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1章 はじまり 3話 別れと、意図しない出会い

 雲一つない青空が広がり、清々しい早朝の王都マーカー西門前にある乗合馬車待合室に居る俺は、出勤前の受付嬢

 リサとカラ3人で雑談をしている。受付嬢二人の表情に元気はなく、特にリサが普段以上に話し掛けてくる。


「ねぇハル・・本当に一人で行くの?忘れ物ない?ホントにない?」


 心配そうに何度も聞いてくるリサに苦笑いしながら答える


「あぁ、しばらくは帰れないと思うから」


「・・うん。向こうのギルドで活動登録忘れずにしてよ」


「わかったよ。カラもわざわざ見送りありがと」


 カラは微笑み何も言わず一度だけ頷いてくれた・・が不意に。


「ハル!・・」


 突然カラが近づき抱き着かれた俺は、一瞬動揺して立ち竦む。


「カ・・カラ?」


 スッと半歩離れたカラは先程より笑顔になっている。隣にいるリサもなぜか笑顔だ。ちょっと気恥ずかしい時間を感じていると、馬車案内人が都市ニシバル行き出発を周囲に伝えてきた。


「それじゃ、時間だから・・」


「「うん。いってらっしゃい」」


 別れが名残惜しいが、感情を抑えて踵を返し目的の馬車に乗る。


 ゆっくりと馬車が動き出し二人との距離が開いていく・・・。


 最後に二人に手を振ると、リサが馬車を小走りで追ってくる。


 カラも釣られて追いかけて来る。西門を通過するまで馬車の速度は遅い。


「必ず帰って来るよ!二人とも元気で!!」


 馬車が西門を通過すると門兵のトニーと視線が重なる。


「ハル、死ぬなよ!」


「もちろん!」


 お互いに拳を向けて約束をする。街道に出ると馬車は速度を上げていき、リサとカラの姿がだんだん小さくなって見えなくなり、孤独感を紛らわすため下を向き目を瞑ることにした・・。





 リサSide


 はぁ・・はぁ・・ハルが遠くなって行く。もう追いつけない距離に・・・・


 リサは夢中でハルが乗る馬車を追いかける。無事に帰ると約束しても、冒険者はいつ死んでもおかしくない職業だと知っているから。


 ずっとこの街に居て欲しい気持ちは胸にしまい笑顔で見送ろうと、昨夜カラと約束したのに。


 馬車を追い続けるリサはハルしか見えていない。いつの間にか西門に近づき過ぎていることに気付くことなく。



 突然、リサの眼前に槍が交差され、門兵二人が行く手を阻む。


「リサ。気持ちはわかるが、ここから先には行かせられない」


「お願い通して・・通してトニー」


「ダメなんだ。いくら幼馴染の頼みでもコレだけは・・・・」


 両手で槍を掴んだまま、遠く離れる馬車を見送る。最後まで見続けて痛いのに視界がだんだん霞んでいき馬車が見えない。涙がとめどなく溢れているせいで。


「リサ・・そろそろギルドに戻る時間よ・・」


「・・・・はい」


 カラも涙で少し赤い目をしていたが、先輩としての矜持で平静さを保ちリサを連れてギルドへ向かっていく。






 二人と別れて馬車の旅は順調だった。2晩野営し3日目の朝には、西の大都市ニシバルに着いた。

 馬車を降りてギルドカードを門兵に提示し、無事に都市へ入れた俺は一先ず冒険者ギルドに向かうことにする。

 それは旅の目的である地下ダンジョン探索をするために。


 冒険者ギルドに行きたいが場所がわからない・・。あのいい香りを漂わしている出店に寄ろう。


「すいません。肉串1本ください」


「いらっしゃい。銅貨3枚な」


 赤髪で短髪の男店主に銅貨を支払い肉串をもらい食べる。口の中に肉汁が広がりクセになる味だ。


「おいしいよ、コレ」


「だろ?自慢の味付けだ」


「一つ聞きたいんだけど、冒険者ギルドはどこにあるの?」


「なんだ。あんちゃん冒険者か。ギルドなら大通りを歩くより、この時間なら裏道の方が近道だな」


 男店主から近道を聞いて、冒険者ギルドへ向かうことにする。もちろん肉串を2本買い足してアイテムボックスにしまって。


「おぉ、はじめて見たな。空間魔法か?」


「そんなところですね。それでは失礼します」


 大通りから裏道へと歩き出す。夜なら絶対に歩かないけど。と思いながら道端に座り込む住民たちと視線を合わせないよう進んでいくと不意に声をかけられた。


「おはようございます」


 身嗜みが整った白髪の老人が立っている


「おはようございます。俺に何か用ですか?」


「はい。奴隷はいかがでしょう?」


「ど・・奴隷?流石に買えるほどの資金はないですよ」


 実は一人ぐらい買えるほどの金は持っているが、今は必要性を感じないため柔らかく断る。


「そうですか。必要となれば当店をご利用ください」


 白髪の老人は一礼し、建物の中へ入っていく。


 その姿を見送り、ふとその建物を見上げると奴隷商スイーブと掲げられた看板があった。世の中に奴隷商が存在していることは知っていたが、実際に見るのは初めてだったから驚きを隠せなかった。


「奴隷か・・。まぁ、とりあえず今はギルドで活動登録をしないとな」


 裏道を歩き続けて大通りに出ると、右のほうに大きな3階建ての大きな建物を見つけた。2本の剣が交差する看板が冒険者ギルドの証だ。


 初めてきた街のギルドに気分が高まり、扉を開けようとした瞬間に勢いよく扉が開き、俺の右手に当たる。


 ドン!


「いって〜なぁ〜」


 右手をさすり扉の前で立っていると、中から冒険者パーティーが出てくる。男4人と少女が一人。先頭から剣士2人、拳士1人と魔法士1人。少女はたくさんの荷物を背負い足元をふらつかせながら男たちを追っている。


「きみ、大丈夫?」


 すれ違いざまに少女に声をかけたが、一瞬視線が重なっただけで無言で去って行くのを見送り溜息をついてギルドに入った。


「王都のギルドより賑やかだな」


 奥の窓口に向かいながらギルド1階を見渡すと、併設された食堂の席で騒いでいるパーティー達もいるが誰かに絡んでいるような奴はいないようで規律は保たれている感じだ。


 三か所ある窓口には、一番左が新規登録及び活動登録専用窓口のようだ。近づくと、金髪碧眼ポニーテールのエルフ族の受付嬢が俺に気付いて一礼する。


「おはようございます。ご用件をどうぞ」


「おはようございます。活動登録をお願いします」


「それでは、ギルドカードの提出をお願いします。あと登録手数料に銀貨1枚必要です」


 マニュアルに沿った対応だ。他所から来た冒険者にはこんな感じなのかな?同じエルフでもリサとは違うんだな。

 受付嬢に言われた通りカードと銀貨1枚を渡すと受付嬢は、机上にある魔法具にカードを置いて登録手続きをしている。


 魔法具に置かれたギルドカードが一瞬光ると登録が完了しカード返却してくれる。だが、受付嬢の表情が先程と違い違和感を感じるが気にしないようにしよう。


「あの・・」


「ヒャい・・何でしょう?」


「都市の北側にある地下ダンジョンを探索したいんですが、どうすれば?」


「パーティーを組んでいますか?」


「いえ。ソロですが」


 ソロ冒険者と告げると、受付嬢の表情が少し険しくなり予想外の答えが返ってきた。


「地下ダンジョン探索は、ソロ冒険者の探索は固く禁じられています。この数ヶ月で多数の死亡者が出たためギルド長から二人以上で尚且つパーティーを組んでいない冒険者の探索は厳禁とすると、2日前に決まりました」


 衝撃のあまり倒れそうになったが、何とか意識を保ち冷静になる。


「な・・そんな通達聞いてないよ」


「2日前には各ギルドへ通達済みです」



 2日前って馬車で移動してたときじゃん・・このままじゃ活動自体が白紙に・・・・。


「あの、何とかなりません?」


「なりません。他のソロで冒険者と臨時パーティーを組んではいかがですか?」


「この街に知り合いいないんでムリですよ」


「それならば、奴隷と入ることも可能です」



 この受付嬢は普通に奴隷とって言ってきてるし。マジかよ。


「そうですか・・ちょっと考えますね。ありがとうございました」


 ショックのあまり何も考えずギルドを出る。とりあえず今夜の宿を急いで探さないと野宿だ。でも、この街に知り合いなんていないし。


「出店の店主に聞こう」


 まだ時間は昼前ぐらいだ。来た道を歩き肉串を買った出店へと急ぐ。


「先程の冒険者さまではありませんか?」


「あっ奴隷商の・・どうもです」


「何かお困りですか?先程と違い元気がありませんが・・・・?」


 俺は北の地下ダンジョンで探索するためにこの街へ来たが、ギルドでソロ冒険者で探索は厳禁だと告げられてしまい今後の冒険者活動が白紙になってしまったことを話すと最後まで聞いてくれた。


「それでしたら、戦闘奴隷はどうでしょう?」


「戦闘奴隷ですか?確かに奴隷とでも探索は可能ですが、購入する気は無いですよ」


「見て行くだけでもどうでしょう?気晴らしになりますよ」


 少し考えて、二回も声をかけてきて悪意を感じないこの老人には親近感を感じ提案に乗ることにした。老人に連れられて奴隷商に入ると、1階ロビー兼待合室は清潔感があり二人の店員がいるだけだった。


 なぜか1階を使うことなく2階に案内され、一つの部屋へ入りソファに座り正面にはにこやかな老人も座る。


「それでは改めまして、奴隷商店スイーブ店主のモンスと申します」


「はじめまして、冒険者のハルです」


 軽く挨拶を済ませた後、モンスは部屋を出て行く。その間に1階にいた店員が部屋に入ってきてテーブルにカップを置いて部屋を出る。しばらく一人で部屋にいるとドアが開きモンスが入ってきた。


「ハル様。展示の支度が整いましたので、ご案内いたします」


「はい・・・・モンスさん、俺は見るだけなんですけどね」


 苦笑いしながらモンスの後をついて行く。さっき上がってきた階段とは違う階段で地下へ降りて行く。


 地下の廊下には魔法ランプが等間隔に配置され明るさを確保している。廊下を歩き角を曲がると頑丈な扉があった。


「ハル様。この扉の向こう側が奴隷の居住区になります」


 モンスがゆっくり扉を開けて中に入り、それに続いて部屋に入ると細長い廊下を中央に配置し左右に多数の部屋が配置されていた。変な匂いもなく奴隷の扱いは良いようだ。


「戦闘奴隷は奥側の部屋になりますが、どうぞ手前から順次ご覧ください」


「はい・・・・」


 奴隷の各部屋にはこぶし大ほどの覗き窓が設置されている。恐る恐る覗くと、人族や獣人族など多種に広がっているが割合的に獣人族が多いように感じていると、後ろからモンスが説明してきた。



「人族はほとんど犯罪奴隷です。買い手も少ないため一定期間が過ぎると強制労働へ派遣されます。獣人族は戦争に巻いき込まれた者や攫われた者が多く、貴族に人気で入荷してもすぐに売れてしまいます」


「なんか複雑な気分ですね・・・・」


 モンスの説明を聞きながら順々に奴隷を見て行き奥の方へ近付くと、ここからは戦闘に特化した奴隷の部屋になると告げられて興味津津で戦闘奴隷達を覗いてみるが、みんな背中を向けていて表情が見えない。


 屈強な体格の奴もいれば、スリムな体型で本当に戦えるのかと疑問に感じる女もいた。


 その中で一番奥の部屋にいる獣人族が気になり、他の戦闘奴隷より長く見てしまった。やはり顔は見えない。


「その獣人族が気になりましたか?」


「あ・・・・ほんのちょっとだけ気になっただけですよ」


「417番! こちらを向いて、お客様に顔を見せなさい!」


 モンスの指示にビクついた獣人族の奴隷は背を丸めるだけで振り向こうとしない。


 言うことを聞かないため眉間にシワを寄せて、もう一度同じ指示を出すが獣人族は従わない。


「モンスさん別に良いですよ」


 これ以上は奴隷に罰を与えそうだったため、顔を見るのを諦めることにした。


「申し訳ございません。戦闘奴隷はこの子で終わりですので、先程の部屋へご案内します」


「はい。ありがとうございました」


 覗き窓に右手をかけていたが、ミサンガが窓と壁の隙間に引っかかってしまい外れなくなった。


「あれ?取れないなコレ・・・・よっと・・よし外れた」


 取り外すことに必死だった俺は、獣人族が横目で見ていることに気づかなかった。


「ハル様!大丈夫ですかー?」


 出入り口の扉に居たモンスが大声で俺を呼ぶ。


「はーい!大丈夫です。今行きますから」


 急いでモンスの元へ行き部屋を出る。


「モンスさんお待たせしました」


「いえ、お怪我はありませんか?」


「大丈夫です。アクセサリーが覗き窓に引っかかったでけですから」


 モンスが扉に手をかけて閉め終わる直前に奴隷部屋から悲鳴のような叫び声が聞こえた。


「待っでぇー!!・・待ってーーーー!!」


 モンスと顔を見合わせる。


「モンスさん、なんか叫び声が聞こえませんでした?」


「はい。確かに聞こえましたね。少々確認しますので、ここでお待ちください」


 モンスは扉を開けたままにして奴隷部屋に入り、声の主を探している。すると戦闘奴隷がいる一番奥の部屋で立ち止まり会話をしているようだ。


「お手数ですが、こちらへ来てもらえますか?」


 モンスが手招きをして俺を呼んでいる。もう一度奴隷部屋に入りモンスがいる場所へ向かうと、意味深な顔で覗き窓で奴隷を見て欲しいと伝えてくる。


 言われるがままに覗き窓から中を覗くと、獣人族と視線が重なり、獣人が大きく目を見開き涙を流す。






「え・・・・・・ミオ?」





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