2章 召喚編 1話 緊急招集
短めです。
時は遡り、ハルと第1王女ミリアが出会った時期から流れて行きます。
第1王女ミリア Side
「なんですって?・・・・もう一度、言いなさい!・・ギリー!」
西の都市ニシバルの大通りを我が物顔で進む馬車に乗っている少女が叫ぶように問う。
「ミリア様・・落ち着いてください。これは、スパイル国王様からの命令です」
「お・・お父様から?」
せっかく通う学園が休みで、機敏転換で訪れてた西の都市ニシバルに着いた途端に王城に帰って来いだなんて。
「ギリー、無理だと答えなさい。理由も知らず、このまま帰れませんわ」
「ですが・・国王様からの命令を拒否することは、流石に・・」
困り果てているギリーの顔を見て、溜め息をついたわたしは、楽しみにしていた買い物を諦めることにする。
「せめて理由を聞きなさい!・はやく!!」
ギリーが急いで遠距離通話魔法具を使い、誰かと会話をしていると、突然口を開けたまま凍りついていた。
「・・・・ど・・どうしたのよ?」
幼い頃から見ていたギリーが、今まで見せたことの無い表情で固まっている。
ギリーが持っていた魔法具をゆっくりと膝に上に置く。
「ミリア様・・とうとう我が王国も、執り行う準備が整うようです」
「な・・なにが始まるっていうのよ?」
ギリーが真剣な面持ちで口を開きはじめる。
「王国の悲願だった・・・・・・勇者召喚を!」
「え?・・・・」
わたくしの聞き間違いじゃなければ、ギリーは勇者召喚と言った。確かにそう聞こえた。幼い頃から、お父様に聞かされていた勇者召喚の話を。むかしむかしに執り行われた以降、王国で勇者召喚がされてなかったと。
「ギリー!!・・いまから王都へ帰るわよ!
「危険です。帰りの護衛と合流するのは3日後です。護衛不在の帰路の安全が保証されません」
わたしの意に反してくるギリーの言い分は間違っていない。けど、この高鳴る鼓動を抑えることができないわたくしは、ギリーを睨みつけて、抑揚の無い言葉で追い詰める。
「あなた・・あなたの強さなら、この人数の護衛なんて問題無いでしょ・・」
「くっ・・それは、はい。ミリア王女様」
冷たく放った言葉で、ギリーを屈伏させるとギリーは御者のところへ行き王都へ向かうよう指示したようで、馬車が王都へ向けて進み出す。
都市の門を出た馬車は、進むペースを上げていく。だんだん揺れが激しくなっていくけど、今回は我慢してあげる。
小窓から見えていた都市を守る外壁が、どんどん小さくなり見えなくなると、自然と進む方に視線を動かしたときに道端に座る二人が見えた。
「あんな道端で、食事をする平民の考えがわからないわ・・」
ボソッと呟きながらも二人の様子を眺める。二人の前を横切る時に、平民の男が顔を上げてわたしと視線が重なる。
(なにみてんのよ・・)
口には出さずにいたけど、ほんの短い時間に重なっていた視線を私から外すことができず、平民男が先に逸らす。
「ギリー! 止めなさいっ!
「え?」
「はやく!」
馬車は急激に速度を落とし止まる時間を待てず、馬車の扉を開き外に出る。舞っていた砂埃が収まり平民男の元へ歩み寄ると、食事を続けようとしている姿が見えた。
「ちょっと、あなた達!」
平民男と視線が重なると同時に問いかける私に対して、無反応だったことが悔しい。
「このわたくしを見ても無反応ですの?」
平民男は、わたくしに関わりたく無いような態度をとり、この場から去ろうとする。私の制止を無視するため、ギリーが先回りして平民男達の退路を断つことに成功する。
ギリーの立ち回りを見たためなのか、平民男が話を聞くようになった。最後の落とし所で、私の正体を明らかにしたのに知らないと言い、また立ち去ろうとした。
物凄く不愉快だけど、仕方なく下手に出る。こんなこと一度もしたことがないわたくしが・・・・。
「このわたくしを王都マーカーまで護衛しなさい。さぁ、光栄に思いなさい」
王女らしく振舞ったわたくしの要請を、即決で断る平民男に立ち尽くしてしまった。気がつくと、ギリーが平民男を留めていてくれている。
なぜか、この平民男は不服な顔をしていることに理解出来ないわたくしは、重要なことを告げてしまう。
「王城で大事な儀式を行いますの・・」
「ミリア様!これ以上の口外はいけません」
ギリーが大声で制してくる。でも、私には真実を隠し通す自信がある。
「それは・・わたくしの誕生日会ですわ」
どうかしら?完璧なわたくしの演技を・・ギリーも平民男と同じように驚いている。完璧だわ。
そのまま報酬の話も決まり、平民男と猫人族が御者の近くに座り、無事に護衛付きで出発したわ。
道中に魔物が襲ってきたらしいのだけど、ギリーが出る出番は無く3日目の昼には王都の街並みが見えてくる。
すると、外から平民男が声をかけてきた。
「おーい、護衛はここまででいいか?」
平民男の相手をギリーに任せ、わたくしは小窓からその様子を眺めた。ギリーが馬車に乗ってきたところで馬車が出発すると、小窓越しに平民男と視線が重なる。
「第1王女様、これにて失礼します」
平民男が、騎士団の敬礼を真似ている姿が様になって、釘付けになるわたくしがいた。何度も見て見飽きていた敬礼の姿を・・。
「あっ・・・・名前を聞くの忘れてたわ・・」
ハルと別れ、王都マーカーへ辿り着く第1王女ミリア。この先の激動に巻き込まれていくかいかないかは、彼女の選択で決まります。今のミリアには、憧れていた勇者召喚のことでいっぱいだった。




