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1章 はじまり 14話 孤児の二人

「ここだけの話しなんですが、お二人は今・・王城にいます」


「な・・なんだってーーーーーー?」


 受付嬢からの爆弾発言が飛び出して、思わず声を荒げてしまった。


「し・・静かにしてください! ハルさん」


「ご・・ごめん。でもどうしてそれを?」


 受付嬢が周囲を見渡し、窓口越しに体を乗り出して小声で話してくる。


「じつはですね、二年近く前に突然ギルドに騎士団長が騎士を多勢連れてやって来て、ギルドマスターと何か話をしたのちに、リサさんとカラさんを連れて行ったのです」


「そうか・・ありがとう。あの・・君の名は?」


「あっ・・すいません名乗っていませんでしたね。わたし、アメリアです」


「アメリア・・アメリアさん、よろしくね」


 俺は、右手を差し出しアメリアに握手を求めると、少し赤い顔の彼女はゆっくりと右手を出し優しく手を包んでくれた。


「ハルさん、呼び捨てで呼んでください」


「それじゃ、俺のことも呼び捨てでよろしくな、アメリア」


「はぃ・・ハル」


 アメリアは俯き小声で、俺の名を呼んでくれていた。


「アメリア、今日の用事は終わったから帰るよ・・またな」


「お待ちしてますよ、ハル」


 笑顔で手を振るアメリアに、軽く手を振りギルドを出ることにした。まだ体は全快していないため無理は禁物だ。

出入り口の扉に手をかけようとしたら背後から男に呼び止められれる。


「おい!待て、ハル」


 この声は忘れもしない。この冒険者ギルドのマスターであるダグラスの声だ。一番会いたくない存在だったが、冒険者身分の俺にギルドに行くことは避けて通れない道だから、サッサと用事を済ませて立ち去るつもりだったが、長居してしまったていた。


 俺は扉の前で立ち止まり振り返り、できるだけの笑顔で答える。


「ギルドマスターが新人冒険者のワタシに何かご用でしょうか?」


「ちっ・・まぁいい。今日のところは、立ち去れ」


「わかりました。それでは失礼します。ギルドマスター」


 この場でのイザコザは良くないと判断し、丁重に接した。不満をあらわにしたギルドマスターだが、騒ぎを大きくしたくないせいか、必要以上に留めようとはしなかった。


 ギルドを出て大通りに出ると陽は空の高い位置あるのを確認し、もう時間的に昼だ。今は一人のため飯屋に入る理由も無い。たくさんの出店の中で、肉串を売っている店を探し見つけた。


「いらっしゃい」


「肉串を4本と果実水2つ」


「まいど、肉串4本で銅貨12枚と果実水2つで銅貨5枚で銅貨17枚だ」


 威勢の良い店主は、食べ頃の肉串を2本づつに分けて袋に入れてくれる。銀貨2枚を支払い、銅貨3枚を受け取ると、肉串と果実水を受け取る。


「ありがと」


「にいちゃん、また買いに来てな」


「あぁ」


 肉串が入った袋と果実水を持って、噴水広場の空きスペースに座り左隣に肉串を差し出す。


「はい、肉串好きだろ?ミオ・・・・・・」


 そこには、いつも笑顔でいるミオの姿は無く、肉串が空を切る。


「なにをやってんだオレは・・」


 左で空を切った肉串を、そのまま自分の口に放り込もうとしたら、足元で強制的に動きを止められると、小刻みに動いている。


「・・ん??」


 動きを止められた、肉串を持つ左腕の先にはフードを被り全身が薄汚れた少女が二人手放しで目を瞑り、肉串に食らい付いている。


 アムアム・・モグモグ・・ゴックン・・パクッ・・


 ただ無我夢中で俺の肉串を食い続ける少女二人を凝視し食べ終えるの待つ。


 肉串の最後の肉を食い終えた少女の口周りは、タレだらけでベタベタだ。アイテムボックスからタオルを出して、優しく拭いてやると、目を細めてされるがままになっている。



「キミたちは、どこから来たのかな?」


「「あっち・・」」


「あっち?」


 少女二人が指差す方向を見るが、街並みが広がるだけで、特に変わった様子は無い。


「ん〜わかんないな」


 視線を戻し二人を見ると、距離を一歩近付き、肉串が入っている袋をクンクン匂っている。


 ぐうぅぅぅぅぅ


「空腹なのか?」


 二人は無言で頷く。少女に1本ずつ肉串を渡すと勢いよく食べ始め食べ終わると、串に残っているタレまでもペロペロと舐め始め、そのあとは、串を噛みチューチュー吸っている。


「なぁ、これ飲むかい?」


「「ん。あいあと」」


 果実水が入った瓶を渡し、ゴクゴクと一気に飲む。小さな口から少し溢れてくる果実水をソッと拭いてやると、なんだか懐かしい感覚になる。ミオもこんな感じだったなと思い、二人を見つめる。


 果実水を飲み終えた二人は、俺に空き瓶を渡すと両隣に座り俺の足に頭を乗せて寝てしまった。こんなに懐かれてもな、これからどうしようか考えながら残った肉串を食べる。


 目の前をたくさんの人が行き交う様子を眺め、膝枕で寝ている少女二人が起きるのを待っていると、空高くあった陽もだんだん傾き、オレンジ色に染まり始めてくる。


「「ん〜なぁ・・・・」」


 左の子がモゾモゾ動き背伸びをした手が、右の子の顔に当たり右の子もモゾモゾし始めた。すると、パチパチっと二人の目が開き視線が重なる。


「お?よく眠れたかな?」


 「「おはよ〜」」


 寝起きで寝ぼけているのか、二人は起き上がると俺の足の上に座り抱きしめてきて、首筋をクンクン嗅いでくる。


「ちょっちょっと、どうした?」


「良い匂いですぅ」


「・・ですぅ」


 慌てた俺は、思わず二人の頭を撫でてしまうと、被っていたフードが取れてしまい、そこからケモ耳が姿をあらわした。


 左の子は肌は汚れているが、白く銀色の目と銀髪を腰まで伸ばしている。右の子は肌が白いが、金色の目で金髪を腰まで伸ばしている。年齢は、体つきからみて10才くらいだろう。


「二人は、どうして噴水広場に?お母さんやお父さんは?」


「いないの・・気付いたらここにいたの」


「そうか・・それは困ったな。孤児院に住んでた?」


「コジイン・・?たぶん・・違うと思う。暗い暗い部屋にずっと閉じ込められていたから」


 銀髪の子が俺の質問に答えてくれる。


「それじゃ、帰るお家はないの?」


 ストレートな質問をしてみる。


「「ここには無いの」」


 予想通りの答えだった。

 

「そうか、俺と一緒だね?」


「「あなたもお家無いの?」」


 二人は顔を上げて心配そうに俺を見ている。


「何年か前まではあったんだけどね。今は宿で暮らしてる」


「「かわいそうなの」」


 二人はギュッと抱き締めてくれる。思わず心から、保護欲が沸いてくる


「嫌じゃなかったら、一緒に来るかい?」


「「行く!付いて行く〜」」


 さっきより強めに抱き締めてくるから、よっぽど嬉しいのだろうか。二人を抱き抱えて立ち上がり宿屋へ向かい歩き出すことにした。


 彼女たちを抱き上げ歩いているため、視線の高さが同じになり何度も目が会うたびに3人で笑顔になる。


「そういえば、名前を言ってなかったな、俺はハル。二人は?」


「なまえ・・?名前はないの」


 右で抱きかかえている、金髪の子が言う。


「そうか・・」


 少し無言の時間が流れる。


「ねぇ、私達の名前つけて」


 左に抱きかかえている銀髪の子が言った。


「こんな俺が二人の名前付けて良いのか?」


「「うん」」


 笑顔で頷く二人。見た目は違うのに、息が合うからまるで双子のようだ。


「そうだな・・銀髪の君は、リル。金髪の君は、クウコ。でどうかな?」


「「リル・・クウコ・・」


 二人は俺が言った名前を俯いて、ずっと繰り返し呟いている。


「き・・気に入らなかったら、違う名を考えるけど・・」


 二人は、俺を見て笑顔で叫ぶように言った。


「わたし、リル!」


「わたし、クウコ!」


「「ねぇ〜〜」」


 どうやら二人とも名前を受け入れてくれたようで、きゃっきゃしながらジタバタ暴れてくる。二人とも体重が軽いくせに力はあるようで、少しフラフラしてしまった。


「なぁリル、クウコ・・夕飯は宿で食べるで良いかな?」


「「うん!食べる食べるぅ〜」」


「よし!決まりだな。その前に体を綺麗にしよう」


 リルとクウコを抱いたまま宿屋スーピーの入ると、受付にルミナがいた。


「戻ったよルミナ。急で悪いんだけど二人分を追加で払いたいんだけど・・」


「お帰りな・・さい。ハル兄さん。ってめっちゃカワイイ子を二人も・・」


 ルミナの目が驚きで見開いている。


「今夜は一人部屋しか空いてないの・・」


「大丈夫、今の部屋でいいよ」


「そう・・ですか。銀貨2枚です」


 ルミナに二人の宿代を払い、部屋の鍵をもらうと階段を上がり6番部屋に入る。


「リル、クウコおつかれさま。体を綺麗にしよう」


 二人は素直に降りてくれた。俺は一歩下がり、生活魔法クリーンを二重がけして一気に二人を綺麗にした。二人は優しい風に包まれて、キャッキャ騒いでいる。


「「ありがと〜」」


 ダッと駆け寄り、俺を抱き締めてくる二人の頭は、ちょうど俺のお腹あたりの高さにある。ちょうど頭を撫でやすい高さだから、思わず撫で撫でしてやると。上を向いて気持ち良さそうに目を細めている。


「よしよし」


「「んふふ〜」」


 このままずっと撫でていたい衝動が込み上げてくるが、二人のお腹が部屋に可愛く鳴り響いた。


「あははは、ごめんごめん。夕飯にしような」


「やった〜」


 二人のケモ耳がピコピコしている。尻尾は簡易着の中で揺れているのだろう。背中のあたりがワサワサ揺れている。


 体が綺麗になった二人を連れて1階の食堂の席へと座る。奥の壁際の席に座った俺は、まだ幼い二人を両隣りに座らせて夕飯を注文した。ルミナが夕食を運んできてテーブルに並べてくれる。追加で果実水を注文し代金を支払った。


「さぁ、食べよう」


「「はーい」」


 昼間と違い二人は落ち着いて食べている。獣人族は、やはり肉が好きなようなので肉入り野菜焼きの肉多めを注文した。悪戦苦闘しながら野菜を食べているところが子供らしい仕草だ。


「「食べたー」」


 俺が食べ終わって、しばらくしてリルとクウコは完食した。相変わらず口の周りはベタベタだ。テーブルにあった濡れタオルで口を拭いてやると嬉しそうな顔をし、コップに残っていた果実水を飲み干した。


「部屋に戻ろうか?」


「「ん・・」」


 満腹になった二人は、目を擦り眠たさ全開な状態だった。もう自分で歩く余力はないだろう。俺は、席を立つと二人を抱き抱えて二階の部屋に戻る。


 二人をベッドに寝かしつけて布団をかけてやると、二人とも丸まって寝てしまった。俺は、アイテムボックスから毛布を2枚出して部屋の魔法ランプの灯りを消して毛布に潜り込む。二人から寝息がわずかに聞こえるため、グッスリ寝ているようだ


 

「なんか一気に人が増えたな・・」


 孤独感に包まれていたはずなのに、リルとクウコに出会い心が少し満たされていく。これからの活動を考えようと思ったが、今夜は素直に寝ることを選んだ。


「明日起きたら、二人のステータスでも見せてもらおうかな」


 そう呟いて、目を瞑りゆっくりと意識を手放していく・・・・。



スリスリ・・スリスリ・・


スンスン・・スンスン・・


 ゆっくりと目を開けると目の前にリルとクウコが顔を擦り付けたり匂いを嗅いでいる。


「ん・・おはようリル・・クウコ。ってか何してる?」


「ハル・・起きたぁ〜」


 甘えた声でルリが首元で呟く。毛布に潜り込んでいたクウコはお腹辺りからモゾモゾ上がってきて、ヒョコっと顔を出す。


「おはよ〜ハル〜」


「クウコどっから出てきてるんだよ?ってなんで二人とも裸なの?」


「にひひ・・だって布団暑いから脱いじゃったの」


 無邪気に笑うクウコは、未だに体の上にいる。リルも毛布に入ってきて、右腕に体を押し付けて密着してくる。


「せっかくベッドで寝かしたのにな・・次は一緒に寝るか?」


「「うん。一緒がいい」」


「そうか・・これからは一緒な」


 しばらく3人で毛布に入っている時間を過ごした俺は、二人に簡易着を着させて、朝食後に商店で二人の服を買いに行くことにした。そして、支度をしている途中に二人のステータスを見せてもらう。


「なぁ、二人のステータス見せてくれないか?」


「「いいよ〜」」


 ベッドに腰をかけると、二人が両隣りに座る。左にルリで右はクウコだ。これだけは毎回一緒だ。


「じゃあ、リルから見せて」


「いいよ、ハル。見て見て」




ステータス



名  リル (女)

種族 神獣(人化) 10才

職業 ???

HP 130000/130000

MP 200000/200000


魔法 神属性 

スキル  気配探知Lv?? 鑑定Lv?? 念話Lv?? 隠密Lv?? 


称号 神狼を継ぐ者





 リルに見せてもらったステータスが人間離れしていた。まぁ神獣だからか。見た目は子供だけど、国を滅ぼす程の実力者だ。



「ありがとうな・・リル」


 リルの頭を撫でてやると嬉しそうな顔をしてくれる。


「いいよ〜ハルにならいつでも見せてあげる」


「クウコのも見て見て〜」


 クウコが俺の首に両手を回して、早く見てと言ってくる。


「あぁ、クウコの見せてな」




ステータス



名 クウコ  (女)

種族 神獣(人化) 10才

職業 ???

HP 170000/170000

MP 250000/250000


魔法 神属性

スキル  気配探知Lv?? 幻惑Lv?? 鑑定Lv?? 隠密Lv?? 千里眼Lv?? 念話Lv??


称号 神狐を継し者





・・・・クウコもリルに負けないステータスだった。俺っていったいなんなんだろう。



「ありがとな、クウコ」


 リルと同じように頭を撫でてやると嬉しそうな顔をする。ケモ耳達は、頭撫で撫でが好きなのだろうか。




 ぐうぅぅぅぅ〜


「ごめんな・・朝飯にしよう」


「「ん・・ごはんごはん・・」」

 



リルとクウコのお腹が仲良く鳴ったとこで、3人一緒に部屋を出て食堂へ向かった。










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