7歳の私
柱のしるしが17コになりました
15コ目からあんまり変わってないそのしるし
3コのそれが隣り合っているからもう必要ない気がするけれど、来年も再来年もその直線は続くんだろうなあ
柱を一周するような直線が消えないでずっと伸び続けるんだろうなあ
譲れないそれは何年先も続いていくんだろうなあ。
来年も
再来年も
それは
うん。
だって
だってね
私は宝箱の中にいるからです。
宝箱の中は大変居心地がいいのです。
特等席だってちゃんと真ん中にあるんだ。
私が大好きなチョコレートもオセロもCDも洋服も周りに転がってるんだよ。
その特等席に私じゃない誰かが座っていたら私は大変悲しいですが、その椅子をひっくり返してもいい権利を私は持っています。でもその権利は使われません。誰かが私の特等席に座る事はありません。
無は有になり得ない
事はないけど、
難しい話じゃなくて
この権利を覆すために誰かが本気で知恵を働かせて答えを出しても、それは屁理屈と笑われるだけで、それが通ることは天地がひっくり返ったって有り得ない
んだってさ、
宝箱を手に入れたら
その理由は誰に聞かなくても分かるんだってさ。
心臓の音はBGMで
リズムはとりやすいけど落ち着きません
でも落ち着いたらダメなだけだ
特等席に座ったあの日の安心から、私も君も前進してきたので
柱のしるしを増やしながら、色々な物を見ていきます
新鮮だろう
すごく新鮮だろう
たまに特等席から離れたくないと思う日があります
そんな日の私は盲目です
後ずさりが出来ないから、しゃがみこんで留まることしかできなくなる
進化は赤鬼
退化は青鬼
どっちにしろ、怖いんだ
赤だろうが
青だろうが
ツノは生えてるんだし
私は桃太郎じゃないし
宝箱で泣くしかなかった。宝箱のオルゴールは悲しいメロディーにしかならなかった
そんなとき
特等席に顔を伏せてた私の背中を誰かが叩いた
顔をあげたら
桃太郎がいた
べそをかいて
きびだんごを食べて
桃太郎と手を繋いで
鬼ヶ島に行った
桃太郎が鬼を成敗する背中を私はぼけっと眺めてながら、自分は何て役立たずだとか思いながら、残りのきびだんごを食べるしかなくて、どうしようもなくて、情けなくて
情けなくて
気がつくと、桃太郎に負ぶわれながらもう家の近くへ来ていました。
きびだんごが美味しかったから
眠れない夜があったから
涙が睫毛を重たくしたから
あのまま眠ってしまったらしく
でもそれでいいって桃太郎は笑いました
鬼は山に帰ったよって
もう怖いものはないんだよって
笑いました
笑っていました
桃太郎は首に宝箱の鍵をかけていました
私を特等席に座らせて、辺りに散らばったチョコレートを私に持たせて、オルゴールを優しいメロディーに変えて、あったかいブランケットを私の膝にかけて
おやすみって
笑っていいました
桃太郎の心臓の音を
子守歌にして
また眠ってしまった
そんな日があったっていいよ
柱のしるしが7つになってから6日の話だけど
そんな日があったことを、柱のしるしが最後の1つになる日まで忘れたくないと思うよ
忘れたくないことを
忘れることはできないって
それも言い切れないことだけど
言いきれるって言い切りたいと思うよ
屁理屈って笑われるかもしれないけど
そんな事があったっていいよ
全然、構わないよ
桃太郎はそう言っていたような気がする
正義のヒーローを信じないで
童話が成立するはずないんだから
いつまでもヒーローを信じていようと思った
この消えない信用を宝箱に持ち帰って
一番目立つところに
額にいれて飾ったんだ
もっともっと
居心地のいい宝箱の中で
今日も
当たり前になりつつあるけど、揺るがない安心のベッドで眠りましょう
誰もが持ってる
消えない
無くならない
尽きない
終わらない
そんなベッドで朝まで眠るのがこの上ない幸せなんだって
柱のしるしをつける前から、これだけはよく分かっていたんだよ
ありがとうを枕にしてる
それが照れくさい僕らは
まだまだ子供なだけだから
いつか、感謝の枕投げをする日を夢にして
眠たい瞼を閉じました。
endless.