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2章 召喚編 7話 召喚者育成③

琴音 Side

 


 そのとき、わたしは目の前の光景を信じることが出来なかった・・・・。



 森の茂みから、金髪少年が美少女2人を抱っこして歩いて出てくる姿を思わず凝視してしまう。


 

 姿をあらわした金髪の少年は、開けた場所の中心で立ち止まり周囲を見渡している。少年に抱っこされている美少女は少年に身を任せ、気持ち良さそうに寝ている。陽の光でキラキラと輝く銀髪と金髪は、とても神秘的に見えた。


 森に隠れて待機していた。盾を装備する騎士達が金髪少年を一斉に囲い逃げ道を断つが、美少女を抱く少年に警戒を解き、ハイド騎士団長とアイナ騎士団長が近寄りハイド騎士団長が兜を脱いでいる。


 少し離れた距離だけど、会話を聞き取れる。どうやら、この森は立ち入り禁止だと少年に言っている。確かに、何年か前に謎の大爆発が発生し数年間立ち入り禁止になっていたと聞いた。でも、今は解禁されているのにどうしてハイド騎士団長は嘘をつくのだろう。


 そして、金髪少年は冒険者だと名乗っているけど武器が見当たらない。その少年は、冒険者ギルドから森の探索は解禁されていると主張しているけど、それは正しい。


 金髪少年が、思うように引かないことを不快に思ったのか、冒険者ランクを聞き出しているようだ。すると、ハイド騎士団長が大声で笑いながら、少年がFランク冒険者だと馬鹿にし始め、周囲の騎士達も笑い出している。


 なぜか、沖田くんとサッカー部の子も金髪少年に指を指して一緒に笑っているけど、私には美少女2人を抱っこして森を歩いていた金髪少年がとても駆け出し冒険者には見えなかった。


 騎士達の笑い声と鎧を叩く音がうるさかったのか、寝ていた美少女が目を覚ましたみたい。少女が起きたことに気付いた金髪少年は寝起きの少女を優しい顔で宥めている。


「なんか・・いいなぁ〜うらやましい・・・・」


 無意識に呟いてしまう私に美音が反応する。


「おねぇちゃんも?・・あの微笑み・・にぃに見たい」


「美音も?・・見た目は、おにぃには程遠いのにね。なんでだろ・・」


 なぜだか、心が懐かしさに満たされている・・あの少女の居場所に立ちたいという想いとともに。


 起きた少女2人が、少年から降りて地面に立つ。背丈からして10才くらいに感じる。けど、この世界では私達の感覚と合わないことが多い。若い姿のまま数百年生きるエルフ族が存在すると聞いているし。


 アイナ副団長が少女達のもとへ行き視線を少女達と合わせるためしゃがみ、Fランク冒険者の少年と一緒にいるより騎士団と居た方が安全だと諭している。


 でも、少女達はアイナ副団長を怖がっているようで少年から離れようとはしない。


 それもそうだ。兜を被ったままで素顔が見えない人に言われても警戒心が強まるままだから。それに気付いたアイナ副団長は、慌てて兜を脱ぐ。


 アイナ副団長が兜を脱ぐと、パサッと長い金髪が風になびく姿は綺麗だった。その姿を見た少女達は、警戒心を解いたのかアイナ副団長とハグをしている。


 どうやら騎士団が少女の保護を申し出ているようだけど、少年が断固拒否している様子。そして、業を煮やしたハイド騎士団長が馬車を待機させているテントまで少年たちを連れて行く流れになって落ち着いたみたい。


 開けた場所から移動し、私達のテントが立ち並ぶ場所まで少年を連れて戻り、いくつか繋げたテントは、多数の人を入れて会議をするときに使われるらしい。


 そのテントにハイド騎士団長とアイナ副団長が中に入り、2人に続き金髪少年達3人が入って行く。私達はしばらくしてから騎士の案内により中に入って行く。


 テントの中に入ると、入り口のすぐ脇に金髪少年達が立っている。奥にはハイド騎士団長とアイナ副団長が座っていて、勇者の沖田くんから奥詰目で座っていった。


 私達が座り終えたら、余っている椅子はなく金髪少年達は立ったままだった。時間をもて余しているのか、金髪少年は少女達に干し肉を与えているところで、少女達は笑顔で受け取りモグモグと美味しそうに食べている。


 干し肉を食べている少女達を私はじっと見ているとあっと言う間に完食し、まだ食べたそうな仕草で顔を上げて金髪少年を見つめている。少年は、しばらく少女達とにらめっこのような感じで見つめ合っていたようだけど、少年は根気負けしたようで腰の辺りから干し肉を取り出し少女達に渡す。


 さらに瓶を2本出して少女達に普通に渡す光景を見て、思わず1人で突っ込んでしまう。


「・・えっ?どこに隠し持ってたの?どこに?」


 金髪少年が突然瓶を出した事が理解できずにいると、少女達が飲み干した瓶を少年を返し受け取った少年は、何気なく持っていた瓶を消した。


 ・・そんな魔法教わってないよ・・異世界なんか、怖い・・・・。



 ハイド騎士団長に呼ばれた金髪少年は、しばらく放置されていてハイド騎士団長と沖田くんが話し込んでいる隙をついてテントから出ようとしている。


「ちょっと、勝手に帰ろうとしないでくれますか?」


 金髪少年が帰ろうとしたことに気付いた沖田くんがそれを制止する。


「あの・・この子達の昼飯がまだなんで帰ります」


「なんですか・・その態度は?」


「すいません、この子達を優先にしているので・・・・」


 テントから出ようとした少年は、振り返ることなく理由を告げた。


 突然、沖田くんが立ち上がり、言ううことを聞かない少年に不満をぶつける。


「このFランクごときの冒険者が!・・・・俺の言うことを聞け!!」


 テント内が一気に静まりかえる。


 金髪少年がゆっくりと苦笑いしながら振り向き、一歩出たところで。



「なんだその顔は!・・勇者のこの俺を舐めるなー!」


 沖田くんが威圧しながら抜剣した瞬間に、金髪少年に喉元を締められてもがき苦しんでいる沖田くんがいたハズだった・・。


 けど、いつの間にか金髪少年の姿はなかった。


 そして・・


 ただそこには、何一つ金髪少年の動きに反応できず、ただ膝をつき咳き込む沖田くんだけがいる。


「さあ、帰ろう」


「「うん」」


 いつの間にか金髪少年は少女達のもとに居て、テントから出ようとしていた。


「まて・・貴様!さっきの動きはなんだ!答えろ!」


 動揺を隠せない表情をしているハイド騎士団長は、席を立ち上がり怒鳴っているようだ。それに続きアイナ副団長も釣られて立ち上がり怒鳴るように叫ぶ。


「な・・何者なんだ貴様は!」


 金髪少年は、すぐに答えないためテント内は静寂に包まれている。


 すると・・金髪少年が深くため息をついた後、少し期待を裏切られたような悲しい表情を一瞬見せたように感じたときに口を開いた。




「・・アイナ、久しぶりだな」


「・・・・」


 新人騎士護衛の時以来だよな・・いや、独房で会ったのが最後か・・」


 金髪少年の言葉に私の隣にいたアイナ副団長が突然、顔面蒼白になり両手を握り震え始め次第に全身を震わせて行く姿を見て私は慌てて声を掛ける。


「ア・・アイナ副団長?」


 そこへ金髪少年がアイナ副団長に諭すよう語りかける。



「そうか・・やっぱり忘れて・・違うか・・存在していたことさえ記憶から消していたから、俺に気付かなかったのか・・ゴメン・・アイナ」


 そして、金髪少年が最後に謝って呼んだ副団長の名前に、物凄く深い悲しみの感情が込められているように私は感じてしまった・・。









 アイナ副団長 Side



 あの金髪少年が私の名前を知っているのはなぜだ?・・確かにあの新人騎士訓練で起きたことは鮮明に憶えているのに。


 あれほどの失態は忘れない。この私が関わった人間の存在を消し去る?・・そんなハズは・・・・。


 頭では、記憶だけでは思い出せない。だけど、この胸が何か大事なことを訴えてくるの。


 なのに・・なのにハッキリと思い出せない。考えれば考えるほど、頭の中で霞んでいるような感覚が一部ある。でもわからない。


 そして、金髪少年が私に謝罪した後に私の名を呼んだ瞬間、とても大きな喪失感に襲われてしまい涙が溢れ出し、力が抜けてテーブルに伏してしまっっていた。







  再び・・琴音 Side


 私は、アイナ副団長の変貌ぶりに驚き、金髪少年が話す内容をしっかり聞き取ろうとしてアイナ副団長の肩に手を添えて金髪少年を見つめる。



「騎士団長様・・冒険者ギルドマスターのダグラスから受け取った、受付嬢のリサとカラは・・良かったか?」


「だまれ!黙れ!・・き・・貴様は・・思い出したぞ!その顔を・・・・Cランク冒険者ハル!」


 

 金髪少年に問いかけられたハイド騎士団長は、過去の記憶を思い出したかのように金髪少年に指を指して少年の名を叫ぶ。


 

 そして、金髪碧眼の少年が答えたの・・。


「・・元Cランクな。今はFラン冒険者、ハルだ!」

 

これで、2章召喚編の話を一旦終わります。次回から主人公視点で3章 王城編の物語を進めていきます。



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