始まる!二人と一匹の一か月 (中編)
その日の帰宅中の話である。
坂の上高校は山というほどには大きくないが、丘というには傾斜の大きい中途半端な凹凸の凸のほぼほぼ頂点に位置している。
校舎の裏側は雑木林となっており、道はないが、校門を出た表側は、正面とそこから左右に直角に三股の坂道が続いていて、それぞれ、中坂、西坂、東坂と名称がある。
それぞれ、駅の位置の関係上、生徒は各々がいつも使う坂道を登って学校を目指す。
僕が登下校に使うのは中坂で、そこは桜並木が美しく、学校の宣伝のパンフなんかには春の中坂が映されたりしている。
中坂は、真ん中に二車線の車道があり、右側左側に歩道がある。
車道の反対側は生垣になっており、身長170の帰宅部の僕がちょっと頑張らないと登れないほどの高さで、生垣は特に何か植えてあるわけではなく、雑草が生々と生息している。
僕は校門を出ていつものように帰路を取っている。
基本的に、僕はこの坂を上ったり下ったりする時は足元を見ている。
特にこの時期は。
緑色のような黄色いシミを踏まないようにするためだ。
今日も嫌な感触のするシミを避けながらもくもくと下っていた。
坂道もやっと半分過ぎた所。
中腹辺りで、もう坂の終わりが目視出来るかというところまで下ってきたところだった。
下を見ていた僕の視界。
距離にして、約30メートルほど先に「シュッ」と視界の端から入ってきた青白い物体。
僕は目を疑った。
目を擦って、目を凝らして、
もしくは、目を見開いてよく見てみた。
……猫だった。
どうあがいても黒猫だった。
恐らく生垣を飛び降りて僕の前に飛び込んできた黒猫なのだが。
さきほど、僕はおかしなことを言ったと思う。青白い物体……と。
青白い物体。
……黒猫なのに青白い物体。
……これいかに?
でも事実なのである。
正確にいうと蛍光灯をつけてすぐ消した後のように、光っている。
淡く、でも確かにぼんやりと発光している黒猫がそこにはいた。
僕とその青白い黒猫は見つめあった。
……僕はこの物体が何であるのか、これまでの人生の中で出会ったあらゆるものを思い出して名前を探してみたが、見つからない。
僕は霊感が強い方ではないので、知らないだけで、死んだ生き物が霊としてこの世に出てきた場合このように発光しているのであろうか?
3歩前に近づいてみた。
だがこの黒猫は微動だにもせず、「ジッ」と見つめてくる。
「ダッ‼」と僕は音を立てて5メートルほど近づいてみた。
それでも奴は動かず僕を睨み付けた。
そこからは僕も「ム、ム、ム!」となり、動けずお互い見つめあう時間が経過した。
そんな時だった。
「タッ、タッ、タッ!」
軽快なリズムで中坂を下って来た女の子。
彼女の名前を水瀬凛子と言う。




