9章 イシタ公国編 18話 王国の思惑と過去の話し
アクセスありがとうございます。
過去最長になってしまいました。
すいません。
(イシタ公国って遠いな・・いつになったら着くんだろう。ベッドで寝たい)
不満を心の中で呟きながら、ゆったりとしたペースで進んでいる状況だ。
「なぁ、ラニアさー」
「はい」
「この先は何かあるの?旅に飽きちゃった」
「ふふっ・・そうですね、王国領最南端の地方都市モコンから3日目なので、そろそろ国境となる大きな川がありますよ」
「ふ〜ん。大きな川ねぇ〜・・ラニアは行ったことあるの?イシタ公国」
王都商人ギルド長だったラニアなら、何度も行ったことがあるだろうと思っていたが予想外の答えが返ってくる。
「見習いの時に先輩商人と1回だけ行った程度ですね。なので、イシタ公国は実際のところあまり知らないです」
「えっ?そんなもんなの?」
「はい。王国内にある都市間での物流交流が主な仕事ですから、他国との交流する商人はギルド内でも限定されていますから」
「意外だったな」
のんびり移動する中で、ラニアと話をしていると荷台からミオがやって来て左側から密着するように座りコテンッと頭を胸元に預けている。
そのため、ミオの黒いケモミミがピコッピコッと視界の隅で動いているため自然と撫でる俺の心が癒される。
(ミオはシェルのとは違う感触で、またこの柔らかさがいいんだよな〜)
いつまでも触っていられる癒しの時間を楽しんでいると、ミオは満足したのか立ち上がり荷台へと戻ろうとする時に黒く細長い尻尾を俺の左頬を優しく撫でながら離れて行った。
「やっぱ、ネコだな」
「むぅ、ネコじゃないもん。ミオだよ」
プクッと頬を膨らませ振り向くミオを見ながら、俺の目の前で揺れるミオの尻尾の先を優しく弄る。
「んにゃっ!」
スルッと指先からミオの尻尾は抜けてしまい離れてしまったけど、入れ違うようにミリナが俺の横に座りミオと同じように甘える。
「ふにゅ〜」
ミリナの茶色のケモミミを撫でると、気持ち良さそうな声を出し目を細めた表情を俺に見せてゆったりとした時間が流れる。
そんな緊張感が薄まってしまいそうな時間を過ごし1つの丘を登りきったところで眼下に大きな川が姿を見せる。
「大きな川だぁ〜〜!!」
「ちょ・・っと、ミリナ・・」
ミリナが眼下に広がる大きな川を見て立ち上がり興奮しているせいか、御者台で立ち上がり茶色の尻尾がワッサワッサと俺の前で揺れて視界を邪魔する。
「ミオお姉ちゃん!大きな川だよ!お魚いっぱいかな?」
ミリナに呼ばれたミオは、魚に反応したのか荷台から御者台へ素早く移動し、落ちそうな暗い前へ乗り出している。
興奮して揺れる茶色と黒色の尻尾を叩きながら、ミオの足の間から前を見ると大きな橋が川にかかっているのが見える。
「ラ、ラニア・・あの橋がイシタ公国と王国を繋ぐ橋だよね?」
「地図上では、そうなりますね。その橋からさらに南へ行くと、イシタ公国の最初の都市があります」
それから丘を下り橋を渡る前から、川を凝視する猫人族2人はチラチラと俺を見ている。
「ミオ、ミリナ・・馬車を見失わない程度に狩ってくるんだよ」
「「 にゃっ!!」」
短く返事した2人は、動いている馬車から躊躇いもなく飛び降りて川へと駆け出して行った。
「いいんですか?ハルさん」
「いいんじゃね?・・あいつらネコだし」
「そいうい問題じゃないと思うんですが・・」
橋を渡り切りさらに南へ数時間走るがまだ街は見えず夕方になったためか、前方の馬車が止まり隊列を崩したため様子を見ていたら野営の準備を始めている。
「ラニア、少し離れて俺達も野営の準備をしよう」
一番近い冒険者パーティーから十数メートル離れた位置でテントを設営し野営の準備を終わらせた頃にミオとミリナが走っている姿が遠くに見えた。
『ミオ、ミリナここだよ!』
『はい、ご主人さま』
『見つけましたです』
念話で2人と会話をした直後に走るペースを上げて一気に俺の元へやって来て減速する気配がない。
「おい、マジか?ちゃんと止まるよ・・ぐふぇっ!」
笑顔でミオとミリナが俺に突っ込んで来て、それをなんと数メートル後方へ滑るだけで受け止めることができた。
「お、おかえり・・」
「「 ただいまです 」」
クンクン・・クンクン・・
「2人とも、なんか魚臭くない?」
ミオとミリナは目を見開き、ブンブンと首を振り否定している。
「そっか、ならいいけど・・ミオ美味しかった?」
「はい!・・・・あっ!」
「お姉ちゃん!」
あっさり認めたミオの頭を撫でて笑っていると、ミリナも羨ましそうにしているためミリナも撫でてやると、ミオがマジックポーチから捕まえていた魚を取り出す。
「ラニアさん、コレを夕飯に使ってください」
「ミオさん、立派なお魚ですね。お任せください」
ラニアはミオから魚を受け取り夕食の準備へと馬車の横へと向かい真衣達と支度を始める。その様子を見ながら焚き火をアイナ達と囲んでいると、マリアとカラの視線が俺の後ろへと向けられ固定されている。
それに気付いた俺は、顔だけを後ろに向けると金髪碧眼のイケメン冒険者が笑顔で俺達の王へ歩き手を振っている姿が視界に入った。
面識のない俺は、マリア達の顔を見るが警戒している瞳をしているため見知らぬ人物だと確信して立ち上がったところで声をかけられた。
「ちょっといいかい?」
「なんでしょうか?」
俺の前に立つイケメン冒険者は、街中なら多数の女性がときめくだろう仕草でマリア達にアピールしているが、彼女らは冷淡な瞳でイケメン冒険者を見ている。
「な、なんてことだ・・このボクを見ても、無反応の女性がいるだなんて・・」
何か独り言を言っているが、あえて反応せず様子を伺う。
「・・・・」
「まぁ、なんだろう・・ここにいる美女達は、君のパーティーメンバーなのかな?」
再び前髪をかき分けて、爽やかさをアピールしながら白い歯を見せるイケメン冒険者の仕草に、全くの無反応なマリア達。アピールをするほど、彼女達から嫌悪感が溢れ出しているがイケメンは気付いていない。
「いきなりなんなんですか?もちろん、俺の大事な女性達ですが」
俺の言葉の後に彼女らから発しられていた嫌悪感が消えて、俺を潤んだ瞳で見つめている。それを勘違いしたのか、イケメンは嬉しそうに会話を続ける。
「まぁ、美人ばかりのパーティーだから、ずっと気になっていてね」
イケメンは、俺から後ろで座っているマリア達に近付き自己紹介を始めた。
「みなさんはじめまして。私は、Aランク冒険者のライルといいます。今夜は、私のパーティーメンバーと夕食を共にして交流を深めませんか?そして楽しい夜を過ごしましょう」
「ちょっ・・やめてくれませんか?強引な誘いを」
「君、邪魔しないでくれるかな?今僕は美しい女性達と話をしているんだ」
ゴンッ
「いって」
俺は、イケメンの裏拳を鼻先に不意に受けてしまい、後ろへと仰け反ってしまう。
「「「「「 ハルッ 」」」」」
俺を心配する皆の声に念話で動かないよう伝え、イケメンの死を回避することができた。俺は、心を落ち着かせ告げる。
「あのさ、ライルさんだっけ?彼女らは、大事な人達だから帰ってくれるかな?」
「はぁ?この大人数をか?ってか君は彼女らの何?」
「・・さっきも言いましたけど。彼女らはパーティーメンバーなので、俺はパーティーリーダーなんだけど」
「ちっ・・ハーレム野郎か。2人や3人減っても変わりないだろ?ちなみに君のランクは?」
「ランク?あぁ、まだFランクだったかな?あんまり気にしてないんで忘れました」
「エ・・エフ・・そうか、Fランクなのか〜だったら話が早いよ」
イケメンの表情が下衆の表情に変わっていく。マリア達に背中を見せているため、この表情は彼女らの位置からは見えないし、嫌な予感しかしない。
「Aランクは上位ランクだから、下位ランクのFは指示に従う義務があるんだよね〜それを忘れたのかな?」
「はぁ?それは討伐時の作戦に関することだけだろ?」
「ザンネーン。今のような非常時には、女に関することも有効なんだよ。上位ランク者の戦闘を向上させるためにはね」
「・・意味わかんねーよ。その考え方」
「上位ランク者は、下位ランク者に比べ数倍以上も精神的に負担がかかっているんだよ。だから、その疲れを癒すために・・これ以上は言わなくても分かるだろ?・・男ならばね?」
「おまえ・・クソだな。大事な人達を渡すわけないだろ?」
「なっ!・・ゴホン・・ジョウイランク冒険者を舐めると痛い目に合うよ。そういえば、君の名は?」
「Fランク冒険者のハルだ」
「ハル・・・・どこかで聞いた名だな。まぁ、今はいいか。今夜は、気分が悪くなったから帰るとしよう」
「ライル、もう二度と近づくな!」
ライルは俺を睨んだ後に、マリア達を見て笑顔で告げる。
「みなさん、私のパーティーはいつでもみなさんの加入をお待ちしています。加入してくださったら不自由ない生活と幸福感を、このライルが保証しましょう。もちろん、夜の営みまでも」
「さっさと帰れ!」
「ちっ」
ライルは、マリア達に聞こえないよう俺に舌打ちをして戻って行く姿を俺は見えなくなるまで警戒していると、マリアがそっと隣に立つ。
「ハル、大丈夫?・・今ならあの男を消せるけど」
(マリアさん、そのセリフは完璧にアサシンですよ)
「大丈夫だよマリア・・ありがとう。あの男のパーティーは警戒しておこう」
「うん。わかった」
マリアとイスがある場所へ戻ろうとしたら、隣りで野営している俺より少し年上の男冒険者が近づいてくる。
「兄ちゃん、災難だったな・・助けてやりたがったが、俺はEランクだからダメだった」
「いえ・・気にしないでください」
「それにしても、こんな美女ばかりを連れて来て、ランク以上に相当腕に自信があるんだな。俺は、自分を守れるかさえ不安なのに」
隣りの場所で野営している、この男冒険者が自分をさえ守れるか不安だと言う意味がわからず聞いてしまった。
「何を言ってるんですか?この作戦に自分を守ることが不安になる要素はないじゃないですか?」
「・・兄ちゃん、知らないのか?」
男冒険者が不思議そうな顔をしている。
「何がですか?王国の防衛ラインを押し上げる作戦じゃないですか」
「そうか・・本当の作戦を知らないんだな」
「本当の作戦?」
「あぁ、俺達は王国の・・いや、騎士団の捨て駒なのさ。このまま、魔族と衝突し魔族を一定数集めたところで勇者様が俺達を纏めて消し去るらしい」
「それって・・本気で言っているのか?」
「あぁ、間違いない。途中で別れた冒険者達がいるだろう?あいつらも俺達と同じ運命を歩むことになる。どっちが先に消されるかは魔族次第だ」
「そんなこと知っているなら、どうして逃げないんですか?」
男冒険者は、俯き涙目になり告げる。
「逃げたいさ、家族を残して来たんだから・・でもな、強制召集された以上はどうにもならねぇ。もう、決められた運命なのさ」
「・・・・」
「悪りぃな、戦う前にこんな話をして。大切な人と過ごす残りの時間を大事にするんだぞ」
名も知らない男冒険者は、俺の左肩を軽く2回叩いた後に自らの野営場所へと戻って行った。
「・・・・すべては、あいつらの・・国の奴らが元凶なのか。そして、冒険者ギルド長エリーナ。あいつもこのことを知っていながら俺を向かわせた奴か・・」
俺は目を瞑り周囲の雑音を消し意識を集中し体内の魔力を莫大に増幅させ溜め込む。その間に身体を触られている感覚があるが、それをも邪魔に感じ痛覚をも消す。
そして、溜め込んだ魔力を糸のように王国へ飛ばし、王都中心部にある王城の上層階にある俺の魔力玉と繋げ詠唱する。
「エクスターナル・リモート・アーミング・アーム!」
ドクンッ!!
あの時、国王の前で出現させた月白色の魔力玉と完全に繋がり活性化を感じ取れる。
ドクンッ!
繋げた魔力が全て吸収され、サイズが一回り大きくなったことを脳内で感じ取れたところで、俺は急激な魔力消耗で四つ這いになり呼吸が激しく乱れる。
「はぁ・・はぁ・・」
「ご主人さま・・」
「だい・・じょうぶ・・だよ、ミオ」
地面に頭をつけながら覗き込むミオを見て、答えるが身体は正直でそのままうつ伏せになってしまう。
「テ、テントへ!」
ミオの慌てる声を聞きながら、アイナとリンに担がれてテントへ運ばれ寝かされてしまった。
俺が急に起こした行動に驚き、その後に倒れ込んでしまったため夕食どころではなくなったようで、全員がテントの中に入り周囲を囲まれてしまった。
「ご主人様さま、いったい何をされたのですか?」
ミオが覗き込み聞いてくる。
「あぁ、その前にみんなに伝えなきゃいけないことがあるんだ」
俺は、隣りの男冒険者から聞いた俺達の扱われ方を皆に伝えると、驚き王国や騎士団に怒りを向けている。
「この先に確実に死ぬ運命が待っている。だからさ、俺は・・俺はみんなを・・」
「ダメよ!ハル」
「アイナ?」
「もう、私達は決めているのだから」
「そうよ、ハル」
「カラ・・」
「おにぃ(にぃに)」
「琴音、美音」
「どこまでも一緒」
「真衣、愛菜・・・・そうか、俺は運命に抗うことにするか」
「ハル・・1ついい?」
「どうした?マリア」
マリアは、俺の右手を握り優しい表情で口を開く。
「さっきの膨大な魔力・・王国の方へ飛ばしたように感じたんだけど・・アレはなに?」
「そうか、マリアとは一番濃い魔力融合したから気付いちゃったか・・」
「・・うん」
「王城の王族居住区画の反対側に行くと執務室があるのは知っているよね?」
「えぇ、小さい頃から行ったことあるから知っているわ」
「そこの部屋に、魔力玉を見たことないかな?」
魔力玉の言葉に、マリアよりアイナとリンそして真衣達が反応した。
「マリアはどう?」
「・・知っているわ。突然現れて、宮廷魔導師達も誰も対処できないけど、刺激さえ与えなければ問題ないって。それがどうしたの?」
俺は、アイナとカラを一度見てから続きを話す。
「あの処刑の日にリル達に助け出され、回復した俺はアイナの別邸から王城へと1人向かい、裏切った幼馴染のトニーを殺し復讐を果たした後にカラを救うため城内へと侵入したんだ」
幼馴染のトニーを殺したと告げたことで、カラはギュッと俺の左手を掴み泣いている。
「侵入に成功して、城内にいるはずのカラを探すも見つけれず上層階の執務室に辿り着くと、国王と騎士団長そして参謀に遭遇して、あの処刑の日の後のカラの扱いを聞かされた」
「カラさんの扱い・・?」
当時不在だったマリアは、カラの酷い扱いを知らないようだ。
「参謀が告げるカラへ対する残酷さを聞かされた俺は、目の前の王族を殺すため、魔力玉を出現させたんだ。カラを救い出して、逃亡するときに王城を消滅させるために」
「でも、どうして私達王族を魔力玉を使わなかったの?」
「言い訳だけど、マリア達王女3人と勇者一行の動向を聞いて、不在なのは知っていた。けど、その時はカラの傍に行くことが最優先だったから、監禁場所を聞き出し王城地下の独房へと向かい魔力玉は位置を固定しそのままにしたんだ」
「それで、カラさんは・・」
「ご主人さま・・それ以上は」
ミオとミリナが当時を思い出したのか、大粒の涙を流している。
「ごめんな、ミオ、ミリナ思い出させちまって。マリア、ここからはミオとミリナしか知らないし他言しないでほしい。カラ、あれは君のせいじゃないからな」
「・・もちろんよ。ハル」
「うん」
俺は、深く溜息をついて口を開く。
「地下の独房へ入ると、物凄い腐敗臭が漂っていた。その頃の俺はスキルも今みたいに上達していなくて、ゆっくり歩きながらカラを探す。いくら探しても姿がなく、とうとう最奥の独房の前に立つと感じていた腐敗臭が強まったんだ」
「まさか・・」
「鉄格子越しに見える存在は、変わり果てた姿となったカラだったんだ。全身は傷がない場所が無い程の傷だらけで炭化し、綺麗な青い髪も血肉で汚れていた。それでも、微かに生きる鼓動を感じたとれた俺はカラを抱きしめたんだ」
俺の話をみんなは、黙って聞いている。その頃のミオとミリナは、リルとクウコと一緒に必死に俺を探していたんだろう。
「それで、俺の持つ全ての魔力を使い最上級治癒魔法を詠唱し発動した」
「そ、そんな集団で詠唱する魔法を1人でするなんて」
マリアは、単独で詠唱した魔法名を聞いて驚愕している。
「あぁ、予防線で魔力回復ポーション飲んだけど結果は変わることはなかったよ。カラをキズ1つない身体に戻すことができたけど、重度の魔力欠乏症で俺の命の灯火は消えた」
シーンとテントないが静寂に包まれる。
「でも、一度意識を失ったんだけど再び意識を取り戻したんだ。ミオ達が地下独房の壁をぶち壊した衝撃でね。そのおかげで、別れの言葉を告げることができたんだ。だから、俺が魔力玉を使う前に死んだから今も残っていると思うんだ」
「・・そんなことが・・ゴメンねハル。わたし、なにも知らないで・・」
「いいんだよ、マリア。今は、みんなと一緒に過ごせているから」
「ありがとう。わたしは、ハルのそばにいてもいいの?」
「もちろんだよ、マリア」
「おにぃ、その魔力玉ってのは白ぽっくて丸いのだよね?」
「そうだよ、琴音」
「それを今使えるの?」
「あぁ、さっき使える状態にしたんだ」
「センパイ、その魔力玉を使うとどうなるんですか?」
「今の威力なら・・・・王都が消滅する威力はあるよ」
俺の言葉にみんなは絶句し、言葉を失っていた。
「もちろん、使う場面は慎重に選ぶよ。爆発させる方向は制御できるから、関係のない人を巻き込む使い方はしない。使ったとしても、王城だけが消滅するようにするから」
みんなが俺の話に納得してくれたところで、俺の腹の虫が鳴り遅くなった夕食を一緒に食べることにしたのだった・・・・。




