心の棘
今頃、貴方は幸せな暮らしをしているのかしら。
全てを投げ出して楽になるには、もう遅過ぎた。
取り返しは、もう、つかない。
多分、そうなんだ。
自分では分かってる。
擦れ違う人が、貴方に似てた。
それだけで、思わず振り返ってしまった。
……此処にいるはずがないのに。
何年経っても心から消えないのは、私の弱さか。
吹っ切ろうと、うんうん唸る。
そうするとね、愛してたはずの感覚も麻痺していくんだ。
こうやって、少しずつ忘れていく。
失っていく。
……それは、いけないことなの?
こうして、貴方が消えていく。
こうして、貴方を消していく。
もっと素直になれたら、今頃、貴方の傍にいられたのかな。
「好き」とか
「嫌い」とか
もうそんなの全部
投げ捨てて
ただ単純に
純粋に
「貴方に会いたい」って
想いだけ
連れ去ってくれないかなぁ……
今更、貴方を忘れることに必死になるなんて。