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2章 召喚編 5話 召喚者育成①

琴音 Side




 この世界に来て、2週間が経った。その間に、王国の事や世の中の常識を教えてもらう日々に追われ、戦闘訓練はその後になるらしい。今朝も専属メイドのリリアが呼びに来て私は食堂へ向かう。他のみんなも同じような待遇になっているみたい。


 けど、今朝は朝食を食べていると食堂にハイド騎士団長がやって来て直々に王城内を案内すると提案し、それをみんな了承する。


 なぜなら、この2週間ずっと部屋と食堂の往復と息抜きに庭園に寄る程度の行動範囲しかできず、王城の生活に飽きていた頃だったからだ。


 「それでは、これから城内を案内します」


 私達の先頭をハイド騎士団長が歩き、ゾロゾロと後を付いて行く。最初は謁見の間に入るが儀式が予定されて無いため人の気配がない。そこから、いつも身の回りの世話をしてくれるメイド達の部屋に寄る。


 部屋に入ると、いつも見ないリリアの気が抜けた姿が見れてなぜか安心した私がいた。


 このメイド部屋を出て廊下を歩き次の場所へ向かっていると、不思議と気になるドアを見つけた。他の部屋のドアと比べても頑丈な気がする。


 私は興味本位にドアを開けて中を覗くと2人の女性とバッチリ視線が重なってしまった。


「・・・・すいません、まちがいました〜」


 急いでドアを閉めようとしたら、金髪の女性に呼び止められる。


「あの!・・もしかして召喚された勇者様ですか?」


「それは・・ちがいます」


 私は女性の質問を否定したが、彼女は食い下がらない。


「でも、あなたは様は黒目黒髪ではありませんか?」


 ん〜この世界で、黒目黒髪は勇者と認識するのかな・・。


「ち・・違いますよ私は」


「それでは、なぜこの部屋に?」


 私は答えに困った。なんとなく開けたと言えば、2人にきっと失礼だろうと考えとっさにウソをついた。


「じつは・・人を探しているんです」


「よろしければ、どのような方ですか?」


 この金髪の女性は、どんどん聞いてくる。もう、彼女のペースにハマった気がするな。


「・・・・それは・・おにぃを・・じゃなくて、私の兄を探しています」


「お兄様を・・それは大変ですね。もし、宜しければお兄様のお名前をきいいても?」


 一瞬迷ったけど、この異世界におにぃは存在しないから素直に答えることにする。


「私の兄は・・・・ハルって言います」


「「ハル!!」」


 突然2人が叫ぶように、おにぃの名前を呼び立ち上がる。今まで私と金髪の女性との会話に興味を一切持たないでいた見て来なかった青髪の女性も私を見ている。


 すると、私は背後から左肩を誰かに掴まれた・・。


「おねぇちゃん、にぃにの名前が聞こえたけど・・どうしたの?」


 美音が私の腰に手を回していて、左横から顔を出して見上げている。


「美音、ちょっと待ってて・・あの、兄のことご存知なのですか?」


 金髪の女性が両手を振り、慌てて否定する。


「ごめんなさい違うの。私達の幼馴染に同じ名前の男性がいたから驚いてしまったの。あなた様のように黒髪黒目じゃなくて、金髪碧眼なの」


 私は、右手を振り謝らないで欲しいと伝えていると、青髪青目の女性が振っている右手を凝視しているように感じた。


「あの、私の右手・・変ですか?」


 青髪青目の女性に問いかける。


「あ・・ごめんなさい。あなた様が右手に付けている物が気になりまして」


 右手を顔の高さまで上げて見せて言う。


「この右手に付けている、コレですか?」


 2人の女性は、息を合わせたように深く頷く。


「あ〜コレは、ミサンガですよ。この世界にもあるんですか?」


「その・・ミサンガ?というものを幼馴染も肌身離さず右手に付けていました。あなた様と同じ物を・・・・」


 金髪の女性が両膝を床について嗚咽しながら話してくる。隣で青髪青目の女性は、へたり込んでしまっている。


 この部屋に重たい空気が流れる。


「おねぇちゃん、もう行かないと・・みんなに置いて行かれちゃうよ」


 美音に急かされて部屋を出るとき、金髪の女性が名前を教えてくれる。


「わたしは、リサと言います」


「わたしは、カラです。また近いうちにお会いすると思います」


「わかりました、私はコトネ。この子は妹のミオです」


 リサさんとカラさんに名前だけ告げてドアを閉め、離れて行くみんなの背を走って追いかけて行った。


 


 みんなに追いつき、中庭を抜けて暫く歩くと壁の向こうから複数の人間が訓練をしているような掛け声が聞こえてくる。ふと、ハイド騎士団長が振り向き立ち止まるとこの先は危険だから無闇に歩き回らない様にと注意してくる。


 ハイド騎士団長が重たそうな扉を開けて中に入ると、大勢の騎士が剣を素振りしている光景が広がっている。


「この訓練場が、これから勇者様達が戦闘訓練に励む場所になります。途中で逃げ出さぬ様お願いしますよ」


 ハイド騎士団長が1人で笑い盛り上がっている姿を不安な面持ちで見ているしかできないでいたが、笑っていたハイド騎士団長が突然真剣な顔になり、ゆっくりとした口調で口を開く。


「みなさん、今から行く場所は国家反逆者を捕らえた場所に行きます」


 国家反逆者と聞いた瞬間、背筋がゾッとする。どんな凶悪な人間何だろうと。


「しかし、王国が誇る強固な独房で魔法もスキルも使えないようにしていますので、暴れる心配はありません」


 私達からは、長い溜息が漏れる。


「それでは、行きましょう」


 訓練場を出て、王城の中に入り地下へと続く階段があった。ハイド騎士団長は、そのまま階段を降りて地下へと向かう。独房まで向かう道は、まるで迷路の様に複雑だった。二つ目の階段を降りたあたりから、空気がヒンヤリと冷たくがカビ臭い。


 そして、三つ目の階段を降りたところで、鉄格子に行き場を阻まれてしまうが、そこに1人の騎士が警備をしているその前でハイド騎士団長が立ち止まり振り返る。


「この鉄格子の先に国家反逆罪で捕らえた男が1人います」


 私は、いったいどんな男なのだろうと興味本位で見たくなり人垣を分けて最前列に出ると、暗い部屋にあるベッドの上で横になっている姿が見えた。


 髪は金髪でボサボサに伸び、両手は背中に回され拘束具の様なもので固定されているためか暫く見ていても動く気配が全然ない。


「こいつが、王国を裏切ったやつなんですか?」


 沖田くんが憎しみを込めたような口調でハイド騎士団長に聞いている。


「勇者様、その通りです。あの男が国を裏切ったのです」


「そうか・・おい!クソやろう、いつまでも寝てないでコッチに来いよ!」


「勇者様、あの男は食事の時間以外は微動だにしません」


「なんて舐めた奴なんだ、起きていたらボコボコにしてやるのに」


 沖田くんが、あの男に対して物凄く感情的になってしまい、逆に騎士団長が宥める事態に私もなんだかイライラしてくるのはなんでだろう。


「勇者様お言葉ですが、あの男は元Cランク冒険者でしたので実力はあります。残念ながら今の勇者様では、あの男に勝つことは不可能です」


「な・・なんだって?勇者の俺でも勝てないのですか?」


「はい・・ですが、今はです。これから戦闘訓練を積んでいけば簡単にあの男の強さなど超えます」


「そっか・・なら、気合い入れて行かないとな」


「頑張れよ〜!勇者部長〜!」


 沖田くんが物凄く気合を入れている。それに乗じて周りのサッカー部員達が応援しているのか冷やかしているのか、訳の分からない状態になっていく。


 この状況が気になったのか、独房にいる男の腕が少し動いたように見え、拘束具の脇に何か出ているように見える。


「なんだろ・・あれ・」


「どしたの?おねぇちゃん?」


「美音、あの人が付けている拘束具みたいなやつの脇に出てくるのが気になったんだ」


「どこどこ?・・あ〜あれね・・なんだろうね。暗くてよく見えないよ」


 私は美音と必死に見ようとしたけど、暗くてよく分からなかった。そのうち、ハイド騎士団長が部屋に戻る時間になると言われたためこの場を離れた。


 地下から外へ出て、太陽の陽を浴びるとなんだか安心する。人は地下より地上で生きる生き物だと感じたとき、ちょっとあの独房に居た男のことがちょっと気になる私がいる。



 ハイド騎士団長の王城案内があった翌日から戦闘訓練が始まった。きっと沖田くんが原因だと思う。訓練内容はそれぞれのステータスを見極めて内容が変わっている。


 沖田くん達サッカー部員は剣術を重点に置いて。私は剣術と魔法を。美音は治癒魔法を主に練習して会得しようと日々みんな訓練に没頭していく。


 それから、私達が訓練を始めて約1年が経ち、みんな剣術も上達し、魔法も自由に使えるようなレベルまで成長出来て喜んでいる。


 訓練が予定されていない日の朝食中にスパイル国王とハイド騎士団長が食堂に入ってきたところで、沖田くんが立ち上がって出迎えている。


「国王様・・どのような御用ですか?」


 スパイル国王とハイド騎士団長は、皆の前に立ち止まるとハイド騎士団長が一歩前に出て口を開く。


「改めて召喚されし勇者様方。厳しい訓練を誰1人脱落することなく終わったことを大変嬉しく思います」


 ハイド騎士団長は、一礼し話を続ける。


「王城での戦闘訓練は、今日で終わり3日後に実戦訓練を初めていく。もちろん、弱いランクの魔物から倒し経験を積んでもらいます。そして実戦は・・・・・・王都南に広がる南の森でおこなう」






 


 


 


 

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