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9章 イシタ公国編 34話 俺達は王国領へ

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「おはよ〜にぃに〜」



 警戒心の無い美音の声が野営地に聞こえ、その声の主は俺の膝の上に座り背中を委ねくつろいでいる。


「・・ちょっと、美音さん?」


 チラッと見上げ、ニコッと笑いそのままでいる美音が他の野外イスに座る気が無いため、溜息をつき諦めた俺はラニアに視線を向け話しかける。


「ラニア、公国の首都までここからどれくらいかかるんだ?」


 ちょうど朝食の支度を終えたラニアは、マジックポーチから地図を取り出し広げ確認してくレているようだ。


「ハルさん、ここからであれば3日程で着く距離にあります」


「3日か・・食料の在庫的にどう?」


「はい、首都で帰り分を買うことができれば問題無いのですが・・被害状況も不明確なのでもし買えない状況だと王国へ帰る途中で底をつくと思います」


「そうだよね・・ただの旅行じゃないしね・・。アイナ・リン、騎士団は魔族からの脅威が無くなると、今後の行動はどうなるんだ?」


「そうだな、機動偵察隊が数グループに分かれ情報収集で得た情報を団長が確認し騎士団の行動を決める」


 すると、リンがアイナの説明を細くしてくれた。


「なので、戦闘中も機動偵察隊が戦場を監視しながら敵地の奥へと潜伏しているので、今頃はイシタ公国の首都へ向かっている可能性が十分あります」


「・・・・それなら、無理して首都に行く必要も無さそうだな・・よし!家に帰ろう!」


 それからのマリアや真衣達の行動は早かった。あっという間に撤収が終わり、もうすでに王国領へと向かい出発しているのだ。


 ここまで来る道のりとは違い、冒険者パーティーは俺達だけだ。他のパーティーは、魔族との衝突で全滅してしまっている。


「ハルさん、本当に共に行動をしていた冒険者パーティーの方達は・・亡くなったのですね・・」


 遠くまでよく見える街道を進むこと数時間、御者台に並んで手綱を持ち座るラニアが遠くを見ながら独り言のように呟く。


「ラニア・・そうだな。あんなにたくさんいた冒険者達は、目の前で死んで行ったよ。家族や愛する人を残して・・たまたま戦線で婚約者が魔物に殺されて亡骸を探す男冒険者も居たな・・彼も死んでしまったけど」


「・・あの」


「どうした?」


「・・わ、私達もその・・私達ももしかしたら何も知らず残されてしまう立場になるところだったのでしょうか?」


 今にもこぼれ落ちそうな涙をグッと我慢して潤んでいる瞳で俺を見るラニアは真剣な表情だ。俺は視線を逸らさずゆっくりと告げる。


「そうだね・・いつその立場になるかわからないけど、可能性はゼロじゃないよ。もし、その時が来たらみんなで協力して生きて欲しいな」


「そんな将来なんて想像したくないです!」


 ラニアが声を荒上げ、手綱を手放し俺に抱き付き号泣してしまった。彼女を抱き締めながら、宙を舞う手綱をなんとか掴み馬を操り安定させたところでラニアを落ち着かせる。


「ハル、どうしたの?」


 荷台からマリアが出てきてラニアの状態に驚いていたが、簡単に説明したところで納得し荷台へと戻ってくれた。


(ここが山道だったら危なかったな・・)


 落ち着きを取り戻したラニアに手綱を返し、それからまた数時間経った頃に国境を跨ぐ橋が見えてくると、ミオとミリナが御者台にいる俺にサカナサカナにゃっと言いながら飛び降りて川へとまっしぐらだった。


「お〜い!このまま止まらないから、そんなに長くなるなよ〜!」


 俺の呼びかけが聞こえたのか聞こえなかったのかは、わからないけど振り向かないミオとミリナは細く長い尻尾を振りながら返事を返しているようだ。


「・・やっぱり、ネコじゃねーかよ」



 街道を走る2人はフッと姿を消し崖を降りて行った後ろ姿を見ながら呟いた俺は、そのまま馬車の速度を維持するようにとラニアに伝えそのまま橋を通過し王国領へと入って行った・・・・。

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