12章 王国離脱編 20話 帝国勇者達の目的
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もう少しで目標のブクマ300件目に届きそうです。
ハッと目が覚めたと同時に右手に激痛が走り上半身を起こし視線を向けると、指先が黒く炭化していた。
「いっ・・てぇ・・」
傷を直視すると余計に痛みが増した気がして、すかさず治癒魔法エクストラヒールをかけると変わり果てた指先が元に戻っていき痛みが消えていく・・。
「うそ・・私の治癒魔法より上位だなんて・・」
初めて聞く声がする方に顔を向けると茶髪黒目の少女が俺の傍で座っていた。
「・・だれ?」
「あっ・・すいません。私は、ユウカって言います。帝国から来た者です・・」
「帝国・・あぁ、帝国の勇者パーティー?」
「そう・・ですね・・私は、治癒魔法が専門なので戦うことはできませんが・・」
ユウカという少女の話を聞きながら、周囲を見渡すと焼け野原へと変わり果てた姿になっていた。
「そうだ・・みんなは?」
「あ、あちらです・・」
彼女の指差す方向に顔を向けると、獣人シスターズとシェルに囲まれた自称帝国勇者が地中に埋められ顔だけ出している。
「お、おぉ・・」
彼女達に囲まれた自称帝国勇者の表情に生きる希望を失ったような顔になっている。
「みなさん、お強いんですね・・帝国最強と称えられた彼が、抵抗する動作も許されることなく負けてしまいましたから」
「彼女達は強いよ・・」
ゆっくりと立ち上がり、埋められている彼のところへと向かう途中にギリギリで守ることができた黒髪少女マリと女騎士ダリアが駆け寄って来る。
「あの、右手は・・」
「あぁ、マリさん。右手は治癒させましたよ」
右手をヒラヒラさせながら、治ったことをアピールして囲んでいるシェルの後ろに立つ。
「どんな感じ?・・シェル」
「ぅひゃ・・ハル?」
振り向き様に抱きつくシェルの大きな胸が寝間着のため柔らかい感触が伝わってくるのを楽しんでいると、俺の存在に気付いた自称帝国勇者が声をあげる。
「おいっ!お前!・・生きてたんなら、俺をここから出せ!」
喚く彼の一言が、さらにこの場の空気が冷え込んでいく・・。
「さむっ・・」
そう呟きながら俺は彼の前で屈んで視線を合わせ笑顔になる。
「よく無事に生きていたね・・もう何回か死んじゃった後かな?」
「ふっ・・・ふざけんな!なんなんだよコイツら・・化物じゃねーか!」
シュッ
聞捨てならない言葉に俺は、解体用ナイフを彼の眉間に当てる。
「ひぃ!」
ほんのわずかに切っ先が突き刺さり眉間から赤い血が流れ、顔面蒼白になる自称帝国勇者はそのまま白目を剥いて意識を手放してしまった・・。
「みんな、俺はもう大丈夫だから彼を出してあげて」
皆は頷き、どこから取り出したのかクウコが長いロープを彼の首に回して強引に引っ張り出す。
鈍い音が数回聞こえたけど、彼女達は触れたくない汚物を取り出すかのようにぞんざいに扱い地面へと引き摺り出し放置する。
「・・い、生きてる?」
全身泥だらけで、下半身の方から独特の臭いがしたため俺は確認するのを中断し立ち上がり彼の仲間を呼ぶ。
「ユウカさん・・彼に治癒魔法を・・」
「・・は、はい!・・・・クサッ!」
小走りに駆けつけた治癒士のユウカは、屈んで治癒魔法を行使しようとしたところで、彼の下半身から漂う臭いに反応し顔を逸らし後退り離れる。
「ユ、ユウカ?」
「ご、ごめん・・マリ。ちょっと無理かも・・」
治癒士ユウカの予想外の行動に黒髪少女マリが、その反応に驚いている。
「わかった・・」
パシャ!
すると、マリが近付き倒れたままの彼の身体に顔を背けながら緑色の液体をかけて離れる姿を見ていたアルシアが口を開いた。
「お嬢さん、そこの彼は大事な仲間ではないのか?」
「え?・・そうですけど・・」
アルシアの問い掛けにマリが答える。
「ならば、彼がどんな状態であろうとも手厚く看護するのではないか?」
「・・・・ムリなものはムリですよ・・」
俯き小さく答えるマリを見て、アルシアは少し慌てて言い直す。
「いや、あなたを責めているわけではないぞ・・只な、仲間とは・・その、大事にするべきだと思うのだ・・うん」
アルシアの言葉に、黙っていた治癒士ユウカが口を開く。
「そんなこと言われてもですね・・貴方はどうなんですか?どんな状態の人でも手厚くできるんですか?」
「ふん、当然だ!ハルが何日も目覚めない時は、下の世話も全てやっていたからな!」
「ちょっ・・アルシア?」
「ちなみに、ここにいる全ての女はハルがどんな状態でも、全ての世話を不眠不休でしておるぞ」
(やめてくれ・・その時の記憶のない俺の尊厳が失われていく・・)
マリとユウカの視線が、なぜか俺に向けられて何かを求めている瞳をしている。
「ま、まぁ・・たしかに何度か戦いの後で長く眠っていたのに起きたら普段の寝起きとなにも変わらない状態だったことは間違いないよ・・だから、彼女達が毎日世話をしてくれていたのは本当のことなんだ」
「「 ・・・・・・ 」」
もうこれ以上この話を続けたくないため、俺はカラに告げる。
「カラ、もう解散してテントに戻ろう。明日の移動に影響するから」
「うん・・さぁ、みんな戻りましょう。リルちゃん達も・・ね?」
ゾロゾロとカラ達が俺達のテントへと戻って行くのを見送り、俺となぜか隣りにいるアリスと帝国勇者パーティーメンバーが残った。
「ユウカちゃん、どうしよう・・このままシュン君を運びにくいよね」
「だよね・・どうしよう。サトル君とカズヤ君を呼ぶ?」
「・・でも、あの2人は泥酔してたよね」
この状況で起きてこない、その男2人はよっぽどの危機意識が低いのだろうと俺は思っていると、アリスが俺の右手を掴んで引っ張る。
「どうした?」
「手伝ってあげたら?」
「アリスが言うなら、仕方ないか・・よかったら、俺がなんとかしましょうか?」
「「 え? 」」
俺は、生活魔法クリーンを地面に転がっている自称帝国勇者の彼にかけて不快な臭いと汚れを消し去り、汚れていた衣服と髪が綺麗になっていく。
「「 すごい・・ 」」
「こんなもんかな・・」
それから目覚めない彼を背負い、街道の向こう側にある彼女達の野営地へと運ぶことにする。
「こちらの、テントにお願いします」
「あいよ」
大人3人がなんとか寝れるぐらいのテントに未だ目覚めない彼を横にさせてからテントの幕を下ろし、このまま彼女達の野営地から離れようとしていたら、夜警をしていたであろう男騎士が俺を呼び止める。
「ちょっと待ってくれるかい?」
「・・もう眠たいんで」
アリスの手を握り、このまま立ち去ろうとしたけど、男騎士が俺の前に立ちはだかる。
「少しだけでいいんだ・・」
「はぁ・・なんですか?」
「君達は王国の王都にいたことはあるかい?」
「いましたよ・・正確には王都の近くの村に住んでたけど・・」
「そうか、ここだけの話なんだが、我々は王国で召喚された勇者様達に会いに行く途中なのだ。シュン様と同じ黒髪黒目の少年少女と聞いていてね・・」
「オキタ達に会いに?・・あっ」
男騎士は、ニッコリ笑い俺に1歩近づいて来る。
「ほぉ・・オキタ様のことを知っているとは・・」
「言っておくけど、騎士様の期待している答えは無いと思うよ」
「まぁ・・そう言わずに・・それで、オキタ様は何処にいるのか知っているかい?」
「・・還ったよ」
「そうか!今は王都に帰っていらしているんだね?」
「だから還ったって・・」
正面に立つ男騎士は、勘違いしているのに腕を組み喜んでいるように見える。
「ハル、ちゃんと最後まで伝えないと・・あの男は理解してないよ・・」
「アリス?・・あぁ、そうだね・・はっきり伝えなきゃダメそうだな・・・・騎士さん!」
「ん?・・なんだい少年?」
「はっきり言うけど、王国の召喚勇者達は魔王を討伐して、元の世界に送還されたよ!」
「・・・・なんだって?」
「だから、もうこの世界に存在しないんだよ、王国の勇者達は!」
「ばかな・・そんなこと・・信じられないぞ!少年は、冒険者なんだろ?なぜ、そんなことを言える?」
俺に詰め寄る男騎士は、驚愕の表情で俺を見ている。
「そりゃ・・」
危うく俺と沖田達の関係を自ら暴露しそうになる。
「それは?」
「王国の王族が国民に発表したからだよ。帝国に伝わるより、冒険者の俺が耳にする方が早いからな」
「バカな・・」
「信じられないなら、最後に1つだけ教えてあげるよ」
「なんだい、少年?」
「俺は、冒険者ハルって言う。何かの縁があって知り合いになった、王国騎士団所属のアイナそしてリンと言う女騎士に会った時に聞けばわかるよ・・それでも満足できなければ、王国第3王女マリアにでも聞けばいいさ」
「しょ、少年・・キミはいったい・・」
「ただの平民冒険者ハルっていう男さ・・」
そう吐き捨てるように俺は野営地を離れると、街道で待ち構えるマリとユウカそして初めてみる少女1人がいた。
「ハルさん、王国の勇者が元の世界に帰ったっていうのは本当なんですか?」
「マリさん・・間違いないですよ。送還される儀式を俺は見ていましたからね」
「マリ?・・そしたらうちらも帰れるんじゃ・・」
「ユウカちゃん・・」
「でもさ、なんで私らは召喚されたの?彼の話しが本当なら、魔王は倒されたんだよね?」
「たしかにそうだよね、リコちゃん・・」
マリからリコと呼ばれる少女は、黒髪をポニーテールにしていて、アルシアに似た容姿だけど彼女のつり目が少し苦手に感じる。
「それにさ、あんたが連れてるその子とはどんな関係なの?」
「リコちゃん、この子はアリスちゃんって言うの」
俺の代わりに、なぜか真ん中に立つマリがリコと言う少女に教える。
「・・あんたの妹?」
「・・さっきから偉そうだね、あなたは」
黙っていたアリスが、突然口を開く。
「ア、アリス?」
「なっ・・子供のくせに、なんて口の利き方なの?」
アリスは繋いでいた手を離し、俺の前に立ちリコと言う少女を見上げる。
「言っておくけど、私はハルの妹でもただのパーティーメンバーでもないわ・・何度も身体を重ねて深く繋がりあった関係なの・・わかる?」
「「「 えっ??? 」」」
「簡単に言えば、ハルのハーレムメンバーの1人なの。ついでに言うと、さっきポンコツを地中に埋めて囲んでいた彼女達もハーレムメンバーなんだからね」
(おぅ・・アリスさん、女の子の口から言われると俺の精神がガリガリと削れていきますよ)
「ど、どうも・・うちの子が失礼しました〜」
アリスの言葉に硬直している3人の横を抜けて、俺は皆が待つテントへと走って帰ったのだった。
「アリス、あんなことを言うとビックリしちゃうよ・・」
「いいじゃない・・本当のことなんだから」
「そうだけどさ・・」
ムギュ・・
薄暗いテントの中で俺を抱きしめるアリスの頭を撫でていると、俺の身体をよじ登り視線が同じ高さになる。
「アリス?」
「・・心配したんだからね」
「ゴメンな・・思った以上に威力が強くて・・簡易的にだと耐えきれなかった」
「・・バカ」
そう言いながらアリスは俺の頬を小さな手で優しく包みながら口付けをする。
そのまま何度か口付けを交わした後に、抱いたままアリスを横にさせると寝息を立てていたハズのリルとクウコが寄り添ってくる。
「起きてたのリル、クウコ?」
「うん、まってた」
リルは小さく答え、俺に抱きつき求めてきた。俺は、彼女達の想いに応えるように尽くしていくと、結果的に全員を受け入れて身体を重ねて夜明けを迎えてしまったのだった・・・・。




