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1章 はじまり 13話 釈放と喪失

 

  冒険者ギルドで拘束され視界も奪われた俺は何処かへ運ばれて行く。途中で運良くミオと念話が僅かな時間繋がってくれた。少ない情報だったが、俺が何処かに連行されている状況を理解してくれた。


 担がれ感覚があり移動させられて不意に身体が宙に浮くと、背中と後頭部に強い衝撃を受け呼吸が一瞬止まる。


ぐはっ・・・・


「いっ・・・・て・・・・」


はぁ・・はぁ・・はぁ・・


 呼吸を整えていると、頭に被らされていた麻袋が取られこもっていた空気から解放される。


「おい・・大人しくしていろ」


 無理やり目隠しに使っていた物を剥ぎ取られ、一瞬顔に痛みが走るが我慢して目を開けると多数の騎士に囲まれていた。



「ここはどこなんだ?」


「「「・・・・・・」」」


「・・おい!答えろ・・」


 部屋を見渡すと騎士達の後ろに鉄製の格子が見え、ここが独房なのだと認識し抵抗して暴れたが簡単に押さえ込まれてしまう。すると、騎士達の背後から何者かが来る。


「いい加減に諦めたまえ!」


「だ・・誰だ?」


「ふん・・貴様に言う必要はない」


 近寄って答える男の顔が見えた。初対面なのに怒りが込み上げてくる。理由はわからないが、ただ拘束されたことが原因での感情では無い。本能が・・心が怒っているんだ。


「クソ・・なんなんだいったい」


「貴様は、貴族を殺した容疑がかかっている事を理解しているのか?」


「どこの貴族だ?クソッタレ冒険者しかいなかったぞ」


「・・平民とは話にならないな。ミルス、ここで平民を無期限監禁しろ」


「はっ。命令に従います・・団長」


 ミルスと呼ばれた騎士が一歩前に出て答えると、あいつを団長と呼んだ。


「だ・・団長?・・おまえ、騎士団長か?」


ドン!


 騎士団長呼ばわりしたやつが俺の胸に前蹴りをする。まともに喰らい壁に背中をぶつける。


「貴様に!団長呼ばわりされる理由は無い」


 騎士団長は、無抵抗の俺を何発も蹴り飛ばす。流石に頭を蹴られた時は意識を手放しそうになる。周りの騎士達は不快な笑を浮かべながら眺めているだけだ。


 そのときだった・・・・


「団長!それはやり過ぎなのでは?」


 今場にいる唯一の女性の声が響いた。しかも聴き覚えのある声。


「おやおや、副団長殿は平民に対して甘いのでは?」


「いえ・・しかし無抵抗の者に対してここまでするのは・・・・」


 騎士団長は俺から視線を外し副団長の方に向く。


「この私をお前呼ばわりをしたんだ・・不敬罪で切り捨てないだけ有難いと思ってもらいたいね」


「ア・・アイナ・・」


 俺は無意識に小さく彼女の名を呟く。俺にしか聞こえないほどの小さな声で。


「・・ん?副団長殿。この平民が、あなたの名を呼びましたよ!」


 まさか聞き取られると思わなかった俺は驚く。だが、アイナの言葉に驚愕する。


「そんなことは・・あ・・ありえない!私の名前を呼ぶなんてあるはずがない。平民!気安く名で呼ぶな」


 アイナが俺の懐に飛び込んで来て、顎を蹴り上げてくるところで視界が暗転した。



「・・・・いたたたたたた」


 全身の痛みで目が覚めると、薄暗い独房で横たわっていることに気付く。地下に位置しているのか窓が無いため時間の経過がわからない。


カツカツカツカツ


 何者かが近寄って来る足音が響いている。すると、騎士が一人現れた。


「飯だ・・ありがたく食え」


 騎士は固くなったパンを二つ俺に投げつけて去って行く。


「なんでこんなことに・・」


 涙が出そうになったが、グッと堪える。この環境をなんとか改善しないといけない。だが現実は厳しい。あれから定期的にかたいパンを投げつけられ、最低限の食事だけで生かされている。両手が使えないため、アイテムボックスが使えない。


「ミオ達は元気にしてるかな?・・・・はぁ、会いたい」


 何もできない日が永遠に続くのではと思うくらいの時間が経っていく。


 いつからか時間と言う存在を無意識に考えないようになっている。


 定期的にくる固いパンが俺の元へ投げられた時に目を覚まし、食べ終わると目を瞑る。


 ずっとこの動作を繰り返すだけ。


 とあるパンの時に顔に光を当てられる。眩しくて顔を反らすと、いつもと違う騎士の声に呼び掛けられる。


「おい!起きているなら返事をしろ」


「・・ぁんだ・・」


「お前を釈放することになった。国に感謝しろ」


 騎士が言った言葉が理解できず、無言でいる俺は天井を見続けるだけでいると、独房扉が開き騎士が入って来る。騎士にされるがまま立たせれて独房から出されて歩かされる。


「暴れるなよ・・まぁ、そんな状態じゃ無理だけどな」


 歩くだけで全身が苦しい。いったいどれだけ体を動かしてなかったのだろう。ただ無言で歩き続ける。階段を上がり長い廊下を歩いて行くが誰とも会うことはない。


「こんなに歩いても、誰もいないんだな?」


「あぁ、王国がお祭り騒ぎだからな」


 長くこの国に住んでいるが、国中が祭り騒ぎになることは一度も無かった。


「いったい何があったんだ?」


「・・・・」


 この質問以降、騎士は何も喋らなくなった。そして薄暗い階段を登り終えて長い廊下の先に光が見えた。このまま廊下の先の光にたどり着くと建物の外に出る。


「よし・・俺の任務はここまでだ」


 騎士は、俺の両腕に付けられていた拘束具を外す。自由になった両手を久しぶりに見たまま立ち尽くしている。


「早く去れ!」


「最後にいいか?」


「なんだ?」


「釈放されたのはなんでだ?」


 騎士はめんどくさそうに立っている。


「はぁ・・・・街に出たら嫌でもわかるから、さっさと行け!」


「そうか・・すまない」


 俺は歩き出す。向かう先にあった裏口のよう通用門から出て街の通りを歩くとたくさんの出店が並び、たくさんの人々が喜びの顔に満ちている。独房から出てきたばかりの俺と状況が違いすぎて見ていられない。


 先程まで歩いて来た道を振り向いた先には王城があった。きっと王城地下にある独房で監禁されていたのだろう。とりあえず家に帰ることを優先し大通りを歩き続ける。


 歩く先に噴水広場がある。その近くには冒険者ギルドが所在するが、今は寄りたい気分じゃない。もちろんリサとカラに会いたいが、流石にこの格好じゃマズい気がする。


 噴水広場を通り過ぎようとしたら、告知板が目に入った。この告知板は、王族からの行事案内の役目を果たしている。なぜか気になった俺は内容を読むために近寄って行く。


告知


 マーカー王国は、勇者召喚の儀を滞りなく実施した。勇者達の披露パレードは準備が整い次第実施する。

なお、死刑宣告をされなかった罪人については、恩赦により一部釈放する。以上 国王スパイル=マーカー


「ゆ・・勇者召喚だと・・本当に存在したんだ・・・・それで俺の釈放理由なのか」


 俺は、釈放理由が衝撃的すぎて苦笑いしながら家路につく。着いたはずだった。


「あれ?・・そんなはずは・・こんなことはありえない・・なぜ?どうしてなんだ?」



 家路についた俺は、目の前の光景が理解できない。そこには、俺の家があったんだ。ミオ達と過ごした家が。

今は更地になり売地の看板が立っている。



 力なく座り込み、とめどなく涙が溢れてくる。頬を伝わり顎から地面へと落ちていき地面を濡らして行く。

明るかった空はオレンジ色に染まり、いつの間にか暗くなっていることに気付いていなかった俺は、背後から声をかけられる。


「あの・・大丈夫ですか?何かお困りでしょうか?」

 

「あぁ、すいません大丈夫です」


 俺は拭ってから右手を軽く上げてジェスチャーをして立ち上がる。


「そうですか・・」


 彼女は心配そう口調で言う。ちょうど月明かりのおかげで彼女の顔が見えた瞬間。


「ミオ?」


 黒髪を腰まで伸ばし、オッドアイの猫人族を見た俺は思わずミオの名を呼んだ。ミオより背は高い気がするが。


「・・え?どうして私の名を?」


「え?ミオ・・おれだよ、おれ・・ハル」


「・・ハル?ハルさんですか・・いい名前ですね」


 まるで他人行儀だ。ものすごく自然な立ち振る舞いな彼女だからきっと他人なんだろう。


「あ・・ありがとうございます。俺こそ勘違いですいません」


 猫人族の彼女は、そのまま街並みへ消えていった。その背を見送るおれは、急に孤独感に襲われてしまう。


「そうか・・ミオじゃなかったのか。もう探してくれてないのかな」


 俺の家があったはずの場所から離れて、宿屋に向かうことにした。アイテムボックスから所持金を確認すると、あの頃から減っていないため十分暮らせる額は入っている。



 宿屋通りに着くと、手頃な宿は満室だった。5件目に入った宿屋スーピーで空き部屋を見つけた。受付には茶髪茶目で愛想の良い女の子がいた。


「いらっしゃい、お兄さん」


「一泊頼めるかな?」


「銀貨1枚だよ。身分証ある?」


 銀貨1枚渡し、ギルドカードを提示すると彼女は笑顔で対応してくれる。夕食は無料だが朝食は銅貨5枚だと説明する。そのまま銅貨5枚を渡し朝食をお願いすることにした。


「はい、部屋の鍵だよ。部屋は2階の6番部屋だからね」


「ありがとな」


 彼女からカギを受け取り、受付横にある階段を上がり2階へ行く。階段を上がり廊下奥の6番部屋に入ると、ベッドとソファのある部屋だった。


 服を脱ぎ部屋の明かりを消してベッドへ倒れこむ。久しぶりの柔らかい布団で寝れる。睡魔に襲われる前にステータスの確認をすることにした。



ステータス



名   ハル (男)

種族  人族 18才

職業  冒険者 Cランク(仮)

HP 400/1000

MP 1500/1500

魔法 全属性

スキル  剣術Lv6 隠密Lv5 気配探知Lv5 鑑定Lv4 奪取Lv3

     召喚術Lv2 念話Lv2


称号 偽装者

隷属 




 暗闇の部屋でステータスを表示すると、驚き連続だった。まずは18才になっていること。2年も独房で過ごしたいたこと、冒険者ランクに仮が付いていること、隷属からミオが消えてしまっていたことだった。


「そんな・・ミオが隷属から消えるなんて」


 現実を受け入れられない俺は、ステータス表示を消して眠りについた。



 外が騒がしくて目が覚める。隣で寝てくれていたミオは、もういない。ステータスを表示させたが、隷属にミオの名前は載ってなかった。こんな喪失感には、早く慣れないとな。


 ベッドから出て、伸び切った髪を切りヒゲを剃る。支度が終わり部屋を出て1階の食堂についた頃には宿泊していた人達は朝食を摂り終えて宿を出発していた。


「おはようございます。お客さんが最後ですよ〜ふふふ」


「おはよう〜」


 昨日、受付をしてくれた女の子が居て調理場へ入っていくと、俺に朝食を持って来てくれた。


「どうぞ、パンと野菜スープです」


「ありがとう」


 朝食を食べ終えて、宿を出ようとした時にさっきの女の子が受付から顔を出した。


「もう今夜は泊まらないの?お部屋埋まっちゃうよ」


 確かに、他の手頃な宿は満室だった。野宿を避けるためには確保していた方がいいな。


「そうだね。もう一泊しようかな」


 女の子に宿泊代を支払うと、満面の笑みになる。


「ルミナ・・わたしルミナだよ」


「よろしくなルミナ。俺は、ハル」


「ハル兄さん、よろしくね」


 ルミナに見送られながら宿屋を出る。特にすることを決めてなかったが、なんとなく冒険者ギルドへ行くことにする。相変わらず街はお祭り状態だ。人で溢れそうな大通りを歩きギルドに入る。


 久しぶりのギルドだが、大きく変わっていない。窓口に座る受付嬢は、皆知らない子達だった。リサがいるんじゃないかと期待していた自分が少し恥ずかしい。


 そのまま、受付に並び順番を待つ。しばらくして俺の順番になりギルドカードを彼女に渡して、古くなったギルドカードの更新を頼んだ。


「あの・・このカードは期限切れですが・・」


「・・え?」


「2年間申請も無く活動が無いと期限が切れる規約になっています。再登録されますか?」


「そうだったか・・再登録を頼む」


「発行手数料で金貨1枚が必要なので・・すが・・」


「あぁ、金なら心配ない」


 受付嬢に金貨1枚を渡し再登録をする。受付嬢は、登録用魔法具を机上に置いて登録準備を始める。


「この魔法具に右手を置いてください」


「あぁ、こうでいいかな」


「あっはい」


 無事に登録が終わり、新たな冒険者カードを手に入れた。


「それじゃ、手続きありがとう」


「あの・・・・ハルさん」


「ん?・・なにかな?」


 突然、初対面の受付嬢に話しかけられた。


「リサさんとカラさんとは、どんな関係だったのでしょうか?」


「え?・・どうして二人のことを?」


「すみません・・わたしの受付嬢の教育をして下さったのがお二人でして・・その会話にハルさんの名前がよく出ていましたので気になっていました」


 この受付嬢に、リサとカラとの繋がりがあったことに驚く。そして、二人と俺との関係を簡単に説明した。


「そうですか・・ここだけの話なんですが、お二人は今・・王城にいます」


「な・・なんだってーーーーーー?」



 


 受付嬢からの爆弾発言が飛び出した・・・・・・






 


  

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