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クロエのかくれんぼ  作者: bbbcat
8/14

僕は彼女と彼女の親友と喧嘩の理由を知る (前編)



――丘の上に建つ、坂の上高校。

 ここへ通って、一年とちょっとが過ぎました。

 この高校には、校舎へ向かう坂が、3つあって、私が使うのは中坂と言う、四季によって様々な姿を見せてくれる坂です。



  春は淡いピンクが舞い散って

  夏は陽気な陽射しに溶けていく

  秋は木枯らしに少し寂しくなって

  冬はイルミネーションで煌びやかに迎えてくれる



 5月も終盤になって、春が随分遠くに過ぎた今日この頃では、夏に向けて伸びていく青々とした葉っぱが美しいです。


 そして、坂を登りきると坂の上高校の校舎があります。

 部活動が盛んで、みんな何か大好きなひとつの為に青春を全部かけて一直線!

 私はそんな坂の上高校が大好きです。


 私は陸上部で、高飛びの選手をやっています。高飛びが大好きです。

 でも、ここ最近部活に行けていません。



 それは……戸出茂義男先輩に告白されたからです。

 戸出茂先輩は高飛びのエースで、みんなの憧れなんですが、私にはそうでもありません。

 中学校も一緒で、その時に色々あって、部活が一緒だったので、二年間そばで見て来たからです。

 その時に人間的に嫌な部分が見えてしまって……。

 彼にも、そして私にも……。



 そんなこともあって、私は告白を断ったんですが、やっぱりその先輩に憧れている子とちょっとした、いざこざがあったりして……。


 一人の女の子と上手く行っていないんです。

 私には部活に親友と呼べる仲間がいて、火村亜貴って言う女の子です。

 その子と上手く行っていません。


 亜貴は、小学生まで同じ街に住んでいて、いつも一緒に遊んでいました。

 小学校の近くに私達が基地にしていた大好きな丘があるんですが、そこから私達が上がる予定の中学校のグラウンドが見えて、そこで高飛びを飛ぶ選手を憧れの眼差しで見ていました。

 私達も中学になったら……って。

 でも、亜貴は中学に上がるタイミングで引っ越してしまいました。



 私たちは約束しました。



 きっとまた一緒に陸上しようねって。

 あの憧れの選手見たいに高く飛ぼうねって……

 そして私達は、無事に同じ高校に入って、高飛びを一緒に頑張っていました。


 ……小学生の時に私達が憧れた先輩は戸出茂先輩でした。


 小学生の時の二人の憧れの先輩を私は振ったのです。

 このことは亜貴も知っているし、二人と同じ部室に行きにくい感じになってしまったのです。


 


 そんな時にクロエと出会って、千太君と追いかけて……

 とっても楽しくて、居心地が良くて、今の日々に寄りかかってしまっています。




 千太君は隣の席の男の子です。

 特に部活に入ってないけど、風景が好きで、写真が好きな男の子です。

 カメラは初めて買ったみたいだけどW


 河内君と仲が良くて放課後なんかいつもお喋りしています。

 一年生の時は別のクラスだったけど、私は部活中、千太君が河内君と毎日お話しているのを窓越しから見ていました。

 私はそういう姿に心から良かったと思うし、少し救われる気持ちになりました。


 私はそんな男の子、千太君と、発光する謎の猫「クロエ」を追って毎日シャッターチャンスを狙っています。

 でも、スマホから、新しいカメラに持ち替えてもなかなかクロエが上手く写ってくれなくて二人でヤキモキしていますW


 昨日なんかもそうでした。――




 ――クロエを初めて見た場所は、中坂だったのですが、それ以降、クロエは見失う地点でいつも現れます。つまり、追いかけていると、どんどんどこかへ向かって進んでいく感じです。

 中坂を下り切り、橋本さんのお家に突き当たって駅側と逆に、つまり千太君と私のお家側に進むと木々津川という川があるのですが、昨日はその木々津川の橋を越えた辺りでクロエに出会いました。


 橋は2車線あり、左右に歩道もあるくらい割と大きくて、距離は丁度トラック一周くらいかな?400m位です。

 橋の入り口は学校側も住宅側も土手になっていて、いろんな部活でランニングコースとして使われています。

 また、橋の方向で校区も分かれています。

 帰宅して来る方向から言えば、右側に川を伝った東区、左側に伝った西区というように。

 私は西区で千太君は東区に住んでいます。

 クロエは西区側の土手に現れました。



 いつものように尻尾をユラユラと私達に手を振っているように揺らしてきます。



「水瀬!クロエだ‼

……走っちゃ駄目だよW」

 千太君は未だに私が条件反射で走り出すと思っています。

 確かに一瞬飛び出しそうになるんですけどW



「大丈夫だよW

千太君、シャッターチャンスだよ!D君を起こして!」

 彼の首に垂れ下がるカメラを指さします。



 千太君はギクッとシャクっとした面持ちで、私達がD君と呼ぶカメラをオンにします。

 そしてD君のレンズを左手で持ち上げて右手を横に添えて人差し指でシャッターボタンに触れます。

 きゅっと脇を占めてレンズを覗く感じはだいぶ様になってきたかなって感じですW



 その間もクロエは私達を待つかのように尻尾を揺らしていました。



 一歩二歩くらい千太君が歩いたら、クロエは後ろや横へ「ぴょーん」と飛びます。それを見て千太君は慌ててカシャカシャとシャッターを押します。

 このイタチごっこを2、3回繰り返したら、大抵の場合クロエは後ろに走り出します。

 そうしたら私の出番で、「ダダダー!」って走って追いかけるのです。

 追いかけた地点でまた立ち止まってくれたり、見失ってしまったり、それは日によってまちまちですが、昨日は見失いました。



 ここで私は、

「……ゼーゼー。」と息を切らして追いかけて来る千太君を待ちます。



「クロエ見失っちゃった!」



 私が報告すると千太君はいつも、

「……そっか、残念だったね。でも今日は……。

撮れた気がする!」

 と毎回自身あり気に返事するんです。



「……じゃー見てみよっか。」

 D君はデジタル一眼レフという優れもので、一眼レフでありながらデジカメの機能も持っているので、撮ったものがすぐに確認できるのです。



 二人で、撮った画像をスクロールしていきます。

「「……ブレブレだね。」」



 そうやって昨日も、……いつも二人でケラケラと笑うのです。

 こんな調子で、発光する猫クロエの姿は、未だにフレームに収まっていません。――




 ――二人でクロエを追いかける日々は本当に楽しいんですが、これはきっと私が楽しい方へ、楽な方へと逃げているのです。



 ……このままでは行けない。



 私は坂の上高校の陸上部、高跳びの選手です。

 私が抱える問題を解決して、また、亜貴と一緒に高跳びがしたい……そう思います。――


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