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疑史(ぎし)古代日本の歴史  作者: 鹿島三塁手
第三章 奈良時代って何だろう
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「聖武天皇」と「長屋王」ってどういう人だったんだろう

長屋王の変は、なぜか藤原氏の私書である藤原家伝(760年成立)には壬申の乱と共に記述がありません。

 「聖武天皇しょうむてんのう(701年-756年)」家系図上は天智天皇、天武天皇の曾孫ひまごにあたり、父は文武天皇(683年ー707年)、母は藤原不比等の娘宮子(生年不詳ー754年)の間に生まれ、父の亡くなった時に6歳と若かったため、祖母である元明天皇(661年-721年)、伯母である元正天皇(680年-748年)が間に入り724年元明天皇から譲位(聖武天皇23歳)される形で即位します。

 これが平安時代だと、藤原氏の一族が強いので、6歳で即位し摂政を置くなんてこともあったかもしれませんが、この頃は不比等の後妻である美千代の一族橘家の勢力も強かったため、美千代が仕えていたとされる、元明天皇とその娘である元正天皇を立て、バランスを取ったのかもしれません。

 不比等の死(720年)の当時、息子である藤原四兄弟は、武智麻呂むちまろ(40歳)房前ふささき(39歳)宇合うまかい(26歳)麻呂まろ(25歳)という年齢でしたが、義理の母である美千代(55歳)には勝てなかったようですね。

 聖武天皇には、良く知られる不比等の娘である光明子こうみょうし(後の光明皇后)との間に、一男一女を儲けたの他にも、美千代の一族である「県犬養広刀自あがたいぬかいのひろとじ」との間にも一男二女を、別に儲けています。


 次に「長屋王ながやのおおきみ(676年-629年)」についてです。彼は天武天皇の第一皇子である「高市皇子(654年-696年)の第一皇子であり、母は天智天皇の皇女「御名部皇女みなべのひめみこ(660年-没年不明)(元明天皇の同母姉)」という、ある意味聖武天皇以上の皇統の中心に近い人物でした。ちなみに聖武天皇が即位したとき、彼は48歳だった計算になりますね。

 

 藤原不比等の翌年721年に、元明天皇がなくなります。その時に後事を託したのが、長屋王と藤原房前(不比等の二男)でした。長男の武智麻呂の経歴を見る限り、無能な人物であったとは思えませんし、彼の子孫も「藤原南家」として存続しています。

 翌年(722年)に「多治比三宅麻呂たじひのみやけまろ(生没年不詳)」が謀反誣告ぶこく(謀反の疑いありと嘘の告発)をしたとして伊豆に流罪になっています。この告発を受けたのは誰だったのでしょうか。ちなみに多治比一族とは天皇家の末裔であり、三宅麻呂の兄である「多治比嶋たじひのしま(624年-701年)は697年に左大臣に任ぜられた人物です。またその子孫は、なぜか後に藤原氏と対立し粛清されていきました。

 そして724年聖武天皇の即位と共に、長屋王は左大臣に任ぜられ、彼の没年(729年)までの功績を見る限り、貧困にある民に対して徴税を免除したり、官職に就いているものに対し、評価制度を導入し、賞罰を明らかにする(728年)など、間違った政治をしている様には見えません。

 しかし聖武天皇の即位時に、藤原氏の出身である藤原宮子に「大夫人(それまで皇太夫人とするのが通例)」と称する勅命に、異議を唱え撤回させたとあります。 とにかく藤原氏にとっては「目の上の瘤」のような存在だったでしょう。


 そして、聖武天皇が光明子との子である皇子(727年-728年)が夭折した事を、長屋王が呪詛したものとの密告を信じ、729年2月に誅殺します。これを「長屋王の変」といいます。

 ただし、当時聖武天皇には、県犬養広刀自との間に「安積親王あさかしんのう(728年-744年)がいた為、この理由も不思議な感じがします。


 あえて理由を探すなら、藤原氏が、自らの血筋である皇子がなくなった事に焦り、橘氏系の安積親王が、皇位を継ぐことを恐れて、正論を述べる政敵であった長屋王の殺害を謀った、と見るのが正しい気がします。聖武天皇の後を継いだのが孝謙こうけん天皇(後に称徳しょうとく天皇と重祚、718年-770年)なのですから。

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