10章 王都奇襲編 21話 魔王との戦い⑤
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アリスとは比べものにならない程の威圧を感じながら、魔王ジェドニスとの攻防が続く。
「ハァ・・ハァ・・」
後ろで膝をつき動けないでいるアイナとリンを熱波から守るため、アクアウォールで包み庇いながら戦う俺に限界が近づき切り傷が増え出血がが増えていく。
「そろそろ終わりか?」
「・・まだまだ・・ここからが本番だ・・」
チラッとアイナとリンを見た俺は、立ち位置をゆっくりと変えていき真衣達がいる場所が見える位置へと攻めた後の逃げる方向を変えた。
数度の攻防でやっと魔王から放たれていた陽炎の影響がなくなった方向に、勇者沖田と真衣達の姿を視界に捉えることができた。
そこには、勇者沖田以外の全員がボロボロで地面に倒れ込み顔を上げるのがやっとのような様子だ。
「ここまでか・・」
これ以上、俺1人で攻め続けてもいい結果が見えないことがわかり溜息を漏らす。
「ん?まさか、諦めたか?・・おまえ・・」
「・・そんな訳ないだろ?魔王のお前に勝つ未来が見えたのさ」
「譫言を・・そうか、なかなか良い心の持ち主だ。その志を捻り潰してやろう、人族の冒険者よ」
俺は、なぜか笑ってしまった。
「当然だろ?魔王は、勇者に倒されるべきと思っていたんだよな・・まぁ、最期のとどめを勇者がやるなら、その過程はどうなろうと問題ないよな?」
魔王ジェドニスが、両手を上げて笑いだす。
「あっはっはっは!本当に面白い事を言う人族だ。久しぶりに笑わせてもらったぞ!ならば、何をする気だ?」
「見てみるか?魔王ジェドニス」
「・・・・いいだろう。やってみろ」
「後悔するなよ?」
「ふっ・・この魔王である俺が?」
俺はアイテムボックスから魔力回復ポーションを2本取り出し、一気に飲み干し瓶を投げ捨てた後に片手剣をスッと高く掲げて小さく詠唱した。
「阻害魔法・・マグネティズム・ディスタールブ!」
俺の足元から黒い砂粒が出現し数を増やしながら俺を中心に渦となっていき、今では魔王ジェドニスと俺を囲み黒い砂嵐へと姿を変貌した。
視界には、魔王ジェドニスだけとなり勇者沖田やアイナの姿をみることはできない。
「・・・・コレは、なんなんだ?」
「・・魔王の戦意を奪い尽くすための、俺のオリジナル魔法さ」
だんだん視界が暗くなり夜の暗さを超えて、光を完全に奪われていき目の前に立つ魔王ジェドニスの様子も見えない程の晦冥となり、既に音も聞こえなくなった状況に陥った俺は平衡感覚を失い地面へと倒れ込んだ。
(・・これで、魔王ジェドニスの魔力を削げれたら成功だな・・後は、沖田がなんとかしてくれるだろう・・)
そう考えながらいると、魔力欠乏症の初期症状が現れ始める。
(うぅ・・何度味わっても、慣れないなコレ・・・・)
正直、今すぐにでも手放したい意識をギリギリのところで保ちながら何も見えず聞こえない世界に1人で俺は発動した魔法が終わるのを待つしかない。
数十分?・・数時間?・・時の流れが掴めない世界にいる俺は、終わりの見えないこの世界で意識を手放そうと何度も考え楽になりたいと考える。
そして、俺の視界に僅かな光が差し込んできてくれた。
(あぁ・・俺は目を開けていたんだ・・)
光が戻ると、俺と同じように魔王ジェドニスがうつ伏せで倒れていた。
「くっ・・」
力を振り絞り上半身を起こし座ることができた俺は、動かない魔王を見て呟いた。
「うまくいったみたいだな・・」
ピクッ・・
俺の言葉に反応するかのように、魔王ジェドニスの指先が反応する。
「・・・・」
片手剣を杖代わりにして、よろめきながら立ち上がる俺は離れた場所で俺を伺う勇者沖田と視線が重なった。
「椎名!・・おまえが・・お前が倒したのか?」
「・・いや、まだだ!・・とどめは、勇者のお前がやってくれ!」
俺の言葉を聞いた沖田は、相変わらず気持ち悪い笑顔を見せながら近づいて来る。
「ふっ・・仕方ないな。最期は、この勇者である俺が終わらせてやるよ!」
ゆっくりと近づく沖田から、俺は魔王ジェドニスへと視線を向けると奴の目が見開いていることに気付き反射的に足に力を込め駆け出す。
「おまっ!横取りする気か!」
突然駆け出す俺に、最後の手柄を横取りされると思った沖田が声を荒げるのを無視して残っていた力を使い片手剣を魔王ジェドニスの首元へと振り下ろす。
ガンッ!
「くっ」
立ち上がる魔王ジェドニスの手元にはなかったハズの漆黒の短剣で防がれ、魔王と俺は互いに力を失い過ぎた影響で刀身を小刻みに震わせ鍔迫りあっている。
「今だ!固めろ!」
沖田が突然誰かに指示を出す声が聞こえた。
今の俺にはそんなことを気にする余裕は皆無で、目の前にいる魔王ジェドニスのことでいっぱいいっぱいだ。
「「 アイスウォール!! 」」
「えっ?」
下半身に寒気を感じ情けない声が口から漏れた後に足元の空気が急激に冷やされていくのを感じた途端に、膝上までが一気に凍らされてしまった。
「ぐぉっ!」
「あ゛ぁ!」
魔王ジェドニスと俺は同時に声を漏らし、魔王が足元をみる。
「なんと言うことだ・・こんな魔法ごときも破壊できないとは!」
俺と魔王ジェドニスの足元は完璧に凍らされ身動きが取れなくなってしまったのだ。
「どうして2人が?」
そう呟きながら、魔王ジェドニスの肩越しに見える勇者沖田を睨みつつ、そのさらに先で立つ真衣と美音が両手を前に伸ばしている姿があった。
「よくやった!そのまま破壊されないよう魔法を維持しろよ!俺が終わらせる!」
勇者沖田の持つ聖剣が純白に輝き始め、独特の構えをする。
「・・まさか、アレを放つのか?」
勇者沖田の構えを見た俺の脳内に激しく警鐘が鳴り響く。
突然背後で巨大な魔力を感じた魔王ジェドニスは、目の前の俺よりも背後の魔力を脅威と感じたようで勢いよく振り向き驚く。
「な、なんなんだあの輝きは・・」
「魔王、もう諦めろ。お前の負けだ・・そして、この俺もな・・」
あの時の光景が俺の脳裏に蘇る。アイナの別荘でアイツの聖剣から放たれたレーザー光線のような魔法を。
それなのに、なぜか俺はいつの間にか冷静でいる。俺の命を奪いとろとする聖剣から真衣達へと視線をうつせるぐらいに。
そして、数年ぶりに使うであろうスキルを口にする。
「・・鑑定」
視界に捉えている真衣達に鑑定スキルを発動し、彼女達の状況を数値化にして見る
みんなボロボロだけど、死にそうなほどのダメージは受けてないようだ・・でも、1つだけ気になる部分があった。
状態・・パーティー魅了(勇者)・混乱
真衣達4人ともこの状態になっていた。
(マジかよ・・)
鑑定スキルを受けた者が感じるらしい独特の刺激を感じ取った真衣達4人が俺を一斉に見る。
「「「「 ・・・・・・ 」」」」
視線が重なるだけで、それ以上の反応は無かった。
(そんなもんか、最期までやってくれんな・・沖田の野郎)
聖剣が一段と輝きを増し、もう放つだけの状態になったであろう瞬間に沖田が俺と魔王に宣言するかのよう声を大にして告げる。
「魔王ジェドニス!これでお前の最期だ! 椎名!残された女は、俺に任せて逝け!」
「させるかぁ〜!!」
魔王ジェドニスが吠えて、足元のアイスウォールがひび割れていく。
バキッ!バキバキバキッ!!
「光魔法レイ・ビーム!!」
純白に輝きを放つ聖剣を俺達に突き出し、切っ先から純白の光線が音も無く放たれる。
『アイナ、リン、ラニア・・ミオ、ミリナ・・みんなゴメン』
視界いっぱいに眩いほどの光に包まれた俺は瞳を閉じるも、その眩しさは消えず全身に衝撃を受けた途端に視界が暗転して意識を手放した・・・・。




