11章 王都逆襲編 9話 魔王配下アリスとは
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3人で向かう階まで階段で上がる。王国の王城というのに、使用人ですら見かけないこの異常さは平民の俺でも理解できる。
そして目的の階の廊下に足を進める風を感じた俺は、王都の景色が見えて立ち止まる。
視線の先には、壁が破壊され外から風が吹き込み朝陽が差し込む街並みが見える。
「ハル?行かないの?」
「・・・・あぁ、そうだね・・行こう」
クウコの声で我に返り止めていた足を動かしながら思いを吐露する。
「かなり激しい戦闘があったみたいだね。
見渡す限りこの階の廊下は破壊され瓦礫が転がり焼け焦げた跡が無数にあり、それに合わせて赤黒くなった血痕が飛び散っていた・・。
「ハル、あっちにいるよ・・」
リルが右に指差し、行き先を教えてくれる。
「そうだね。ここからは、慎重に行こう・・アリスにはもう、俺達のこと気付かれているかもだから」
「「 そう?? 」」
リルとクウコは振り返り不思議そうに見上げている。
「俺の隠密スキルをアリスに看破されたんだ・・しかも、背後を取られていることも気付かなくてさ」
「そっか、見破られちゃったんだね・・ヨシヨシ」
リルが精一杯背伸びをして、俺の頭を撫でようとしてくれるも身長差のせいで手は頭に届いていない。爪先立ちをして、少しだけ両足を震わせている仕草が愛らしい。
「リル・・そういうときは、こうやるんだよ」
クウコがリルに手本を見せるかのように言いながら、俺に抱きついてくる・・。
「そうなんだ・・リルもする〜」
リルもギュッと俺を抱きしめ、俺は背の低い少女2人に抱きしめ慰められるた・・。
「・・ありがとう、リル・・クウコ」
スッと離れた2人は俺の前を並んで歩き目的地へと迷わず先導してくれている。今の2人は、普段被っているフードを後ろに下ろし銀と金色のケモ耳をピコピコと動かしている。
(あれは、どうやって動かしているのだろうか・・)
瓦礫が転がり荒れ果てた長い廊下を歩いている俺は、前を歩くリルとクウコのケモ耳を触ろうと右手を伸ばしかけたところで2人が急に止まり、後ろ足を引き警戒する・・・・。
ドゴォン!
数メートル先の壁が突如崩壊し、壁の破片が廊下に飛散しながら誰かが廊下に転がり倒れその正体を見てその名を口にした。
「アリス!」
俺の声に廊下に仰向けに倒れていたアリスは一瞬俺に視線を向けるも、すぐに視線を戻し迫る存在の対応へと反応する。
ガキィンッ!
開いた穴から飛び出して来たのは、聖剣をアリスに叩き込む勇者沖田の姿だった・・。
「・・なんだよ、この俺と戦いながらもよそ見する余裕があるんだな?」
「何よ・・そもそも気付きもしない貴方は、本当に勇者なのかしら?」
「なんだとっ!・・うおっ!」
アリスの言葉に反射的に反応したのか、沖田が周囲に顔を向ける。その隙をついて、アリスが沖田の腹を蹴り飛ばし出て来た壁の向こうへと蹴り飛ばした。
「たしかに声が聞こえたのに・・その気配を私がわからないなんて」
そう呟きながらアリスは蹴り飛ばした沖田の追撃のため壁の向こう側へと姿を消した。
「ほらね?リルとクウコがいるから、気付かれなかったでしょ?」
アリスに気づかれなかったことを自慢するかのように、クウコが口を開く。
「そうだったね、クウコ。さすが2人の能力は凄いよ」
そう言いながら、2人の頭を撫でると目を細め気持ち良さそうな表情になりながらリルが俺を見て告げた。
「ハル、このまま中に入るの?」
「そうだね、アリスを倒さなきゃだし・・」
「ねぇ、アリスは倒すべき存在なの?」
リルの隣に立つクウコの言葉に、俺は一瞬理解できなかった・・。
「・・・・クウコ?それは、どういう意味?」
「そのままの意味だよ。さっき、ハルの方を見たあの子の瞳から敵意は感じられなかったから。だから、そう思っただけだよ」
クウコの言葉を聞いた俺は、なぜアリスを倒す必要があるのか、わからなくなったような気がした。
「・・そっか。でも、このままだとアリスと沖田の戦いが始まっているから行ってみよう」
「うん、わかった。ハルがそう言うなら、クウコはハルと一緒に行くよ」
「リルもだよ〜」
真剣な表情をするクウコとは対照的に、リルは無邪気な笑顔で俺を見上げている。
「ありがとな」
ただ一言だけ告げる俺は、2人の横を抜けて穴が開いた壁を通り抜け中に入ったのだった・・。




