9章 イシタ公国編 28話 防衛戦闘・・予想外の存在
アクセスありがとうございます
グギュゥルォォォォ・・・・
足元から突如出現した火魔法ファイヤーウォールの業火に先頭を歩いていたゴブリンとその後ろにいたオーク達が一気に焼かれ数秒で全身が炭化し崩れ去り、発生した上昇気流に乗って空へと舞い上がっていく。
「おい・・マジかよ、ハル」
背後にいるバズが驚きの声を上げ周囲にいる冒険者達も驚きの声を漏らすなか、ファイヤーウォールに阻まれた魔物達は熱波で立ち止まり唸り声を上げ悔しがっている様子だった。
その無防備な状態を晒す隙を見逃さず、新たに片手剣に魔力を集めながら腰を低く落とし扇状に風魔法ウインドカッターを1発放つ。
ファイヤーウォールの炎を纏いながらウインドカッターが魔物達に襲いかかり、熱に怯え防御姿勢の構えをしたまま上半身と下半身を真っ二つに裂かれ地面へ力なく転がっていく。
「はぁ・・はぁ・・さすがに、後ろの奴らまで倒す事はできないか・・」
綺麗に身体を切り裂かれ倒れている仲間達を気にする事なく生き残ったオーガ達の息をは荒く、すでにウインドカッターの威力で下火になったファイヤーウォールを踏みつけ俺達の方へ迫り来る。
「もう、ここまでか・・」
「バズ・・まだ少しも休んでないだろ?」
「もう、十分さ」
「まぁ、最後の足掻きを見ててくれ」
「・・・・」
俺は深呼吸をして、魔力の残量を感覚で把握し久しぶりに風魔法ウインドカッターを詠唱する。
「我は求む・鋭利な刃を纏う風となり・この切っ先から放たれよ・・ウインド・カッター!」
緑色に輝く刀身を右から左へと薙ぎ払い、1発目のウインドカッターを放ち刀身から失われゆく魔力をすかさず補充し刀身の輝きを保たせ、さらに左から右へと片手剣を薙ぎ払い2発目のウインドカッターを放つ・・これを20回繰り返しウインドカッターを連発で放った俺は、ガクンと下半身の力が抜けその場に倒れ込んだ。
途中まで聞こえていた魔物達の唸り声が悲鳴のような声に変わり力なく倒れている今は、魔物達の声は微かにも聞こえなかった。
「・・おい、大丈夫か?」
「・・・・な、なんとか」
「飲め!ポーションだ」
「バズ、助かる」
バズから魔力回復ポーションを受け取り一気に飲み干し、そのまま仰向けに倒れ夜空を見上げる。
「あんなにいた魔物が全滅だ・・・ハル、お前はいったい何者なんだ?」
「はぁ・・はぁ・・なに?」
「なんでもねぇよ!」
「・・そう?・・ならいいけど」
しばらく休んでいた俺の身体に魔力回復ポーションの効果が現れ、全身の倦怠感がなくなり立ち上がる。
「ハル、もう平気か?」
「もう平気。ポーションありがとな」
「街に帰ったら一杯飲ませろよ?」
「もちろんさ、バズ」
軽くバズと約束の握手を交わした俺は、目の前の惨状を見て左手を前に翳し赤い炎を出現させ浮遊させた状態で形を安定させる。
「なぁ、ハルよ。魔物も倒したのに何するんだ?」
「バズ、ちょっと待ってて」
そのまま赤く燃える炎に魔力を送り続け高温になるイメージを練り込ませていく。すると、赤い炎がだんだん紅炎と化し今は青白い炎へと姿を変えて、シューッと音を出している。
「・・その不気味な音を出すヤツをどうするんだ?」
「コレは、冒険者と魔物のアンデット化を防ぐため一体を燃やし尽くすんだ」
「そうか・・そう、だよな」
俺は、完成した青白いファイヤーボールを放とうとしたところで、バズの向こう側にいた男冒険者に止められる。
「待ってくれ!!」
「どうしたテイン?」
「バズ!少年を止めてくれ!あそこには、俺達の仲間がいるんだ!」
「・・テイン、その気持ちは痛いほどわかるが、アンデッド化する前に弔うのが冒険者の務めだろ?」
「くっ・・わかっている。けど・・すぐ近くにシェーナが・・シェーナがいるはずなんだ!」
「なっ!・・シェーナって、あのシェーナか?」
バズが隣りで、シェーナと言う名前を聞いて驚いている。2人の会話の蚊帳の外の俺は、早く放ちたいという気持ちが芽生えてきた。
「そうだ!俺の幼馴染で婚約者のシェーナだ・・・・」
(彼は、この戦闘で愛する人を亡くしたのか・・)
その言葉にこの胸がズキリと痛み、頭上で浮遊させている青白い炎を見つめ俺は不意にリサのことを思い出し、短く溜息をついて炎を空へと勢いよく放った。
シュゴォォォォォォ・・・・ドォォォォン・・
独特な音を出しながら勢いよく上昇し、遥か上空で大爆発させると漆黒の夜空が蒼白く染まり昼間の青い空とはまた違う姿を見せ、再び闇夜へと戻っていった。
無言で蒼白い炎を見守っていた俺は、丘陵地帯に1つの存在が降り立ち俺達の場所までゆっくりと歩いて来ることに気付く。
その存在は、この場所に相応しくない格好で手ぶらのまま近付く様子が不気味すぎて警戒心が高まり我慢できず警告を発した。
「止まれ!誰だ!」
そいつは止まらず歩いて来る。片手剣を構え凝視すると、漆黒のスーツを身に纏い赤目赤髪の男は不敵な笑みを浮かべ敵意がないことを示すかのように両手を上げて近づく。
「・・それ以上近付くなら、敵対行動をとる!」
俺の警告を受け入れたのか、ゆっくりと足を止めジッと俺を見つめ口を開いた。
「・・君が、スパイル王国の勇者くんかな?」
初めて耳にする男の声は、俺の年齢と差がないように感じる。
「・・あれ?言葉が通じないかな?・・君は・・」
「俺は、勇者じゃない!」
対峙する赤目赤髪の男は、首を傾げ不思議そうな表情で俺を観察するように全身を見ている。
「ホントに勇者くんじゃないの?困ったな・・でも、勇者くんが率いる仲間だよね?」
「勇者の仲間でもない・・ただの冒険者だ!」
男は俺から視線を外し空を見上げながら右手でアゴを触りブツブツ呟いている。ハッキリ聞こえないため、そのまま様子を伺っていると俺に視線を戻し絵がで告げた。
「本当は、勇者くんなんだよね?」
「・・お前、しつこいな・・俺は勇者なんかじゃねーよ!」
「おかしいな・・僕が纏う魔力を浴びた人族で、まともに立っていられるのは勇者だけなんだけどなぁ〜」
「そんなん、知らねーよ!」
視線を俺から外し周囲へ動かす男につられ俺は左右に視線を向けると、バズ達が白目を剥き倒れ口から泡を出しながら痙攣していた。
「なっ・・お前何をしたんだ?」
「だから、その人族共は僕から出ている魔力を浴びただけで倒れたんだよぉ〜」
たしかに、あの男が現れた時から全身にピリピリと感じでいたけど全然気にしていなかったのが本音だ。
「それよりも、一体お前は何者なんだ?」
「・・そっかそっか・・名乗ってなかったんだ・・ゴメンゴメン。僕はね、魔族領を統括する者さ」
「魔族領を統括?・・・・ってことは、魔王・・なのか?」
「魔王?・・あぁ、僕の部下や人族は、そういうふうに呼ぶ風習があるよね。それなら、最初からこう言えばよかったかな。・・・・そう、僕が魔王ジェドニスだ」
「魔王ジェドニス・・」
突然目の前に現れた魔王ジェドニスと対面し、驚きを隠せない俺は名前を呼ぶことしかできなかった・・・・。
とうとう、魔王の出番が・・




