溶けてく時間。
理沙と二人でお風呂に入る時間は、いつも幸せになれる。
もう二人暮らしを始めてずっと経つけれど、それは、初めての日から変わらない。
「今日、すっごく暑かったねぇ……」
お互いに休みの日で久々のデートだったけど、熱くてとうしようもなかった。理沙といちゃいちゃするときのドキドキと、勘違いしそうになったくらいに。
「ホント大変だったねぇ……」
でも、二人でいられる時間は、いつだって大好き。
言葉にしなくたって伝わる気持ちに、自然と唇が重なる。
「また、ちゅーしちゃったね……っ」
毎日数えきれないくらいそうしてきて、その度に胸の中を甘いものが満たす。
「……でも、そうするの、好きなんでしょ?」
からかうように言われて、つい拗ねてしまう。
「理沙は、私とちゅーするの、嫌?」
「もう、そんなことないよ?」
急に理沙の顔が近づいて、思わず遠ざかってしまう。でも、そのとっさの動きも、抱き寄せられて封じられる。
「嫌だったら、由実とちゅーなんてしないし、えっちなことだってしないよ?」
唇が重なりそうなくらい近くでそんなこと言われて、顔が熱くなる。のぼせたわけでもなく、ただ理沙の言葉に恋を思い出してしまう。
……ちゅっ。
リップ音が、二人しかいない浴室に響く。
二人の想いが、いつの間にか一つになって。
体も一つに溶けちゃうんじゃないかってくらい、熱を、想いを、『好き』を伝え合う。
ぬるくしていた湯船よりも、理沙の肌のぬくもりのほうが、温かくて、心地いい。
たった一瞬のことだったのに、いつの間に抱き寄せあった体が互いを溶かしてく。
「洗いっこ、しよっか」
「もー、いつもそうしてるじゃん?」
理沙の肌にドキドキされてくのも、私の指先が理沙の肌を撫でてく感触も、大好き。
いつもは理沙が先にしてくれるけど、今日は私から。
短くまとめた髪から、どんどん触れるとこが下がってく。
そういえば、とふと気が付く。
「いつもより、理沙のにおいが強い、かな?」
「今日はいっぱい汗かいたもんねぇ……臭うかなぁ……」
そんなとこは、ちゃんと女の子なんだな。そんなギャップにまたときめきそうになる。いつも私のこと、引っ張ってくれる理沙のことは、かっこいいとはしょっちゅう思うけど、かわいいなんて思うことはそんなにない。
「ううん、……ちゃんと綺麗にするし、理沙のにおい、好きだもん」
「んもう、……由実ってば……」
顔を真っ赤にしちゃう理沙がかわいくて、もっとそんなとこみてみたい。
「……駄目?好きじゃなかったら、言えないよ、こんなこと」
「ああ、もう、大好きだよ、由実」
二人の時間は、甘く甘く溶けていく。