共通言語化
※この作品に出てくる団体・個人・表現・その他すべてはフィクションです。
時は2097年。社会からゆとり世代は姿を消し、平穏が訪れると思われた。
しかし、それは長くは続かなかった。
超ゆとり世代の台頭である。
俺は人事部に所属していた。
電子新聞は「ついに今年から超ゆとり世代が社会に進出」などと書き立て、不安を煽った。
それなら採用しなければ良い、――とはならないのが世の常で、万年人手不足だった当社も採用せざるを得なかった。
そして、超ゆとり世代の彼らが出社し始めた春、初めての、全社員が参加する社内会議が開催された。
社長の訓示から始まり、役員から中長期計画の説明等が行われ、そして、自由に意見を交わすフリーセッションが始まった。
早速、超ゆとり世代の新入社員川崎が発言する。
「こたびのひょうじょう、いとおかし」
言葉はわかるが意味がわからない。
これが超ゆとり世代か。俺は対岸の火事で済んでくれと思いつつ、傍観する。
重役は「なんだこいつは」「誰だこんな奴を採用したのは」とすでに頭フットー状態だ。
続いて、これもまた新入社員の桜木町が発言する。
「このレポート、ベリーホットでパッションがエクスプロージョン。スリーイヤーオンザロックだとソーシンクでソウルフル」
もはや言ってる意味すらわからない。
会議は中断され、新入社員の所属する各部署宛てに、激オコな社長から指示が飛んだ。
『こいつらの言ってることがわかるように、共通言語化しろ』
こうなると他の社員も動かざるを得ない。
各部署に各々が<共通言語化プロジェクト>や<共通言語化委員会>などを作ってその対応を進めた。
人事部の俺は社長に呼び出され、「各部署が成果を出せるようにコントロールしろ」と厳しく言い渡された。
そして、1ヶ月が経ち、第2回の全社員会議が開催される運びとなった。
会議の前に、心配した専務が俺に「大丈夫なのか?」と聞いてくる。
俺は「はい、前回と同じ失敗はしませんよ。共通言語化しましたので」と請け負った。
会議は始まった。
そして前回、皆を恐怖に陥れたフリーセッションの時間がきた。
新入社員の五反田が発言する。
「0000011000110001001000000000011、00101001001011100000110000001000」
五反田の発言に対して川崎が補足する。
「0001110000101001000000110000011000100100、00101001001011100000110000001000」
俺は彼らの発言に満足する。
しかし、社長以下重役の反応は違った。
新入社員の俺は、何故か責任をとらされて解雇となった。
00000001 あ 00000010 い ……
※暇な人以外は気にしないでください。
良くある話(短編的に)