


 呼んだと同時に、2人の姿が消え見失ったと思った時には俺の両隣に居て寄り添ってくれていた。


「「ハル!!」」


「あぁ、大丈夫だ」


 左手でクウコの頭を撫でてやるが、右手は短剣に突き刺されたままで動かせないでいるとリルが右手をそっと触れてくれる。

 

 その瞬間、この部屋が凍り始める。


「がぐぅ・・お、お嬢ちゃん達は、いつきたのかな?」


 リルとクウコはイノストール公爵の問いを無視している。


 すると、リルが右手を突き刺している短剣に触れると短剣が瞬く間に砂粒のように分解され消えていく。


「な・・なんという力だ・・」


 イノストール公爵はリルが見せた現象を理解できないでいる。


 短剣から解放された右手をリルが手に取り、傷跡を舐めている。


 ちょっとだけくすぐったいが我慢しているとキレイさっぱり治ってしまった。


 そして、右手が自由になった右手でリルの頭を撫でてやると、嬉しそうな顔になる。


 いつもならここで抱きついてくるのだが、今は撫でられながらイノストール公爵の方を向き俺の手から離れた。




「・・おい、人間。この仕打ちは・・お前か?・・お前なんだな・・」


 リルの低い声で問われるイノストール公爵は、顔面蒼白で怯んでいる。


「こ・・・こんなこと・・この公爵貴族の私が、こんな小娘に屈服するはずが・・」


 リルは、イノストール公爵に右手を向けて小さく振る。



 ズドッピシャ!!



 イノストール公爵は、後方に吹き飛ばされ、背中から壁に激突しそのまま身体という存在を消していった。



「ハルに苦しみを与える者には消滅を・・」



 リルは呟き俺に振り向くと抱きついてきた。


「リル、クウコ・・ありがとう」


 もう一度、2人を抱き締めた後に頭を撫でてやると、膨らんでいた尻尾も元のサイズに戻り、表情もいつも通りに戻っていった。


「とりあえず、屋敷の者に見つかる前にここを出よう!」


 2人を抱き抱え部屋を出ようとしたら、クウコに止められた。


「ハル、ちょっとだけ待って」


 抱き抱えていたクウコが、俺から降りてひび割れた壁の前に行く。


「クウコ?」


 すると、ひび割れたはずの壁が何事もなかったのように元の姿に戻ると、ぶっ壊れた窓も直っていく。


「おぉ・・」


 クルッと振り向き、トテテテっと走ってくるとジャンプして俺に抱きついてきた。


「おっと・・」


「幻惑しちゃったから、すぐにはバレないよ〜」


 軽い口調で、とんでもないことを言うクウコを呆然と見ていると、リルが耳を甘噛みして聞いてくる。


「ねぇ、行かないの?」


「あ・・あぁ、行こうか」


 静まり返っている屋敷を音も無く裏口から外へ出てテントに向かう。


「みんな、起きてる?」


 テントに入って声を掛けると、リサ達は支度を終え荷物が整頓されていた。


「・・じゅ、準備がいいいね」


「リルちゃんに言われて、みんなで片付けてたの」


 リサが答え、みんな頷く。


「そうか・・」


 俺は、アイテムボックスに荷物を次々に収納しテント内を空っぽにしていく。


 テントから出ると、野営キットのイスとかを皆が協力して片付けて持って来てくれるため、素早く片付けられた。


「最後は、テントだ!リル、クウコとミオは四隅に行って」


 4人で息を合わせてテントを倒し畳んでいく。もちろん音は最小限に意識するが、獣人3人が畳んでいくテントにワザと体を挟まれて、キャッキャ楽しんでいる。


「お前らな〜手伝うか邪魔するか、どっちかにしてくれよ〜」


 ようやく全ての荷物をアイテムボックスに収納したおかげで、裏庭は元の状態に戻っていた。


 そして、みんなが集まって来たところで全員に次の指示をだす。



「・・・・よし!みんな、準備はいいかい?」


「おーーーーーーー!!!!!!!」


「シーー!静かに」


 やけにテンションが高い7人の声が大きい。俺1人だけ焦り、みんなは笑いを堪えている。


 そして、咳払いをして場を落ち着かせる。



「・・・・・・」



「では、改めて・・・・」


 みんなが俺をジッと見て言葉を待っている。


「・・・・みんな!」


 7人が同時に頷く。


「・・・・夜逃げだよ!!」


 リルとクウコがキャッキャしながら一番乗りで屋敷の門へ走り出して行く。


 それを追いかけ走り始めた俺達・・隠密なんてあったもんじゃない!!




「あっコラ!・・待てって!」


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