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1章 はじまり 15話 告白

 モグモグ・・パクパク・・ゴクゴク・・プハッ


 モグモグ・・ゴフッ・・ゴクッゴクッ・・ハァハァ



 「リル・・もっと落ち着いて食べなよ。ほら、クウコを見て見な・・」


 モグ・・モグ・・アム・・アム・・ゴク・・ゴク・・モグ・・モグ・・


 リルはチラッとクウコを見たが、マイペースで食事を続ける。食べ終えた二人は、相変わらず口の周りが汚れているため、タオルで拭いてやる。


「「食べたー!お腹いっぱい」」


「よかったね。今日は服を買いに行って、ギルドで冒険者登録をしような」


「「トウロク?なにそれ?」」


「食べ物を買う時に必要な、お金を稼ぐために必要なことだよ」


「ハルはトウロクしてるの?」


 クウコが聞いてくる。


「あぁ、登録しているよ」


「じゃークウコする〜ハルと同じトウロクする〜」


「あっずるいクウコ、ハル・・リルもトウロクする〜」


「オッケー。二人一緒に登録しに行こうな」


 きっと冒険者登録の意味は理解していないのだろう。ただ俺と同じことができると言うことが嬉しいのだろう。

宿を出る時に受付で暇そうにしているルミナに5日分の宿代を支払うと長期一括払いは値引きされると言って差額分を返してきたが、チップだと言ってルミナに渡すと飛び上がるように喜んでいた。


 ちょうど朝と昼の間ぐらいの時間のためか、冒険者達とたくさんすれ違う。誰もが俺を見てくるが、すぐ視線を外し声をかけてくる者は皆無だった。


 噴水広場が遠くに見えた頃に、二人が俺の歩くのを邪魔するように前で立つ。俺はしゃがんで、二人の視線の高さに合わしてから声をかける。


「どうした?」


「「だっこ・・」」


「抱っこ?」


「「つかれた、もう歩けない」」


「しょーがないな。ほら、おいで」


 両腕を伸ばし二人を迎えるとリルとクウコは、にへら顔になり抱き付いてくる。そのまま二の腕に二人を乗せて立ち上がり歩き続ける。


「やっぱり、ココがいいねクウコ〜」


「そうだね、ココが一番だねリル〜」


「気に入ってくれるなんて光栄だな。でも、大きくなったら乗れないからな?」


「「それは、イヤだ〜〜」」


「うわっ暴れるなって・・」


 二人が顔を横にブンブン振るから、左右に体を持っていかれそうになる。


「わかったから。大きくなっても乗せてやるから」


「「やったやった〜」」


 リルとクウコは両手を上にあげたり振ったりと喜びを表現していた。ステータス以前に、まだまだ子供だ。

そんなこんなで冒険者ギルド前に辿り着く。


「中に入るから、大人しくしていてな」


「「うん」」


 扉を開けて中に入ると、これから依頼へ行く冒険者達と早朝依頼を終わらせた冒険者達が散見する。目を合わせないように窓口へ行くと、昨日対応してくれたアメリアの窓口に冒険者はいなかった。


「おはよう、アメリア。この二人の登録とパーティ登録を頼みたい」


「おはようございます・・ハル・・あの、このカワイイ子は?」


 アメリアが、俺の変わりように驚いている。それもそうだ。未活動で再登録しに来た男が、翌日に少女を抱き抱えて冒険者登録申請に来る状況だから。


「今は、訳あって話せない。ゴメンけど、取り急ぎで手続き頼むよ」


「わ・・わかりました。機会あればお願いします」


「ありがとな」


 アメリアから申請書を受け取り代筆して、銀貨2枚と申請書2枚を渡す。


「すぐに終わらせるから、このまま待ってて」


 テキパキと事務処理を進める姿をいつの間にかリサとカラの姿に重ねていてしまい、視界が滲んで見にくくなっていることに自覚が無かった。


「ハル・・?どうしたの?」


「「ハル〜どうして泣いてるの??」」


「あっすまない。なんでもないんだ。なんでも・・・・」


 アメリアとリルとクウコに言われるまで、泣いていることに気付いていなかった。袖で涙を拭く。


「・・えっと・・リルちゃんはこの魔法具に右手を置いてくれるかな?」


「いいよ〜」


 魔法具が一瞬輝いた後にギルドカードにステータス情報が記載される。


「リルちゃんありがとうね。次はクウコちゃん、同じように右手を置いてくれるかな?」


「は〜い」


 同じように魔法具が輝き登録が無事に完了した。


「ハル、パーティー登録するから、カード出して」


 両手が塞がっている俺は、胸元にあるギルドカードをリルが取りアメリアに渡してくれた。

アメリアが俺達3人のギルドカードを重ねて魔法具の中に入れると。ハッとした顔で俺を見る。


「ハル・・・落ち着いて聞いて欲しいの」


「どうした?そんな真剣な顔して」


 アメリアが初めて見せる表情に不安がよぎる。まさかパーティー登録できないのかと。だが、現実は俺の心を深く抉られる気持ちになった。


「このままパーティー登録すると、ミオって方の関する情報が抹消されてしまいます」


「ミオの情報が!・・・・・・」


 少し声を荒げてしまった。リルとクウコはミオの存在を知らないから、俺が動揺する理由がわからないため不思議そうに見ている。アメリアは少し知っているような顔だ。きっとリサ達から聞いていたのだろう。


 ふと釈放された日の夜に、家があったはずの場所で出会った猫人族の子を思い出す。確かにミオに見えた。名前も同じだったが出会った彼女は俺のことを知らなかった。


 ポッカリと空いた心ができてくる。今は何も考えたくない気持ちになる。


「「ハル・・大丈夫だよ。リルとクウコが側にいるから」」


 両頬に優しい温もりがジワジワと伝わると、二人が首に手を回し頬擦りしてくれている。ポッカリと空いていた心の穴が塞がっていくようだ。


「ありがとう・・リル・・クウコ」


 そっと両頬にキスをしてくれた二人に、礼を込めて頬にキスを返した。ニコッと笑う二人は、側から離れない気持ちを表現するように肩にストンと頭を置いてくる。


「アメリア、そのままパーティー登録を頼む」


「ハル・・このまま手続き進めるね」


 魔法具が少し長めに輝き収まりパーティー登録が完了した。魔法具から取り出されたギルドカードをそれぞれが受け取り胸元にしまう。


「アメリア、ありがとう」


「ううん。今日は、このまま依頼受けるの?」


「これから二人の服を買いに商店へ行く予定なんだ。依頼を受けるのは、その後になるよ」 


「待ってるね」


 俺は頷いて窓口から離れて外に出る。今回はダグラスに見つからなかったようだ。大通りを歩きルーシーが営む商店へと向かった。


 ギルドからずっとリルとクウコを抱っこしたままだ。さっきギルドで癒してくれたから抱っこを続けよう。

店に入るがルーシーは見当たらない。


「こんにちは〜ルーシーいる?」


「誰だい?こんな店に来る好き者は?」


 店の奥からルーシーの声がする。俺だと気付いてないようだ。


「そんなの俺しかいないだろ?」


 奥から出てきたルーシーが俺だと気付いて目を見開いている。


「ハルかい?・・・・本当にハルなのかい?」


「何言ってるんだよ!偽物がこんな商店に来る訳ないだろ?」


「こんな商店だって・・?フン・・間違いないみたいだね」


 リルとクウコを下ろして立ってもらい、カウンター越しにルーシーと握手をする。


「久しぶり・・変わってなくて安心したよ、ルーシー」


「あたしは生涯現役さ・・でも、長く見なかったねアンタ」


「あぁ、訳ありで拘束されてたんだよ。2年くらい」


「そう・・じゃあ、あの話は知ってるのかい?」


「あの話し?拘束されてから、一切外の情報を知らないんだ。勇者召喚も知ったばかりだし」


 ルーシーは店の奥に俺達を案内して、来客用のソファに座らせてくれた。二人用ソファに3人が座るから狭かったが途中から二人は、俺の膝の上に陣取る。


「ハル、この可愛い子は?」


「紹介するよ、銀髪の子がリルで金髪の子がクウコって言うんだ。ちなみに名付け親は俺なんだ」


「リルちゃんにクウコちゃんね。私は、ルーシー。よろしくね」


「「よろしく〜」」


「ルーシーここだけの話しで詳しく言えないけど、この二人は俺より遥かに強いから」


 俺より強いと聞いたルーシーは、再び目を見開く。見た目は綺麗な少女にしか見えないのにCランク冒険者のハルより強いとは信じられなかった。


「ちなみに、ギルドカード更新切れして、ランクは新人冒険者扱いだから」


 ルーシーは気軽に話す俺に対し苦笑いしている。いつもの見下した対応をすると思っていたので調子が狂う。


「そのさ・・ハル。あの話の件なんだけどさ・・」


「ルーシー教えてくれ」


「あんたが行方不明になった日から、猫人族のミオちゃんとリサとカラは毎日のように捜索していたんだよ。ほんの少しだけミオちゃんがハルと念話が繋がったと」


「あぁ、確かにギルドから連行された俺は途中、俺を探すミオと念話が繋がり何処かへ連行されていると伝えたよ」


 俺の拳に自然と力が入っていく。


「その日の夜ね、ハルが連行されたことを知らなかったリサとカラがギルドで通常業務をこなしている時に、捜索手段を失ったミオちゃんが、ギルドに飛び込んできたの」


「ミオが一人で冒険者ギルドに?」


 きっと、ミオが夜にギルドに飛び込んだと言うことは、日没まで一人で探していたのだろう。


「ギルド内で、ハルが攫われたって大声で叫んだらしいの。それを聞いたリサとカラがミオの側に駆け付けて事情を聞いていたんだけどね、ギルドマスターがミオちゃんを強制的に追い返したの」


 ダグラスの対応に怒りが込み上げてくる。小刻みに震える手を二人に気付かれないよう、すぐ止めた。


「その後はどうなったんだ?」


「リサとカラは、溜まっていた休暇を使って王都内を探したみたいだわ。でも、些細な情報もなくてね。休暇の終わりが近づいた頃には疲労で倒れてしまったの」


「二人がそんなになるまで・・・・」


 ルーシーは、姿勢を正し話を続ける。


「休暇が終わった二人は、仕方なく業務に復帰したようだけど、非番の日は必ず王都を歩き続ける二人を誰もが見かけるから、商人ギルドの私たちも微力ながら手伝うのだけど情報が一切ないのよ。気持ち悪いくらい」



「そうだよな。騎士団に連行されて王城の地下深くの独房で監禁されていたからね」


 二人の捜索活動を聞いて、まだ誰にも打ち明けていない拘束場所を漏らしてしまう。


「あんた・・そんなところで監禁されていたの?」


「まぁね。思わず言っちゃったよ」


 ルーシーは背もたれに深く背中を預けて、上を見上げ大きく溜息をつく。


「はぁ・・それは見つからないわ」


「それで、どうなったんだ?ギルドで二人を見なかったけど」


 俺は核心部分を聞いてみる。


「捜索続行を諦める空気になった頃にね、勇者召喚が王城で行われたの」


 勇者召喚。それと二人にどんな関係があるのだろうか。


「確か、トニーが勇者召喚の噂をしていたしな」


「それから、騎士団が街中で見かけることが増えたの。するとギルドに騎士団長が何日もやって来ては、ギルドマスターと話をするの。内容はギルド職員誰も知らないほど厳戒態勢で」


 ギルドの部屋で拘束された光景を思い出す。悔しいが、時間は戻らない。


「ギルドと騎士団は提携しているからな」


「毎日のように来ていた騎士団長がパッタリと来ない日が何日も続いて、いつものギルドに戻ったとリサ達は言っていたけど、ある日ギルドの前に王族の馬車が来たのよ。騎士団長を筆頭に」


 騎士団長・・騎士団・・ギルドマスター・・密会・・勇者召喚・・二人が王城に。


「なぁルーシー、物凄く嫌な感じがするんだけど」


「そう・・騎士団長がギルドに入って来た途端、リサとカラを大声で呼びつけたの。指示に従わない二人をギルドマスターが強引に連れて行き馬車に乗せたそうよ」


「クソッ・・ダグラスのやろう・・」


「気持ちはわかるわ。リサとカラは届かないとわかっていても、ハルの名を呼び続けて助けを求めていたわ」


 無意識に殺気が溢れ出し、この部屋を完全支配をしたことに気付いていない。


「ひぃっ・・・・」


「「ハル、ルーシーは良い人」」


 強く握られた拳をリルとクウコの小さな手に包まれて、殺気を飛散させる。


「ふぅ・・すまないルーシー。リサとカラのことを考えると・・」


「あなたの本気の殺気を久しぶりに浴びたわ。それでも、この子達の方が強いのね」


「あぁ、勝てる気がしないよ。それで、ミオはどうなったんだ?」


 もう一つ重要なことだ。


「ミオちゃんは、あなたが殺したと疑いをかけていた貴族に引き取られたの。それ以降はわからないわ」


「な・・なんだと・・その貴族の名は?」


 ルーシーは、魔法具を使い部屋に誰もいないことを確認し、小さな声で告げてくれた。


「イノストール公爵よ」


「な・・・・本当に?」


 ルーシーは無言で頷き肯定した。


「ありがとう。もうこの話は終わろう。ルーシーこの子達に合う服を揃えてくれないか?」


「良いわよ。お嬢ちゃん達、新しい服を選びに行きましょう」


 ルーシーは立ち上がり、リルとクウコに手を伸ばし誘うと二人はルーシーの手を取り売り場へ移動して行った。


(まさか、ミオがイノストール公爵の手に落ちるなんて・・あの獣人族異常愛者のとこに)


 全身の力が抜けてしまい、動けない俺はこれまでルーシーが話してくれたことを目を閉じて整理した。


 すると俺の膝に二人が乗ってくる。フワッと甘く香る二つの香りは、リルとクウコだ。ゆっくり目を開けると二人がニコニコしながら擦り寄ってくる。


「ちょいちょい、それじゃ着替えた服が見えないよ。二人とも立ってごらん」


 二人は素直に離れて、対面のソファの横に立つ。


 リルは黒のAラインワンピースを着てフワッとした感じになっている。クウコは白のTシャツワンピースを着てシュッとした着こなしだ。二人とも自慢の綺麗な髪が活かされている。


「リル・・クウコ、似合っているよ。美人さんだ」


 あえて言おう、ここで子供扱いをしてはいけない。大人の女性として褒めなければ。


「「ありがとう〜ハル〜大好き〜」」


 二人は、にへら顔で抱き付いてくる。やっぱ子供だと思うが声には出してはいけない。


「あらあら、まるで恋人のような接し方だね」


「ハルのこと大好きだもんね〜リル?」


「ね〜クウコ!大好きだよね」


 二人がこれでもかと、俺に戯れてくる。そんな二人の頭を撫でてやる時間が、物凄く幸せに感じた。


「この袋の中に、他の外着と寝間着に下着を必要分入れておいたよ」


「ありがとう、ルーシー。これで足りるかな?」


 ルーシーに金貨3枚を渡す。


「十分過ぎるよ。どこにそんな金があるんだか」


「それは秘密さ。さてと、長居し過ぎたから帰るとするかな」


 ソファから立ち上がり接客の間から外へ移動する。商店を出て、ルーシーと別れる際に二人が手を振っていた姿を見てなんだかホッとした俺がいる。



 ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅ


 大通りを歩いていると、二人からお腹が鳴る。毎回なんでタイミングが揃うのだろうか。謎だ。


「「お腹すいたよ〜」」


「わかったよ。今日の昼は飯屋で食べような」


「「はーい。楽しみ〜」」



 俺たちは、大通りを歩き飯屋を探す。すると、二人が肉料理屋の飯屋を見つけたため、ここで昼飯となる。

肉のいい匂いが充満する店内で、二人の腹は鳴りまくりヨダレも出しててカオスな状態に陥った。注文した肉料理を食べ尽くし、口周りをタレだらけにした二人を拭いていると、目をシュパシュパし始めて船を漕ぎ始めた。


「おい・・眠いのか?」


「「・・・・・・・」」


 満腹になった二人を抱き抱えて店を出る。他にやりたいことがあったが、二人が熟睡してしまったので宿屋に帰ることにした。さっきまで肉の匂いに支配されていたのに、しばらく歩いているといつもの甘い香りに二人は包まれている。


 宿屋スーピーに辿り着きいて部屋のベッドで寝かしたが、夜になっても起きる気配がない。仕方なく、アイテムボックスの中にある干し肉で空腹を満たし、今夜は寝ることにする。もちろん二人が寝ているベッドに入り込んで。


「流石に3人は狭いかな?」


 掛け布団が足りないため、自分用に毛布を出して意識を手放した・・・・・・。














 













 









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