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12章 王国離脱編 9話 怠慢からの出戻り馬車

アクセスありがとうございます。



 ソファで目を閉じたばかりなのに、もう起こされてしまう。頭を重く感じながらゆっくり目を開けると、茶色の瞳がパチパチと瞬きしながら俺を見つめる。


「朝だよ、ご主人さま」


「・・・・オヤスミ、ミリナ」


 眠さと怠さにに勝てずゆっくりと目を閉じて俺は二度寝へと意識を再び沈めようとする・・眠る前にあった温もりは今は感じないため、アリスはいつのまにかベッドへと移動したのだろう。


「起きて〜!もう、みんなご飯食べに行ったよ〜ご主人さま〜」


 ミリナが肩を揺らして、二度寝の邪魔をしている。


「ん〜わかったよ・・起きるから先に飯食べに行っていいよ、ミリナ」


 頭を掻きながらソファから立ち上がり、背伸びをしながら欠伸をするとミリナが先に部屋を出て行く。


(ふっ・・作戦通りだ。詰めが甘いな、ミリナくん)


 そのまま目の前のベッドへと倒れ込み、フカフカのマットに沈み優しく包まれながら三度寝へと意識を落としていった・・・・。



「うげぇ!」


 不意に伝わる背中の痛みに強制的に意識が覚醒されながら吐き出される息と床に声が漏れる。


「いつまで寝てるの?・・このまま永遠に?」


 背中に乗っている犯人は、声の主からしてアリスだ・・何気に小さな足の指で背中をニギニギしている理由が不明だ・・っとその前に。


「ア、アリス・・いま起きるから」


 スッと背中にあった小さな足の感触が消えた瞬間に俺は体を捻り仰向けになると同時に股の上に跨がるようにアリスが座る。


「んぁ・・」


 変な声を漏らすアリスは、体勢を崩しそのまま俺の両肩を掴む姿勢となってしまった・・。


 ガチャッ



「ハル〜!そろそろ起きなさいよー!」


 このタイミングを待っていたかのように、カラが部屋のドアを豪快に開けて入り俺と目が合うと感情の無い瞳の表情に変わる。


「・・・・朝から元気なことで」


「カラ、ちがっ・・」


「うえーん。キズモノにされたよー」


 全く持って棒読みのアリスに俺は苛立ちを覚えるも、この状況では男の俺が不利だ・・今をどう乗り越えるか考える。


「アリスちゃん、ハルと遊ぶのもいいけど支度を先に済ませてね」


「は〜い!」


 トンッ・・トトトッ


 アリスはベッドから飛び降りるとカラの傍に行き、彼女がマジックポーチから出す着替えを受け取り着替え始める。


「・・・・」


「ハル、女の子の着替えを見てないで、早くご飯を食べてきて!」


「あぁ、ゴメン」


 起き上がりベッドから出て、そのまま下の食堂へと階段を降りる。


「ハルよ、やっと起きたのじゃな?」


「おはよ、シェル・・まぁね・・」


 階段を上がるシェルとすれ違いそのまま下に降りると、ちょうどみんなが食べ終わったところだった。


 そのまま1人で朝飯になると思っていると、獣人シスターズは再び椅子に座り俺が食べ終わるのを待ってくれるようだ。


「ハルさん、私とアメリアさんで馬車の準備をしてきますから、ゆっくりしてください」


「そっか・・ラニア、2人で大丈夫か?誰か護衛で行かせるけど?」


「・・そうですね・・まだ実戦経験が無いので確かに不安は残りますが・・」


「なら、アルシアとシェルを連れて行けばいいよ」


「はい。ありがとうございます」


 ラニアとアメリアは階段を上がり部屋にいる2人を呼びに行ったようだ。


「はい、どうぞ〜」


 モナミが自然な流れでテーブルにパンとスープを置いてくれる。


「あ、ありがとう・・モナミちゃん。全然気づかなかったよ」


「ふふっ・・お兄さんも、まだまだですね〜」


 悪戯な笑みを浮かべながら、モナミは調理場へと戻って行った・・。


(マジで気づかなかったな・・あの子は将来有名な存在になるかも)


 そう思いながらさっさと朝食を食べていると、ラニア達4人が宿屋から出て行こうとしている。


「アルシア、シェル・・2人を頼むな!」


 2人は手を挙げてコクリと頷き、宿屋から出て行く。


「さてと・・俺も支度するかな・・待たせたね、行こうか?」


 俺が食べている間に、することがなくゴロゴロしていたリル達に声をかけて部屋に戻ると残っているカラとアリスの2人だけだった。


(そっか、もう琴音達はいないんだよな・・・・)


 部屋のドアを開けたまま部屋に入らない俺を不思議に思ったようで、アリスが腰掛けていたベッドから立ち上がり俺の前にきて見上げる。


「どうしたのよ?・・そんな顔をして・・」


「・・いや、別になんでもない」


「・・そう、ならいいけど」


 そう答え、アリスの返事を顔を見ず聞きながら部屋の奥に移動し、普段着に着替え旅の支度を整える。あとは、ラニア達の準備が終わるのを待っている間に気配探知スキルを発動し王都から来る集団の位置を再確認する。


(まだ俺たちが2日目に野営した辺りか・・このままだと2日後には、この街に辿り着く感じだな)


 まだ安心できる距離にいることを確認したところで、ラニアから念話が届く。


『ハルさん、馬車の準備が整いました。今は、西門の方で待っています』


『ありがとう、今からみんなでそっちに行くよ』


『はい、待ってますね』


 乱れていたベットをそれなりに直してから部屋を出てモーナとモナミに別れを告げる。


「快適に過ごすことができたよ、ありがとね」


「今回は短かったけど、また泊まりに来てね」


「あぁ、またこの街に寄った時は利用させてもらうから」


「お兄さん、また来てね・・」


「ありがとう、モナミちゃんも元気でね」


「うん!」


 これから帝国へ行くことを告げていないため、また来てくれるだろうと思う期待の笑顔を見せる2人を見て心が痛む。


「それじゃ、お元気で・・グリスさんにもよろしくと・・」


 俺達の姿が見えなくなるまで店の前で2人が手を振って見送ってくれる姿を見ると、またこの街に来たいと思ってしまう。


 だけど、それはもう無いと心の中で言いつけて最後に大きく手を振って俺は前を見て歩き西門近くで待つラニア達と合流し、都市ニシバルを離れた・・・・。


 西門での門兵から受ける検査を無事に終わらせた俺達は、街道を順調に進む。


「暇だね〜」


「そうですね〜」


 荷台の幌の上でミオの膝枕をしてもらい青空を見上げ呟きながら、フリフリ揺れるミオの尻尾をたまに掴んでは離したりを繰り返す・・。


 そんなゆっくりとした時間を2人で過ごしていると、足元から視線を感じ顔を向けると顔だけ覗かせるリルとクウコがいた。


「どうした?」


「そっちに行っても良い?」


 リルが少し甘えるような声で聞く。


「おいで」


「「 うん 」」


 クルッと1回転して幌の上に着地するリルとクウコは、俺の横に滑り込むように転がり、普段外では見せないケモ耳と尻尾を出している。


「リルちゃんとクウコちゃんの髪は輝いて綺麗だね・・」


 ミオが陽の光で輝く銀髪と金髪を触りながら2人に伝えると、クウコは逆にミオを羨ましいと告げる。


「クウコは、ミオの黒髪がハルと同じで羨ましいよ」


「リルも〜」


「そう?・・なんだか照れちゃいますね・・」


 そんな話で盛り上がっていると、御者をするラニアに俺は呼ばれた。


「ハルさーん!」


「どうした、ラニア?」


「帝国へは、この街道であってますかー?」


「あぁ、帝国へは北門から伸びる街道を進めば・・・・あー!!!!」


 俺の叫び声に馬車が止まる。


「ど、どうしたのよ急に叫んで!」


 カラが御者台に立ち、幌にの上にいる俺に問いかける。


「・・カラ、やっちまったよ俺は・・」


「だから、何をやったのよ?」


「俺たちは西門から出たよな?」


「そうだけど・・」


「帝国は、北門から出た街道を進むんだよ・・西門から出て街道を進むと、ユーリス聖王国に行っちまう」


「ユーリス聖王国って・・もしかして、あのユーリス聖王国?」


「こんな俺達みたいなパーティーが行くと、問答無用で男の俺は投獄される・・ラニア!すぐに引き返すぞ!」


「は、はい!」


 ラニアは、慌てながら馬を操り馬車を通ってきた街道を戻らせる。


「ご主人さま?その、ユーリス聖王国は良くない国なのですか?」


 俺の慌てぶりにミオは聞く。


「小さい頃に聞いた記憶なんだけど、獣人を酷く嫌いハーレム男を弁明の余地なく断罪するって聞いたんだ」


「獣人嫌いですか・・」


「大丈夫・・帝国は、実力主義の国だから種族は関係ない国だから」


「・・うん」


 この時俺は、周囲に潜む存在に気付いておらず、どんな存在でも捉えるリル達は俺が既に把握し気にしていない様子から警戒するほどの存在じゃないと判断し互いに意志の疎通を怠ったことが、後の面倒なことに巻き込まれてしまうことを知らないでいたのだった・・・・。


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