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1章 はじまり 11話 帰還

 夜通しミオと陣地が狭くなった宿営地の見張りをしている時間を活用し、新たに取得した念話スキルを試し成功してミオと念話を繋げることができた。


 これに夢中になっていたが警戒を疎かにはしていない。探知気配スキルを発動し周囲の気配を感じている。今は、気配探知Lv5のせいか人の数と場所がハッキリと認識できている。


 やがて空が明るくなり朝日が昇り、宿営地を暖かく照らし始める頃にテントからアイナ副団長が出てきて自然に俺の左隣に座って挨拶を交わす。


 なんか、昨日までと違い距離感が近くなったような気がするが・・。


「さて、朝飯にするかな」


 アイテムボックスに収納していた調理セットを出して支度を整え、次にルーシーの店で買い込んでいた食材を出す。今回は日持ちする携行食だから乾燥させた物ばかりだが、その中で干し肉を多めと家で保管していた根菜類を水を張った鍋に入れて煮る。


「アイテムボックス持ちだったのか?」


 アイナ副団長が食い付くように見てくる。右隣りのミオは、目の前の肉入り野菜煮を食べたくて鍋を凝視している。


グツグツ・・・・


 だんだんいい香りが漂ってきた。ミオと鍋の距離が近い。しかも口が半開きになっていることを自覚していないミオは、せっかくの美少女がアホ猫に見える。いつの間にか左隣から居なくなっていたアイナ副団長は新人騎士達の様子を見に行って戻ってきたようだ。


「まさか野営で鍋料理を目の当たりにするとは・・」


戻ってきて、先程のイスに座るアイナ副団長は呟く。


「簡単な料理だけど、我慢してくれな」


予備用の椀に野菜多めに入れてアイナ副団長に渡す。次に肉多めにした椀をミオに渡し、残りを俺の椀に入れて香辛料の黒ペパーをひとつまみかけてやり3人で朝食を摂り終えたところでアイナが口を開く。


「ハ・・ハル、今日の行動なんだが負傷していた新人達の傷は完治していたが、失血した者が多く王都まで帰還できるほどの体力が回復していないんだ」


「そうか・・しばらくはここで野営だな。糧食はあるのか?」


「その心配は無用だ。5日の計画だったが初日でこの有様だからな」


 隣に座っているアイナは俯き横顔に覇気は感じられない。責任を感じているのだろう。


「アイナ・・・・」


 俺は冒険者でアイナは王国騎士団の副団長の立場だ。励まそうと言葉を選び過ぎて名前を呼ぶのが精一杯だった俺は、そっとアイナの頭を撫でる。


「くっ・・そんなことをされたら・・・・」


 そっと頭を撫でられたアイナは嗚咽を漏らし両手で顔を覆い肩を震わせて静かに泣いてしまう。彼女の頭を撫でながら、対応に困った俺はミオを見ると小さく頷き両腕を自身にぎゅっとする仕草をした。


 ミオの仕草を理解した俺はそっとアイナを抱きしめてあげると一瞬身体が硬直したようだが、フッと力が抜けて俺の胸元に顔を埋めてくる。


「すまない・・こんな姿を見せるべき立場ではないのにな」


 アイナが俺の胸元で呟き離れる。すると反対側に居たミオが右腕に抱きついてきて頭を右肩に擦り寄せて存在感を主張してくる。その頭を撫でると上目遣いで満足した表情になる。


 そして一夜明けたこの日は、新人騎士達の体力回復のため宿営地で過ごす。だが、回復が遅れてしまいここを出発できたのは5日後になり糧食の蓄えが底をついた日の朝になった。


 往路よりもゆっくりとした速度で移動することになり、王都南門前に辿り着いたのは日没ギリギリのタイミングだった。


 アイナが門兵との話を終えてしばらく経つと王都から多数の騎士が現れて、新人騎士達を王都内へ連れて行っていく。門前に残された俺達冒険者は立ちつくしている。


「冒険者達よ・・報酬は後日、冒険者ギルドを通し渡す。よってここで解散となる」


 冒険者達の前で述べたアイナ副団長はと踵を返す時に、一瞬俺と視線が重なり去って行った。


「レイラ達はどうする?俺達はギルドに寄ってから帰るけど」


「私たちもギルドに寄ります」


 ギルドカードを門兵に提示し王都に入り冒険者ギルドへと向かった。ギルドに入ると1階にギルド職員が数人集まって何かを話しているようで、入ってきた俺達に気付いていない。


「あの・・護衛依頼から戻って来たんだけど」


 ギルド職員達に声を掛けると、全員が一斉に振り向くと同時に・・。


「「ハル〜!!」」


 リサとカラに名前を呼ばれ抱きしめられた。


「おぅ・・ただいまリサカラ」


「おかえり無事で良かった」


 珍しくカラが先に言ってくる。いつもはリサに譲るのに。


「あぁ、生きてるよ・・ちゃんとな」


 カラの方を片腕でギュッと抱き寄せる。


「リサも心配したよ」


 リサはカラより強めに抱きしめてくる。


「わかってるよ。ありがとうリサ」


 リサの体もギュッと抱き寄せてやると、集まっていたギルド職員から一人の男が近付いてくる。


「Cランク冒険者ハル、少しいいか?」


「あぁ、ギルドマスターのダグラス様がそんな呼び方するのは久しぶりだな」


 ふんっと鼻で笑うギルドマスターだが、気にせず会話を続ける。


「ハル・・護衛依頼にいたはずの男冒険者達の姿が見えないが?」


「その件は王国騎士団の副団長様に確認してくれ。俺の口からは言えないんだ」


 腕組みをして溜息をつくダグラスはこれ以上の追求はしないようだ。


「そうか、明日にでも確認しよう。俺からは以上だ」


 ダグラスは踵を返し奥の部屋へと戻って行く。それを見送った後、そばにいるリサとカラも耳元で小さく囁く。


「これで家に帰るけど二人は仕事?」


「もう帰るよ」


 リサが、そう言うとカラも帰ると言った。


 レイラ達とはギルド内で別れて、ギルドから出た俺達4人は家に向かって歩いている。道中で気付いたがリサとカラもついて来ている。


(なぜだ・・・・)


 俺の家に着くとリサとカラが夕飯を作ってくれることになり二人はキッチンへ直行した。リビングにいる俺とミオはソファに座り、それぞれの武器を手入している。


 しばらくして、思い出したかのようにキッチンにいる二人に話し掛けた。


「なぁ〜リサカラ〜」


「「な〜にぃ〜?」」


「今回の新人騎士達の中にさ、似合わない奴を見つけたんだよ」


 リサとカラは、興味津々な感じで振り向いてくれる。


「あのな・・・・トニーがいたんだよ!」


「「えぇ〜〜〜〜〜〜!!」」


「ぅにゃ〜」


 二人のあまりにも大きい声に聴覚のいいミオのネコ耳がシュッと倒れて驚いている。


「ビックリだろ?俺も驚いたさ、あいつ騎士団入団試験合格してたの言ってなかったよな」


 護衛依頼中に起きた事を話し二人は顔を青くしていたが、トニーが無事だった事をちゃんと伝えたら安堵してくれた。


 俺たちの武器手入れが終わった頃に出来上がった夕飯をテーブルに配膳してくれていたので、4人で酒を飲みながら一緒に夕食を摂り終える。その後は、二つの寝室に俺とミオ。リサとカラでの部屋割りにして寝ることになった。




 俺達4人が家で普段通り過ごしていた同じ時間帯の王城と冒険者ギルド内は異様な空気に包まれていようとは、このとこの俺達は知る由もなかった。









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