3章 王城編 1話 奪われた2人へ
南の森で薬草採取が終わり王都へ帰る途中にマーカー王国所属騎士団と遭遇してしまう。そこでハイド騎士団とアイナ副団長と望まぬ再会をしてしまった今・・。
「騎士団長様、もう帰らせてもらいます・・行こう、リル・・クウコ」
2人の手を繋ぎ、ハイド騎士団長の返事を聞くことなくテントの外へ出ようしたところ、少女の声で呼び止められれた。
「あの!・・待ってください、ハルさん。お願いします」
立ち止まり声がした方に向くと、声の主はアイナ副団長の隣にいる黒髪少女だった。
「あなたは?」
「す・・すいません。わたしは、コトネ=シイナです」
「はじめましてコトネ様。なんでしょうか?」
黒髪少女が俺を呼び止める理由がわからない。
「ハルさん、突然ですが・・リサ、カラという2人の女性をご存知ですか?」
「・・・・・・」
いきなり、リサとカラの名前を告げる黒髪少女に対し戸惑ってしまい、すぐに返答ができなかった。
「ご存知ないでしょうか?・・すいません、失礼しま・・」
「コトネ様!どうして2人の名前を?」
「あぅ・・・・」
思わずあげた声で、コトネ様が萎縮してしまう。代わりに隣にいた黒髪少女が口を開く。
「にぃ・・じゃない、ハルさん!わたしは、ミオ=シイナです。おねぇちゃんが言った、リサさんとカラさんとは王城で会いました」
「王城で・・?そしたら、勇者様と一緒では?」
黒髪少女のミオ様は、さっき俺が脅し倒した黒髪少年を一度見てから口を開く。
「リサさんとカラさんは、一度も勇者と一緒に過ごしていません。これから王都に帰った後は、どうなるかはわかりませんが・・・・」
ミオ様が言うには、リサとカラはまだ勇者の夜伽相手をしていないらしい。でも、これから王都に帰った後はわからないと言うことだろう。
「そうですか・・でも、なぜそれを俺に?」
「それは、おふたりが・・」
「そこまでだ!さっさとここから立ち去れ!」
ミオ様の言葉を遮るように、ハイド騎士団長が大声で制止する。だが、こんな貴重な情報を聞き漏らすにはいかない。
「騎士団長と話すことはない!!・・ミオ様、続きをお願いします」
「あ・・はい。ハルさんにとても逢いたがっています!」
あの家で離れ離れになってどれくらい経ったのだろう。今も2人が俺に逢いたい気持ちがあるのか自信がなかった。これが嘘でもいいから、俺は2人を信じたい。
「ミオ様。ありがとうございました」
彼女たちに一礼し、外の出る。
「リル・・クウコ、一つお願いがあるんだ」
俺はしゃがみ、リルとクウコの視線に合わせてから告げる。
「わかってるよ、ハル。2人を取り戻したいんでしょ?」
リルが微笑みながら言ってくれる。
「・・あぁ。俺のワガママだけど、いいかな?」
クウコがギュッと抱きしめてくれて・・・・。
「ハルが望むことを叶えるのが、クウコとリルの願いなの・・」
「ありがとう。クウコ、リル」
リルを左腕で抱き寄せて立ち上がる。
「さぁ、王都へ帰ろう」
リルとクウコは頷いて俺に身を委ねてくる。2人を抱いたまま、数時間の道のりを歩き続けて王都南門へと辿り着いた。門兵に3人分のギルドカードを提示し点検を受けてから門を通過する。
大通りを抜けて行く途中にあった出店に寄り2人に好きなだけ肉串を買い与えてから冒険者ギルドへ向かい扉を開けて中に入ると受付に座っている受付嬢アメリアと目があった。
「あ・・おかえりなさい!」
「ただいまアメリア。依頼達成報告に来たよ」
「お疲れさま。換金窓口で手続きしてね」
「りょ〜かい」
そのまま換金窓口へ移動し、カウンターに依頼された分の薬草を置き、ギルド職員の鑑定と計量が終わって報酬をもらう。
「あの・・まだ余剰分の薬草があるんですけど、追加で買い取ってくれますか?」
愛想の無いギルド職員は、目も合わせることもなく答える。
「・・そこに並べてください」
「・・わかりました。ここに並べますね」
リルとクウコを近くのソファに座らせて肉串を渡した後、換金窓口のカウンターにアイテムボックスで収納している薬草を並び始める。
「・・あ・・あのー!・・いや・・あ・・」
女ギルド職員が何か叫んでいるような声が遠くから聞こえるが違う窓口だろう。
「あの〜まって・・こんなの・・むっムリ・・入らないよ」
しばらくし女ギルド職員の声が聞こえなくなった。きっと解決したんだろう。そして全ての薬草を並べ終えた俺が満足していると、右の方にある受付窓口から誰かが飛び出したのが視界に入った。
その飛び出してきたのは、さっきまで対応していた女ギルド職員で、彼女は顔を真っ赤にして走ってくる。
「あなた!・・・・どんだけですか?」
「え?・・こんだけですが」
俺が並べた薬草は、3つ並ぶ換金窓口全てを覆い隠すほどの量を積み上げてしまっていた。まぁ、途中から気付いていたけど、愛想の悪い彼女への仕返しとは言えない。ここまで積めば、ギルド職員声が聞こえなくなるのは当然だ。
山積みになった薬草を4時間程かけて彼女が鑑定し無事に買い取ってもらえた。鑑定中に彼女は泣きながら愚痴をこぼしていたが効かないことにした。
報酬を受け取り、まだ勤務中のアメリアがいる窓口に寄って、王城にいるリサとカラに会いに行くと伝えてからギルドを出る。伝えた時のアメリアの顔が物凄く驚いていた顔が面白く印象的だった。
「リル、クウコ、これからルーシーの所へ寄ってから王城へ行っていいかい?」
「「いいよ」」
2人の同意を得てからルーシーの店に歩き始めた。彼女の店に入って探すことなく大声でルーシーを呼ぶ。
「ルーシー!ルーシー!!いるかー?」
相変わらず、店番をちゃんとしない人だ。しばらくして店の奥からルーシーが姿を現す。
「なんだい・・・・ハルかい」
言葉とは裏腹に少し嬉しそうな表情を見せるルーシーだ。
「悪かったな俺で・・それより頼みたいことがあるんだ」
「「ダメ!!」」
リルとクウコの拒否を無視してルーシーに告げる。
「この子たちを、しばらく預かって欲しいんだ・・」
「ハル・・どうしてだい?そんなに懐いていていて、お前より強いんだろ?」
視線を落とし俺の腰回りに抱きついて、見上げてる2人の頭を撫でながらルーシに話す。
「じつは・・リサとカラを王城から今夜連れ出そうと思うんだ。そうするとね・・この2人も国から追われる身にさせたくはないんだ」
「そうかい・・覚悟を決めたんだね、あんたは・・」
「あぁ、奪われた人を取り戻しに行くよ」
俺の覚悟を感じ取ってくれたルーシーは何も言わない。ずっと見つめているリルとクウコは、少し涙目になっている。
「リル、クウコ・・俺は2人の日常を失くしてほしくないんだ。だから・・ルーシと待っててくれないか?」
2人は黙ったまま首を横に振って顔を俺のお腹に埋める。
「明るくなるまでには戻ってくるからさ・・」
リルがスッと顔を上げて、静かに呟く。
「ハル・・リルとクウコのこと嫌いになった?」
「そんなことないよ。ずっと大好きだよ」
にへら笑いをしたリルが、ちょこんと背伸びをして言う。
「リルとクウコを連れて行った方が、すぐ終わるよ。ねぇ?クウコ」
クウコも顔を上げてから頷き肯定する。
「でもな・・・・」
「「ね?」」
「・・わかった。一緒に行こう」
「「うん」」
2人を抱き上げ、ルーシーを見る。
「話がまとまったみたいだね」
「あぁ」
結局3人で王城に侵入することになった。そして、数が少なくなった日用品や携帯食料などをルーシーの店で買い揃えてから王城へ出発する。
ルーシーの店を出た頃は、まだ陽が沈んでなかったため、王城の門が見える最寄りの裏路地で時間を潰す。
完全に陽が沈むタイミングで、騎士団一行の馬車が王城門を通過し城内へ入って行くのを見届けた。
俺は立ち上がり、座っている2人に手を差し出す。
「さぁ、行こう」
琴音&美音から、リサとカラの近況を聞いて、連れ戻す決意をしたハル。離別から数年経った今も2人がハルへの思いを失くしてないか怖くて、すぐに行動を取れなかった。これから2人の元へ進むハルを待ち構える運命は・・・・




