9章 イシタ公国編 41話 王国地方都市フリュー⑨
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たまたま入った商店の店主が、まさか黒髪の女性だとは夢にも思わなかった。
「まぁ、ありがとう。お嬢さん達の金髪の方が素敵だわ」
彼女からの社交辞令とも取れる返しだってけど、マリアとアイナは素直に嬉しそうな反応をするだけあって、まだ少女なんだなと感じていた。
「・・そういえば、さっき言ってた物って?」
そう口にしたときに、俺はこの場の空気を読んでなかったと気付いたけどあとの祭だ。
「バカッ・・」
マリアに突っ込まれ、俺は苦笑いしてしまう。
「男の子は、そんなものだから諦めた方がいいわ・・お2人さんが持っているのはミサンガね?」
黒髪女性の口からミサンガと聞いて、マリアとアイナの手元に視線を向けるとたしかにミサンガを握っていた。
「ホントにミサンガだ・・」
「あっ・・そうなの。コレ、前まで右手につけていたでしょ?ハル」
マリアがカウンターにミサンガを置くとアイナも持っていたミサンガを並べて置く。
「そうだったね。今は切れてしまったけど、琴音と美音からもらったんだ」
そう言いながら、右手を目線の高さまで上げて、2人からもらった時のことを懐かしく思い出していると、アイナがグイッと顔を寄せる。
「・・大切な2人からもらった物を切ってつけれなくするとは、ダメじゃないか?・・ん?」
アイナが異議を申し立てるような勢いで詰め寄り顔が近い・・。
「お嬢さん、ミサンガは切れて良いものなのよ」
「えっ?貰った物が切れて良い物なのですか?」
「そうよ、このミサンガはね・・願いを込めて大事な人に身に付けてもらい自然に切れると、その願いが叶う言い伝えがあるの」
「「 そうなんですか?? 」」
そう聞かされたマリアとアイナは、俺から離れヒソヒソと話し始めてしまい、俺は蚊帳の外もように扱われ呆然としているところに黒髪お姉さんに話しかけられる。
「ねぇねぇ、私はカナエって名前なの。お兄さんは?」
「・・俺ですか?・・ハルです」
カナエさんは、マリアとアイナの様子を見ながら小声で話を続ける。
「ハル君ね・・よろしく。あの2人は、ハル君が異世界人って知っているの?」
「知ってますよ。だから、異世界のことは問題ないです」
「そう・・信頼できる子達なのね・・」
意味深な表情でマリアとアイナを見つめるカナエさんを見ながら、俺は彼女から聞かれる質問に答え続ける。
「それにしても、私に聞きたいことないの?」
「そうですね・・カナエさんは、王国で召喚されたのですか?」
「・・ヒミツ」
「いきなりですか?」
「ハル君。オンナにヒミツは、1つや2つあっても良いのよ・・」
右手の人差し指を口元に当てて、ウインクするカナエさんに揶揄われている感を感じながらも軽く受け流し愛想笑いで終わらせ視線をカウンターに置かれたままのミサンガに向ける。
「このミサンガは、カナエさんの手作り?」
「そうよ・・この世界で流行らせようとしたんだけどね・・補助魔法も付加されないモノだから思うようにならなかったわ」
「・・俺からしたら、良い物なんですけどね」
そう言いながら2つのミサンガを手に取り眺めていると、不意に2つの手が視界に入ると同時に少し強引にミサンガを取られ、マリアとアイナは俺に目を合わすことなく売り場の奥へと隠れて行く。
(・・なんだろ?)
「・・とりあえず邪魔みたいなんで、店の外にいますね」
カナエさんに伝えた俺は、そのまま店先に出て通りを歩く見知らぬ人達を眺め時間を浪費させていると、急に人の往来が消えた・・・・。




