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8章 王国潜伏編 15 話 不測事態・・②

アクセスありがとうございます。


 ザッザッザッザ・・・・



 規則的な足取りで陣形を変える騎士に完全に囲んだ騎士は前列が大きな盾を構え、後列に槍と剣を構える騎士達に睨まれている。



「もう、お前に逃げ場は無い。武器を捨てて投降しろよ」


 まだ何もしていない真鍋が、偉そうに投降を呼びかける。


「真鍋・・お前らさぁ、相手の戦力見極めて戦い方を考えているか?」


「はぁ?・・お前のジョブは冒険者だろ!しかも平民・・そんな相手に戦略なんて不要だろ。俺のジョブは第魔導士だから、魔法1発放てばお前なんて終了なんだよ」


「・・・・そうだったな。俺は、お前らと違って冒険者スタートだったな」


 そう呟きながら、俺は魔力を増幅させていき腰を落とし構える。


『マリア、そろそろ始める。南門から街道をひたすら南へ向かうと村がある。その丘の上にある家が俺の家だから、そこまで逃げ切ってくれ』


『うん・・ぜったいに、絶対に戻って来てよ!』


『あぁ、必ず。黒い砂嵐が合図だ。気配探知スキルも忘れず発動しとけよ』


 マリアとの念話を切って、ジリジリと間合いを詰めてくる騎士達を見ながら阻害魔法を放つタイミングを伺う。


 盾を構える騎士の後ろで槍を構える騎士が俺に狙いを定めている。その間合いを考慮し凝縮した魔力を上空へ一気に放つ。


「くらえ真鍋!阻害魔法マグネティズム・ディスタールブ!!」


 都市ニシバルで放った同じ阻害魔法をここでぶっ放す。切っ先から放たれた光に目を奪われ動きが止まる真鍋達を、あの黒い砂嵐の有効範囲に巻き込み視界と聴覚を奪う。もちろん、俺の魔力の殆どが奪われながら。


 呆気に取られた様子で空を見上げている真鍋達は、足元から舞い上がる黒い砂粒に気付いていない。しばらくして、1人の騎士が声を上げる。


「うわっ・・なんだこれ!」


 その声をきっかけに真鍋達は、黒い砂粒が自分たちの周囲に集まり出していることに気付くがもう手遅れだ。

あっというまに黒い砂粒が光を奪い闇に包まれ混乱する真鍋達。


 逃げ出そうとする騎士達は、暗闇の中動き回り仲間達とぶつかり転倒していく。その状況を微かに耳で聴きながら、その場に俺はぶっ倒れた。


 もう、周囲の騎士達もその場に倒れ、この不快感に負けて吐き出すものが多数いる。光を奪われついに音まで奪われた世界に包まれた俺は、ただ魔法が終息するのを待つ。


(あいつら、無事に逃げてくれたかな?)


 そう思いながら、巻き上がったであろう黒い砂粒が地面に落ちて来て、身体に当たる感覚がある。2回目でも、この感覚は2度と味わいたく無いと呟き光と音を取り戻せた頃に立ち上がる。


 見渡すと周囲には気絶した騎士達と真鍋の姿があった。フラフラの足取りで真鍋の側に立ち、両膝から足を斬り落としヒールで傷口を塞いだ後に俺が半分以上飲んだ体力回復ポーション瓶を置く。


「ポーション代は餞別だ・・これでしばらく戦力を1人削れるだろ。魔法使いだし、チート修行すれば自分で再生できるだろ?」


 そう吐き捨てて、少し離れた場所で横たわる女騎士に近づき顔をみる。


「ん?・・・・どこかで見た顔だな」


 そのまましゃがんで、女騎士の頬を軽く叩き声をかけた。


「お〜い、起きろ。いつまでも無防備に寝ていると、イロイロと危ないぞ」


「んっ・・」


 少し反応するが目を覚ます気配はない。周囲に住民も集まり始め、女騎士とはいえ放置して去るのも男達の慰め者にされるもが可哀想と思い抱き抱え、南門の詰所に移動させる。


「さてと・・・・どうしよっかな〜」


 何かしようかと、呟いて見たが起きる気配はない。そのまま彼女の鎧を外し下着姿にさせたところで、アイテムボックスに入れている日用品の服を着させる。


「ミリナと背丈は同じぐらいか・・」


 獣人シスターズの着替えを何着か持っていたため、女騎士にミリナの服を着させて背中に背負い隠密スキルを発動して詰所を出て街道を歩く。


「・・・・これじゃ、賊の人攫いと一緒だな」


 人質として取り扱うことにした女騎士を背負い歩いていると、リルとクウコが街道を走る姿が見えた。


「「 ハルッ!! 」」


 あんな激走していたのに減速することなく、ピタッと止まり俺にくっつく2人の身体能力は計り知れない。


「リル、クウコ・・迎えに来てくれたのか?」


「ハルの魔力が膨れ上がったから、リル達は急いで来たの・・途中でマリアを見かけた」


「そうか、マリア達は家で保護するから」


「いいよ・・でも、その女は?」


 2人の視線が背中で気を失っている女騎士に向けられる。


「この子は、人質にするつもりだから連れ帰るんだ」


「ハル・・・・」


「どうしたリル?」


「可愛いからでしょ?」


「もち・・ゲフンゲフン、そんな事はないぞ?リル」


「ウソ・・この子の胸、ハル好みの大きさだもん・・わたしより少し・・」


 リルが自分の胸を触り、女騎士の胸と比べている。


「心配いらないさ。リルとクウコは、まだ成長過程なんだから揉んだら大きくなるよ」


「・・だったら早くシテ」


 リルが上着をめくり胸を出そうとするため、慌てて止める。


「いや、ここはちょっと・・帰ったらシテあげるから」


「ぜったいだよ・・約束して」


「あぁ、約束な」


 リル達とやりとりしていると、背中にいる人質がゴソッと動く。


「おっ・・起きたみたいだね?」


「いえ・・まだ気絶していますので、ご心配なく・・」


「そっか、なら安心だ」


 再び歩き出す俺についてくるリルとクウコは、くっつくこともできず俺の両手も塞がっているため手も繋げない状況にかなり機嫌が悪く、背中の女騎士にプレッシャーを与え続けている。



「・・あの、私・・降りて歩いた方が安全のような気がしましゅ・・」


「そうか、なら下りていいよっと」


 彼女を地面に立たせ、少し離れるとリルとクウコが彼女の周りをグルグル周り警戒心をあらわにしている。


「・・あの、わたしは何もしないので命だけは・・命だけはお願いします」


 リルとクウコのプレッシャーに耐えきれず、その場で土下座する彼女が震えている。


「リル、クウコ彼女は降伏したから、害を与えちゃダメだよ」


 今までの不満を晴らすかのように、2人は俺の腕に絡みつき身体を押しつけている。


「そういえば、君と昔何処かで会ったような気がするんだけど名前は?」


「うぐぅ・・リンです。リン=マードラ。王国騎士団副団長です」


「・・・・あー!思い出した!!」


 俺の声にビクつく彼女に、俺は話しかける。


「新人騎士の時、初陣で南の森に行った時は大変だったな」


「え?・・なんでそれを?」


「あの時は、もう少し早くアイナと一緒に駆け付けていれば、あんな経験せず済んだのに・・ゴメンな」


 俺は頭を下げる。


 リンは、頭を下げる俺を見て驚きながら口を開く。


「あ・・あなた様が、あの時みんなを救ってくれた冒険者様ですか?」


「・・まぁ、そうなるな。まさか、護衛の男冒険者達が裏切るとは想像もしてなかったから」


 リンは頭を下げる。もう、昔のことだからと伝えるが顔を上げた時のリンの瞳が先程と違って見える。


「あの、リンとお呼びください」


「いやぁ、さすがにそれは・・」


「貴方様に救われたこの命は、貴方様の為にお使いください」


 リンは、騎士団式の礼をする姿勢になったまま動かない。


「ハル、残念だけどこの子の意志はは決まっている見たいよ」


 リルがこっそり教えてくれるため、仕方なく了承することにした。


「リン、とりあえず暫くは、人質として扱うから・・いいかな?」


「はい。どんな処遇でも構いません。だから、貴方様のお側にいさせてください」


「そ、そうか」


 リンの変貌ぶりに躊躇いながら街道を歩き、王都からかなり離れた場所に来たところで隠密スキルを解除し歩いていると、村の方から馬車が1台近づいて来る。



「おにぃ〜!」


「にぃに〜!」


 御者台から笑顔で手を振る琴音と美音に挟まれたラニアが手綱を握りながらも、落ちそうになる2人を必死に支えている顔が真剣だ。


 馬車が俺達の前に止まると、琴音と美音が飛び降り俺の前に立ち、血痕がある服を見て慌てて美音が治癒魔法ヒールをかけて治療してくれる。



「にぃに、血が・・」


「大丈夫だよ美音・・コレぐらいたいしたことない・・しゃ」


 不意に目眩がしてフラつき、側にいたリルとクウコに支えてもらった。


「「 大丈夫?? 」」


 急にフラついた俺を皆が心配し声をかけてくれたが、問題無いと伝え荷台に乗り込むが全身が怠い。そう思いながらも心配させないよう平然と振る舞う。


 全員が乗ったようで馬車が動き出し家へと向かう。馬車から伝わる振動が気持ち悪く感じ吐き気が出てくる。


「うぇ・・気持ち悪いな」


 そう感じた俺は、目を閉じて早く家に着くことを願いながら、暗く深い場所へ意識を引っ張られていった・・。




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