12章 王国離脱編 18話 帝国から来た冒険者パーティー
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「ハル!!・・ミオちゃんが!」
リルとクウコの2人から川へと投げ飛ばされたミオは、叫びながら放物線を描き川へ落ちる直前に巨大魚に捕食されてしまい、その光景を全員が目撃してカラが悲鳴のような声を上げて駆け寄って来た。
「ミオちゃんが食べられちゃったよハル!・・どうしよう!?」
見上げるカラを落ち着かせるため、幌から降りた俺はカラの手を包み込むように握り落ち着かせる。
「大丈夫だよ。ミオならそのうち帰ってくるから」
「・・でも!」
俺は視線を周囲に向けてからカラの瞳を見つめて告げる。
「見てごらん?俺やリル達が慌ててないだろ?あの2人なんか、腰に手を当ててミオが戻って来るのを待っているようだよ?」
「・・・・ホントだ」
無理矢理?カラを納得させた俺は、ラニア達がいる場所へとカラを連れていく途中に、水柱が空高く上がると共に巨大魚を持ち上げたミオが岸に上がる。
「ほらね・・」
頭と尾ヒレを力なく地面に付け息絶えている巨大魚を自慢げに持ち帰って来たミオは、俺から受け取った解体用ナイフで手早く捌き昼飯の一品と役目を果たす。
昼飯を腹一杯食べて長い時間休んだせいか、ここから出発するのが嫌になった俺の意見が通り今日の移動はここで終わり野営することに決まると、獣人シスターズが嬉しそうに再び川へと走り次々に飛び込んで行った・・。
その4人の後ろ姿を見送った後に、アリスが隣りのイスに座り聞いてくる。
「ねぇ、あの子達はいつもあんな感じなの?街の中と全然違うから・・」
「そうだね・・街だと周囲の目があるけど、それ以外の場所は基本的に自由にさせているよ。呼べば、みんな必ず俺のところに戻って来てくれるから」
「みんなが?・・ホントに〜?」
「信じてないね?まぁ、見ててな・・お〜い、リルーみんな戻っておいで〜」
アリスと話す時と同じ声量でリル達を呼びかけるも、この声量では川で遊ぶ4人に俺の声が届くはずがないため、念話で4人を呼ぶと数秒もしないうちに川から飛び出しビショ濡れの4人が俺の前に立ち並ぶ。
「「 なぁに?? 」」
リルとクウコが同時に聞いてくる。
「夕方には・・陽が沈む前には戻ってくるんだよ?」
「「 は〜い!! 」」
笑顔で返事をするリルとクウコの2人は、そのまま水遊びの続きを楽しむかのように川へと一直線に走るも、ミオとミリナが残っている。
「あの、ご主人さま・・」
「どうした、ミオ?」
「・・・・」
黙り込んで少し俯くミオの顔を見て彼女が求めているモノを理解した俺は、深く座っていた野外イスから立ち上がりながらアイテムボックスから肉串の肉だけを取り出して彼女の僅かに開いた口の中に押し込み、ついでに隣に立っていたミリナの口の中にも同じ肉を口に入れてあげた。
モグモグモグ・・
「ほら、リル達と続きを楽しんでおいで」
口を動かしながら頷く2人は嬉しそうに手を繋いで川へと走り出して行った後にアリスが俺の横に立つ。
「ねぇ、どうして4人が一緒にハルの傍に戻って来れるの?」
「・・繋がりが深いからかな?」
そう呟いた自分が気持ち悪く思い笑ってしまう。
「そう・・でも、カラ達は違うでしょ?」
「いや、そうでもないと思うよ・・彼女達も呼ばなくても思った来てくれるから」
そう言いながらカラ達を念話で呼ぶと、最初のシェルとアルシアが来てくれる。
「どうしたのじゃ?」
「悪いねシェル・・アリスがね、俺が声を出さなくても皆が集まって来るのか気になったみたいなんだよ」
シェルの横に立つアルシアは、なぜか腕組みをしてニヤニヤしながらアリスを見て告げる。
「ま・・まぁ、ハルとはふか〜くふか〜く繋がっているから当然なのだ・・」
「そうじゃ!とても深く繋がった・・繋がっているからな。アルシアもたまには良いことを言うようになったのじゃ」
「ぬぁ・・わ、わたしはいつも良いことしか言わない・・うん」
顔を紅潮させながら去って行くアルシアと笑いながら後を追うシェルと入れ替わるようにカラとラニアしてアメリアの3人が歩いて来てカラが口を開く。
「どうしたのハル?・・なにかあった?」
ただ理由も無く呼んだとは言えないため、3人のメイド服を見てから口を開く。
「えっとね・・その3人とも、メイド服が似合っているよ」
「・・・・バカ」
言葉とは裏腹に喜んでいるカラを見て、無意味に呼んだことがバレなかったことに安堵しながら短い会話をして3人は戻って行く。
「ふぅ・・どうだったアリス?」
「・・・・なんて恐ろしいハーレムなの?まさか気付かない私以外の子達を洗脳とかしてるんじゃ?・・・・周りから見れば、わたしもそのハーレムの1人なの?」
「ん〜〜どうかな?見た目の年齢が子供だし、黒髪だから俺とアルシアの子供って思われてるかもよ?でも、アリスの意思を尊重するから他のパーティーへ行きたくなったら行っても構わないからな」
「それって、貴方ね・・」
「ん?」
「・・罪な男・・・・」
アリスは小さく呟きプイっと顔を逸らし黙り込んでしまい、そのまま会話も無く時間が流れ陽が傾き空がオレンジ色に染まった頃に獣人シスターズが水遊びを終えて川から上がる姿が見えた。
「あいつら、絶対に寒さに震えてるな・・」
アイテムボックスから薪を取り出し組み上げた後に火をつけて暖を取れるようにしてやると、それを見た4人が小走りなり囲むように座る。
濡れた長い髪と尻尾を乾かすのを手伝い終わった頃に、火傷しそうなぐらいのギリギリの距離で身体を丸めていつのまにかリル達は寝息をたてていた。
「・・やっぱり猫だよな、こいつら」
それから陽が沈み暗くなる前に野営の準備をしていなかったことを思い出し急いで大型テントを設営し、焚き火を囲むように新たに野外イスを並べひと段落すると、シェルとアルシアが戻りカラ達が夕飯の支度を始めてくれる後ろ姿を眺める。
「・・ん?」
不意に足元でフワフワした感触を感じて足元に視線を向けると、寝相の悪いと有名なリルが俺の足元まで転がり込んでいて、銀色の毛並みの長い尻尾が足を撫でるように揺れている。
そのゆっくり揺れるリルの尻尾を右手で掴み、先っぽを撫でながら相変わらず何もすることがないなと思っていると、カラの声が聞こえる。
「できたよ〜!」
カラ達が少し離れた場所で作っていた夕食が出来上がったようで、大きな鍋と食器が入ったカゴを持って来て、皆で配膳の準備を進めていると来たから数人の気配が街道を移動し近付いて来る気配を捉え視線を向け立ち上がる俺は警戒のため街道の方へ移動し待ち構えることにした。
薄暗い中、街道を走る馬車を視界に捉え見ていると俺の前で馬車が止まり御者の青年が俺に声をかける。
「こんばんは〜ここで野営ですか?」
「あぁ、今夜はここで野営するところだよ」
一般的に1パーティーで野営するよりも見知らぬパーティーが野営している近くで野営した方が魔物への対処が容易と認知されているため、自然と先に野営している冒険者パーティーの近くに他のパーティーが野営することは普通のことだ。
「僕たちのパーティーも近くで野営しても良いでしょうか?」
「構わないよ・・でも、うちのパーティーは夜警しないで野営するパーティーだから気にしなければどうぞ」
「・・そ、そうなんですか?よっぽどの高レベルのパーティーなんですね・・わかりました。ありがとうございます。みなさん、今夜はこの辺りで野営をします」
御者の問い掛けに荷台から若い男女の声が聞こえ、馬車は再び動き出し街道を挟んで少し離れた場所で止まったのを確認してから俺は皆の場所へと戻る。
「どうでした?」
「おっと」
メイド姿のラニアが俺を迎えに来てくれたようで、俺は特に問題無いよと伝えながら並んで歩いて戻ると、すでに配膳の準備が終わっていて俺が帰って来るまで食べるのを待っていてくれていた。
「ゴメン、みんな待たせちゃったね・・食べよう」
夕食を食べながら完全に暗くなる前に生活魔法ライトで明かりを確保して、食事が終わりいつも通りの野営の夜を過ごしていると2人の男女が近付いて来た。
「こんばんは〜」
「はい、どうかされましたか?」
ラニアが立ち上がり2人の対応をしてくれるため、俺は視線を一度外しゆっくり過ごすことにする。もちろん、ラニア達の会話は聞こえない。
すると、ラニアが俺の横で止まりしゃがんでから耳元で告げる。
「ハルさん、あの2人がパーティーリーダーのハルさんとお話しがしたいと・・」
「そっか・・ラニアは、ゆっくりしていてね」
俺は立ち上がりラニアの頭を撫でてから待っている2人の前へと移動する。
「すいません、突然お邪魔しまして・・」
先に女が声をかけてきた。声からして俺とあんまり年齢が変わらない子だろうと感じながら生活魔法ライトを頭上に放ち明るさを確保してから対応する。
「こんばんは、全然大丈夫ですよ」
「うわぁ・・無詠唱だ・・」
突然出現した生活魔法ライトに驚く少女の声を聞きながら2人を見ると、珍しく俺と同じ黒髪黒目の少年少女で2人も俺の容姿を見て驚いたようだ。
「うわっ・・俺らと同じ黒髪黒目だ・・」
「ちょっと、シュン君失礼だよ・・」
「あはは・・構いませんよ。黒髪黒目の持ち主は珍しい存在ですからね・・それで、自分になにかご用でしょうか?」
俺の問い掛けに再び少女が口を開く。きっと隣りに立つ少年だと話がややこしくなるのだろう・・。
「はい。先ずは近くで野営するので、その挨拶をと思ったんです・・」
「あぁ、それはどうも・・野営で挨拶する冒険者パーティーは珍しいですね」
「そ、そうなんですか?」
あまり野営経験が無いような言動なのに、あの馬車は高そうに感じていると、少年の視線は終始俺の先に向けられていて落ち着きがないように感じた。
「あの、なにか気になることでも?」
俺はタイミングを見て、少年に問いかける。
「・・・・えっ?なに?」
「あちらの方をずっと見ていたので、なにか気になることでも?」
「・・・・さっき君を呼んだメイドと、あそこにいるのは知り合い?」
なんか馴れ馴れしい少年に対し俺は、普段通りの話し方に戻す。
「あぁ、あそこにいる子達は俺のパーティーメンバーだよ」
「おぉ・・マジかよ・・女しかいねーし・・リアルハーレムじゃん」
そう呟く少年に俺は苦笑いする。
「シュン君、挨拶は済んだから戻るよ?」
「あ?・・そうだな、戻るか・・」
「すいません、お邪魔しました」
「いえいえ、もう暗いので早く野営の準備を終わらせた方がいいですよ」
少女に手を引っ張られながら少年は自分達の野営地へと戻って行く。その後ろ姿を見ていると薪に火が放たれたようで焚き火で彼らの野営地がそれなりに明るくなる。
「男4人に女4人の構成か・・」
8人パーティーの中で、鎧を纏った男女が目に入りその2人が6人に何か指示しながら野営の準備をしているようだった。
それを確認した俺は、自分の野営地へと戻り再びゆっくりとした時間を過ごしてから呟く。
「そろそろ寝る時間かな・・」
設営したテントの中に入り、適当に毛布を置いていると獣人シスターズとアルシアとシェル達が入って来て寝間着に着替え始める。
「お、お前らな・・少しは女としての恥じらいを・・」
「見たくないのか?」
シェルがニヤつきながら俺を見て呟く。
「そりゃ見たいけどさ・・そんな堂々と着替え始めたら・・なぁ?」
そんな俺の想いを知ってか知らずか、着替え終わると毛布を手に取り寝転び始める。
「ハルは寝ないの?」
俺の足元でゴロゴロ転がるリルが、毛布から顔だけ出している。
「もう少し起きてるよ」
「そう・・ねぇ、ちゃんとリルもここで寝てくれる?」
「・・あぁ。リルが寝た頃に隣で寝るよ」
「うん・・」
しゃがんでからリルの頭を優しく撫でて目を瞑った頃にテントから出ると、ちょうど片付けが終わったカラ達が入って来る。
「まだ寝ないのハル?」
「まぁね・・カラ達は先に休んでて・・もう少ししたら俺も寝に戻るから」
「・・うん」
すると、最後に入るラニアが俺の左腕を掴み耳元で呟く。
「ハル、お夜食はイスに置いているから」
「ありがとう、ラニア」
ラニアと口付けを交わして別れた俺は、座っていた野外イスに視線を向けると、コップとパンが2個置いてあった。
コップとパンを手に取りイスに座り俺は、ラニアが置いてくれた夜食を食べながら風に揺れる焚き火の炎を眺める。
静かな夜を迎えパチパチと爆ぜる薪の音を聞きながら、たまにテントから聞こえるカラ達の笑い声を聞きながらソロキャンプをしていた元の世界のことを思い出す。
「琴音達は、元気にしているかな・・」
夜空に瞬く星を見上げながら妹達の顔を思い浮かべながら、たしかあの時もこんな感じで夏休みにソロキャンプ
をしている時に急に光に包まれ気づいた時にこの世界に召喚されていた・・。あれから数年が経ちいろんな出来事があったなと振り返りながらも、アイナやリンそしてマリアの顔が目に浮かぶ。
「あの3人とも、なんとかしないとな・・・・俺次第なのかもな」
そう呟きながら、密かに購入していたエールの樽をアイテムボックスから取り出し、コップに注ぎ1人で酒を楽しむことにする。
(みんな、ごめんな・・)
1杯目は一気に飲み干し、2杯目はゆっくり飲もうと決めるも我慢できず一気に飲み干してしまった・・。
「ぷはぁ〜〜・・・・」
3杯目を注いで一口飲んでからイスの背もたれに寄り掛かり星空を眺めていると、あのパーティーが野営している場所から1人の気配が真っ直ぐこちらに近付いて来る。
ジャリ・・ジャリ・・ジャリ・・
足音を出しながら近づくため、そのまま気付かないフリをして相手の出方を待つことにしていると思ったより離れた場所から声をかけられる。
「あのぉ〜すいませ〜ん・・」
俺は振り返り声主を見ると、夕方に接触して来たあの少女だった。
「どうしました?」
「・・・・近くに行っても?」
「・・どうぞ」
「ありがとうございます」
少女は、ゆっくり歩きながら俺の背後には立たないよう移動し少し離れた場所で立ち止まる。
「あの、1人で夜警ですか?」
「まぁ、そんなところですかね〜」
「夜警って、2人でするものだと聞いてましたけど違うんですね」
「いえ、普通は2人1組で警戒しますよ」
立ったまま話す少女に俺は座るよう伝え隣りの野外イスに座らせる。
「あの・・私達は、王国の王都へと行く旅の途中なんです。あなた達は、どちらへ行くのですか?」
「俺達は、帝国へ向かう途中なんですよ」
「え?帝国ですか?・・私達は、帝国から来たんですよ!」
「そうなんだ。王都へは何をしに?」
「・・えっと、ある人達に会いに行くんです。あなた達は、帝国で何を?」
「ん〜里帰りですかねー」
「帝国出身なのですか?」
俺は、胸元にしまっている帝国の冒険者ギルド発行のギルドカードを彼女に見せた。
「帝国冒険者・・・・」
そう呟く彼女に話題を変えるため、飲み物を進める。
「何か飲みますか?・・エールか果実酒か・・」
「エール?」
「お酒の一種ですよ」
「えっと、果実酒でお願いします」
「わかりました」
アイテムボックスから果実酒入りの樽を取り出してコップに注いで手渡す。
「ん〜いい香りですね・・いただきます」
ゴクッ・・ゴクッ・・
「ぷはぁ〜!甘くて美味しいです」
俺は彼女から空になったコップを受け取り2杯目を注いで手渡しながら告げる。
「今更ですけど、見知らぬ男から飲み物を受け取って飲むのはアブナイですよ?変な薬とか入れられてるかもですし・・」
「ふふっ・・大丈夫ですよ。コレには何もアブナイものが入ってないのがわかりますから」
「なるほど、鑑定持ちでしたか」
「はい」
少女はニッコリと笑いコップを俺に近づけてくる。
「・・・・」
「乾杯ですよ・・お互いのコップを優しく当てるんです」
「そうですね・・」
コチン・・
「「 カンパイ 」」
出会ったばかりの少女にペースを握られてしまい酒を飲む状況にソワソワする俺に対して、彼女は果実酒を一気に飲み干す。
「ぷはぁ〜!初めて飲みましたけど、コレ美味しいですね」
「王国の都市で買ったんですよ・・まぁ、もう1杯どうぞ」
空になった彼女のコップを受け取り3杯目を注いで手渡す。
「・・・・自己紹介が遅くなりましたね。私は、マリって言います」
「俺は、ハル・・よろしく」
少し酔いがまわったのか、マリと名乗る少女は帝国からここまでの旅路を詳細に教えてくれる。幼馴染の6人と世話役の騎士2人とで行動していると。
その聞いてもいないことをどんどん喋るマリの聞き手に徹していると、テントからアリスが顔を覗かせ俺を見つけるとトコトコ歩いて来る。
「・・ハル〜?まだ寝ないの〜?」
「まだ起きてるよ」
アリスは寝間着姿でトコトコ歩き俺の膝の上に座り背中を俺に委ねる。
「こ・・こんな小さな女の子もいるんだ・・」
「・・んぅ〜だれ?」
「この人は、マリさんだよ。向こうで野営しているパーティーの1人なんだ」
「・・ハルの新しいハーレムメンバーになるの?」
「いやいや・・それはないから・・」
「ふ〜ん・・」
アリスは特に興味がないようで、そのまま目を擦りながら目を瞑ってしまった。
「・・すいません。この子はアリスって言います」
「ひゃい・・」
なぜか恥ずかしそうに反応するマリの顔を見ていると、アリスが寝息を立てて寝てしまったため落ちないよう抱き抱えていると、マリのパーティーが野営している場所から1人の気配が急いで近づく気配を捉えたのだった・・・・。




