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階段

作者: ぴかり

これは、私の結婚が決まり。自分の時間が取れなくなる前に、と思い。

以前から行ってみたかったイギリスに親孝行も兼ねて母と二人で旅行に行った時の話です。



5泊7日のツアーでガイドさんの案内の元、観光地を巡っていました。

古いロンドンの町並みに目を奪われ、舌鼓を打つ事は無かったですが事前に聞いていたので最初から期待していなかった分、不満もそこまでなく。

母と二人で旅行に来れて良かったと心から思っていました。



あの事件が起こるまでは。






海外旅行へ行くと誰もが頭を悩ませる事だと思いますがお土産に何を買うか、どのタイミングで買うか。

申し込んだツアーが団体で観光地を効率良く回るツアーだった事もあり、自由時間もほとんど無く。思っていたよりも買い物が出来ていませんでした。

最終日は朝食を済ませたら直ぐ様、空港へ向かうスケジュールだったため。

4日目の自由時間にお土産を選び切ってしまわなければいけなかったのです。


そこで、私と母はデパートで買い物をする事にしました。

レトロでお洒落な内装やエレベーターに感動しつつ、順調に買い物を済ませていきます。


「ねぇ、お母さん。お土産はもうこれでいいんじゃない?」

「そうね。一旦、ホテルに帰りましょうか」

「荷物だけでも置きに帰らないとだしね」

「そうね。あら?地下もあるみたいよ?」


エレベーターまでは少し距離があり、目の前に階段もあったので。


「行ってみる?エレベーターまで行くの面倒臭いし行くならこのまま階段で行っちゃお」

「うん。でも、やっぱり流石ロンドンのデパートだけあって階段も雰囲気が素敵ね」

「そうだね。デジカメ持ってくれば良かったなぁ」

「買い物が目当てなんだから仕方ないわよ」


地下1階へ下りると照明が落ちており薄暗く営業をしている雰囲気では無かったので。


「何か、やってないみたいだよ?」

「おかしいわね。2階も行ってみましょ」

「うん」


地下2階へ下りても照明が落ちていて薄暗く人の気配も感じなかったので。


「ねぇ、これ絶対何かおかしいよ。戻ろっ」

「何か気持ち悪いわね」


地下1階へ階段を上がり、そのまま1階へと上がったつもりだったのですが、そこには照明が落ち薄暗い地下1階や地下2階と同様のフロアが広がっていたのです。


「あれ?もう1階上だったっけ?」

「そうみたいね」


もう1階上がってみても先程と同様に薄暗いフロアが広がっており、人影も一切ありませんでした。


「これ絶対何かおかしいよ」

「でも、下に行っても意味は無いわよね」

「うん・・・もう1階上に行ってみよ」


やはりと言うか。もう1階上に上がっても薄暗いフロアしか無く。

私達は疲れと恐怖から踊り場にへたり込んでしまいました。


「ねぇ、何でこんな事になったのよっ!」

「ごめんね。お母さんが地下に行ってみようなんて言ったから」

「そうよ!お母さんが地下なんてっ・・・ううん、違うわ。私こそごめん」

「折角、結衣が旅行に連れて来てくれたのに何でこんな事になったのかしら・・・」



旅行の疲れからなのか恐怖からかなのかは分かりませんが、気が付くと二人共踊り場の隅で寄り添うように眠りに落ちていました。





コツッ・・コツッ・・コツッ────。



物音に目を覚まし、眠っていた事に驚きながらも、その物音が足音である事に気付き頭を上げようとした瞬間、私の視界に入ってきたのはスーツにシルクハット、手にはステッキを持ち英国紳士のイメージそのままの姿の男性が上の階から下りてきたのです。

本来であれば助けを求めるべく声を掛けるべきなのですが、出来ない理由がありました。

その男性は透けていたのです。


私は恐怖で震え、目を瞑り顔を自分の膝に押し付けながらその男性が通り過ぎるのを待ちました。

足音から下の階へ下りて行ったのは分かるのですが、怖くてそれ以降も目を開ける事が出来ず膝を抱えたまま震えていました。



気が付くと、上階からまた足音がコツコツと聞こえてきたので、まただ。と思い強く膝を抱え顔を膝へ押し当て震えながら通り過ぎるのを待っていると。

突然、肩を揺すられ。悲鳴を上げ逃げようとしたのですが恐怖から腰が抜けて思うようにいきませんでした。

悲鳴を上げた事で少し冷静になったのか、目の前に居る人が手に持っているのは懐中電灯で先程の英国紳士ではなく警備員なのだとその時ようやく気付きました。


その後は、警備員さんに連れられて警備員室で待機するよう言われ。

母と二人助かって良かったと話していると警察とツアーのガイドさんがやって来て、今回の事の説明をすると。


「ここは、たまにあるんです」


との事でした。

たまにある事なので慣れているのか何のお咎めも無くホテルに帰ったのですが。

買い物をしていたのがお昼頃で今は深夜の2時を回っています。

体感的には精々2時間ぐらいだと思っていたのですが12時間以上もあの踊り場に居た事になります。

翌朝、ガイドさんにお礼と別れを告げ飛行機に乗り日本へと帰ってきました。




後日、友人にお土産を渡した時にその時の話もしたのですが。

友人曰く、イギリスの階数の数え方は特殊で日本で言う2階を1階と言うそうなのです。

正しくは1階をグランドフロアと呼ぶそうなのですが。


「2階を1階って呼ぶんだから日本で言う1階はイギリスだと0階だと思うんだよね」

「うん?」

「0階だから、れいかい で、霊界」

「何よそれ」

「霊界から下りて行ったからそんな事があったんじゃないの~?」





20年以上も昔の事ですが私が経験した不思議な話です。

0階の話がどうなのかは分かりませんが皆さんも海外に行かれる際はお気をつけ下さい。




またしても真夜中に舞い降りて書いてしまいました。


階段と怪談、0階と霊界。ダブルです。

今回はダジャレが2個あるので前回の短編より2倍お得です。



ちなみに全然実話でも何でもないです( ´ー`)


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