11章 王都逆襲編 11話 逃走
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真衣を狙うアリスの攻撃を俺は受け払いながら真衣の近くの壁に背中を打ちつけたことと、リルとクウコの2人から離れたことで隠密スキルが強制的に解除され姿を暴露してしまった。
「くっ・・」
「生きていたのか?」
俺を見つめるアリスの瞳は揺れている。
「・・まぁね。見た目に似合わず、良い蹴りだ・・」
「ふふっ・・」
少しだけアリスが微笑む。そして、左に立っていた真衣が俺のことに気づいたようだ。
「・・うそ、ハル?・・本当にハルなの?」
「よっ・・久しぶりだね、真衣」
真衣は言葉にならず、瞳から涙が溢れ出している。
「・・・・」
泣いている真衣からアリスへと視線を戻すと、その背後から沖田が聖剣をアリスの背中へと突き出してきているのが見えた。
「よっと・・」
掴み受け止めていたアリスの足を捻り倒す動作をする。アリスは痛みから逃れるように足の捻りに合わせ体を回転させた。
(よし、このまま・・)
俺の手の動きの制御下に入ったアリスの体を回転させながら聖剣の脅威から逃がし、そのまま俺は彼女と床を転がる。
ドゴォン!
直前で獲物を逃した聖剣は壁に突き刺さり、大きな穴を開けて止まる。
「ちょっと!ハルまで殺すつもりなの!?」
真衣の叫ぶような声に、沖田は気にすることなく俺とアリスを見下ろしながら聖剣を構えなおし、飛び込んでくる。
「死ねやぁ〜!」
結果的にアリスを抱え込むような姿勢となっている俺は、すぐ近くにあるアリスと視線が重なるも何も言わず互いに離れ沖田からの斬撃から逃げた。
「ふぅ、アイツは何かに取り憑かれてるの?」
再び俺は真衣の横に戻り、沖田の変わりようを聞いた。
「ハル・・なんか、魔王を倒してから余計に悪化しただけだと思うの」
「そうか、それなら正常運転だね・・」
俺のことに気付いてないのか、沖田は俺じゃなくアリスに狙いを定め間合いをとっている事を利用して、他の3人の前に立ち声をかけた。
「琴音、美音、愛菜・・元気してた?」
「・・おにぃ」
「にぃに」
「センパイ」
3人それぞれが反応し、見上げている。
「ただいま」
俺の口から出た自然の言葉に、3人は笑顔で答えてくれた。
「「「 おかえり 」」」
「まだ、戦えるかい?」
その言葉に頷いた琴音達3人は、マジックポーチに収納していた武器を取り出しさっきまで死んでいた瞳に意志が宿っていた。
「大丈夫そうだね・・真衣?」
俺は、少しだけ離れていた真衣の横に移動する。
「・・ハル」
「真衣も、まだ戦えそう?・・無理強いをさせるつもりはないよ」
「大丈夫。ハルがいてくれるなら、私は戦えるよ」
笑顔を取り戻しつつ、真衣は愛剣を取り出した。
「ありがとう。とりあえず、2人を呼ぶかな」
「2人?」
そう呟く真衣の言葉に反応する事なく、念話で2人を呼んだ。
『リル、クウコ・・こっちにおいで』
『 うん。今行くよ(行くね) 』
リルが反応し、クウコが同意してくれた。
シュタッ
近くで着地する音が聞こえ、隠密スキルを解除したリルとクウコが俺に抱きつき、少し機嫌の悪いリルの声がする。
「呼ぶの遅い」
「ゴメン、ゴメン」
そう謝りながらリルの頭を撫でていると、同じように抱きついているクウコも機嫌の悪い声でリルにしている事をシテと言ってきたため、同じように撫でてやった。
「もしかして、リルちゃんとクウコちゃん?」
突然姿を見せる2人に近づく真衣は、足を少し屈め2人の顔を見ようとしている。
「「 そうだよ〜 」」
リルとクウコは、見上げて真衣を見ながら肯定する。
「ここに来る途中で、再会したんだ・・まさか空から降ってくると思わなかったけどな」
「空から?・・リルちゃんとクウコちゃんは。空を飛べるの?」
「「 飛べないよ 」」
「ん??」
2人に否定されたことに真衣は、言葉が出ない。それに対し、クウコが呟く。
「あのポンコツ女神に転移させられたら、空だった・・落ちながらハルを探して見つけたから、そのままリルと飛び込んだの」
「・・・・」
なかなかあの状況を理解しろと言われても難しいだろうな。とりあえず、久しぶりに合流した真衣達との再会を喜ぶ前に、アリスの対処をしなければと意識を切り替えようとしたけど、1つ気になることがある。
謁見の間は、アリスと沖田の攻防で滅茶苦茶に破壊されている。そんな状況を見渡しながら、ミリアの消息が気になる。マリアは、さっき元気な姿を見かけたけど・・。
「真衣、他のパーティーメンバーと王族達は?」
「国王達は、他のメンバーが護衛について何処かへかくまっていると思う。ラニアさんやカラさん達は、ハルの家に避難させてる」
「そうか、ありがとう。ちなみに、王女様達も石原達と一緒に?」
「うん。国王と一緒にいたから、たぶんそうだと思う」
どうやら、マリアが王城門前にいることは知らないようだ。きっと見送った後に途中で別れたのだろう。それならば、王女様らしくない行動力を持つミリアは、きっと何かを企んでいるかもしれない。
そうしているうちに、沖田とアリスの戦いは激しさを増していく。
「これで、終わりだ!」
聖剣で、ゴスロリ少女を斬り倒そうとする勇者沖田と黒い日傘でそれを迎え撃つアリスの戦う光景は、物凄い違和感を感じる。
でも本人達は、真剣に命のやりとりをしているのだ。その2人の戦いに入るタイミングを伺っていると、沖田がアリスに聖剣の切っ先を向け突きにでる。
その聖剣の切っ先を逸らせるかのように、アリスは半身になりながら聖剣の腹に日傘を叩き込もうとした時だった。
「レイ・ビーム!」
聖剣の切っ先から真っ白な光線が放たれた・・。
ほんの数歩しかない距離から放たれたあの攻撃魔法を確実に避ける自信は無い。さすがのアリスも聖剣の切っ先から放たれた光線を避けることができず、左肩に受けて左腕を吹き飛ばされ鮮血を撒き散らす。
「ぎゃぁぁぁ!」
この部屋にアリスの声が響き渡り右手に持っていた日傘を落とし床に転がり回った。
沖田は容赦なくアリスを殺すため、隙だらけのアリスの首元へ聖剣を一気に振り下ろした。
ガンッ!
床を打ち砕く程の大きな音を出すも、沖田が振り下ろした聖剣はアリスの首を斬り落とすことはできず、その視線は、謁見の間の出口の方へと向けられていた。
「しぶとい・・この死に損ないが!」
「・・・・」
アリスは切り落とされた左肩の傷を右手で押さえながら沖田を睨みつけ、そのまま何も言わず走り去った。
「なっ・・待て! 逃げるな!」
それを追う沖田の背中を見て、俺も2人を追いかけた。




