9章 イシタ公国編 47話 自分達の家に帰ろう②
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「風が気持ち良いですね・・」
隣に座るラニアが髪をかきあげ、視線を遠くの景色に向けてそっと呟く。
「そうだね・・この気持ち良い季節が終われば寒くなるんだよな」
手綱を握る俺は、横目でラニアを見て答える。フリューの街を出発してから2日目の午後を迎えた俺達は王都まで残り2日までの場所まで戻って来た。
「ご主人さま、邪魔しそうな魔物の気配を感じたので行って来ますね」
「あぁ、気を付けてな。ミオ、ミリナ」
「「 はい 」」
そこそこのスピードで走っている馬車から飛び降りた2人は、馬を追い越し街道を走り抜けて途中から森の中へと姿を消して行く。
もう見慣れた光景だけど、俺は必ず気配探知スキルで2人の位置を見失うことなく馬車を走らせながらたまにリルとクウコのことを思い出す。
(アイツらは、俺の隣で踊るだけで魔物を滅していたよな・・・・)
すると、俺とラニアの間に琴音がスッと入り座り左手に持った小袋から何かを出してパクパク美味しそうに食べ始めているのが見えた。
「・・琴音、俺にも1個ちょうだい」
「ん・・」
パクッ
「さんきゅ〜」
口の中へと琴音が1つ入れてくれて咀嚼すると、少し甘い焼き菓子だったようで少し疲れが癒されるのを感じながらいると、背後から誰かに両方を不意に掴まれる。
「琴音おねちゃんズルい・・はい、にぃに・・美音のも食べて・・」
俺の口元へ美音が食べ物を後ろから持って来てくれたため、俺は口を開けた瞬間に馬車の車輪が小石を踏んだため僅かに揺れてしまい、美音の指先まで咥えてしまった。
「あむ・・」
「あっ・・」
「ごめん美音。指まで食べちゃった」
「んふ・・いいよ・・にぃに」
そう言いながら美音は、満足そうな表情で俺に咥えられた指先を咥えながら荷台へと戻って行く。
「美音・・なんて羨ましいの・・」
「どした?琴音」
隣で何か呟いた琴音だったけど、聞き取れなかった。
「ううん・・なんでもないよ」
「ならいいけど」
すると琴音は、美音を追うように荷台へと戻り入れ替わるように真衣が隣に座る。
「ハル・・あーんして」
真衣が俺の口へと差し出す指先には、よくわからない緑色の食べ物?をつまんで笑顔で俺を見ている。
「真衣・・コレは?」
「・・いいからいいから」
「え?・・でもさ・・コレは・・んむ」
どう見ても食べ物と認識できない緑色の食べ物か何かを真衣が強引に口の中へと捻じ込んできた。
「ちゃんと噛んでね」
真衣の笑顔の圧が強すぎて、言われるがまま噛み始めるとどこか懐かしい食感に気付く。
「・・・・美味しいでしょ?意外に・・」
「・・グミ?みたいな食感だね。この世界に来て初めての食感だ」
「ふふ・・そうでしょ?食べず嫌いは、ダメだからね」
そう言いながら真衣は荷台へと戻って行き、俺はまさかと思い愛菜を見ると視線を逸らされてしまう。
(愛菜は来ないんだ・・)
少し残念な感じもしたけど、ホッとした気持ちもあり複雑な感情が残ったままでいると2つの気配が近づいてくる。
(ミオとミリナは無事に討伐してくれたみたいだな)
ガサガサッ
少し離れた森の茂みからミオとミリナが姿を現し街道へ出てくると、空高くジャンプして御者台へと降り立つ。
タタンッ!
「ご主人さま、戻りました」
「戻りました〜」
「おかえり、ミオ・ミリナ。怪我はない?」
「はい。サクッとやっつけて来ました」
「ウォーウルフが4頭だったから楽勝でした」
「お疲れさん・・また来たら頼むよ」
「「 はい、ご主人さま 」」
そう言ってミオとミリナは荷台へと戻って行き、たまにすれ違う冒険者パーティーの馬車に挨拶をしながら2日野営してその日の夕方にスパイル王国の王都マーカーから南へある村の丘に建てた俺達の家に辿り着いたのだった。
「やっと着いたな・・ラニア、長旅お疲れさん」
「はい。お疲れ様です」
互いに労を労い、しばらく無人にしていた家に入るのだった・・・・。
9章はこれで終わります。10章から王都を舞台にイシタ公国で転移魔法で消えた2人も加わり物語が進んでいきます。




