至高の聖剣。名前は忘れた
ルミエが倒れ、魔王が凄いドヤ顔を披露する。
殴りたいこの笑顔。ぶっ飛ばしてしまっても構いませんね?
「くっくっく、少しは腕に自信があったようだが、我にかかれば所詮はこの程度よ。さて、次は貴様ら二人の番だ! 我の正体を知るものを生かしてはおけぬのでな」
「やめてください! オレには妻と夫と弟と姉が居るんです!」
「ククク……残した家族に未練が……いや、待て。妻と夫!? 貴様何者なんだ!?」
おお、確かに何者なんだ。妻と夫が居るとか普通はありえねーよ。
「ま、まぁいい……とにかく始末してしまえばいいのだ! さぁ、覚悟せよ!」
「ここで死ねるか! オレには夢がある! 成人式のスピーチで紫の鏡と声高に叫ぶことだ! その夢を叶えるまでは死ねん!」
「うわ、この人最低だよ」
ジル、うるさいぞ。
「さあ、来い、魔王! ここがお前の死に場所だ!」
「え、なんで我の方が始末されるみたいになってるの」
だって勝つの100%オレやし。
「くっ、まあいい! 貴様の不運を呪え、小娘! 【サンダー・スマッシャー】!」
「ジョイヤー」
パンチで雷をぶっ飛ばして魔王に跳ね返す。
反射された雷は魔王に直撃。しかし、魔王も一応は魔王。殆ど無傷のようだ。
「チッ、中々やるようだな! 小手調べとは言え魔法を反射するとは!」
いや、反射したわけではなく、純粋にぶっ飛ばして跳ね返しただけなんだけどね。
でも、オレってどうやって雷殴ってんだろ。
そもそも雷が打たれてから反応出来るってどういう反応速度なんだろ。
「ならば今度は四方八方からの強酸の霧だ! 逃げ場はないぞ! 【アシッド・ミスト】!」
今度は魔王から放たれた霧が周囲を覆い始める。
言葉通りの強酸だ。三分もあれば人間など骨も残るまい。
「破ぁっ!」
気合いを篭めて一喝したら全部消えた。
「くっ、これだけの手練れが何故! 【ブラスト・シュート】!」
「伸びるパーンチ」
凝縮された風の弾丸が飛んできたのを、拳から飛ばした謎エネルギーで迎撃。
使ってるオレでさえよく原理が分からないエネルギーだ。
たぶん、気とかそう言う奴だと思うんだけどね。
「魔王、次からはオレが攻めていくぞ」
「チッ! 来るがいい!」
「伸びるパーンチ」
魔王の顔面に、拳から飛ばした謎エネルギー弾が直撃する。
「いったいわぁぁぁ! もそっとこう、まともな技名は無いのか!」
「超伸びるパーンチ」
「ぐふえっ、だぁぁぁぁかぁぁぁぁらぁぁぁぁ!」
「超伸びるパーンチν」
「おぼふっ」
「超伸びるパーンチZ」
「ごふわっ」
「超伸びるパーンチZZ」
「おぐわっ」
そんな感じで魔王をタコ殴りにし続ける。
「いい加減にしろ貴様ぁぁぁ!」
おおっと、結界張りやがった。これじゃ当たらないな。
しかし、流石は魔王。強度が人間とは段違いだ。
「くっくっく……これぞ我が持つ最高の防御魔法! 【ダークネス・ハイド】! 本来のものとは比べ物にならんほどに弱いが、貴様程度の攻撃は全て通用せぬぞ!」
確かに、あの結界の強度は普通の結界とは段違い。
全力を篭めれば余裕綽々で突破できるが、今までのパンチ力だと結界でかき消されるだろう。
「すり抜けるパーンチ」
「ぐふわっ」
まぁ、結界すり抜けるパンチ放つだけですけど。
「わ、我の結界を透過するなど……あ、在り得ぬ! な、なぜだ!」
魔王が混乱してるうちにトドメを刺すとするか。
アイテムボックスではなく、心の中で呼びかければそれはすぐさまオレの手に現れる。
光り輝く黄金の剣。
それはこの世界の人類が望んだ希望の光。
暗き闇に覆われた世界に差し込んだ、一筋の燦然たる煌めき。
人々の願いがこの世に像を成した、至高の聖剣。
そして、全人類の希望を背負って立ち向かう者のみが手にする事の出来る輝き。
「往くぞ魔王! これが貴様らを滅ぼしたゲッタ……ゴホンッ、希望の輝きだぁぁぁ!」
「ちょっと待て! 今なんか変なこと言いそうになっていたぞ!」
「うるさい黙れぇぇぇ!」
剣からビーム発射。よく分からないが気合い篭めると出ます。
ビームじゃなくてレーザーかもしれないが、まぁ細かい事はどうでもいい。
そのレーザーだかビームだかは、一瞬にして魔王を飲み込む。
しかし、ビームは一切の勢いを失わず、直線状の全てを薙ぎ払おうとする。
なので、地表を薙ぎ払わないように上空へと軌道を逸らす。
そしてビームは空にあった雲を吹き飛ばし、空の彼方へと消えて行った。
「ふぅ……悪は滅びた!」
ピカピカ光っててウザったいので聖剣は消す。
なんでも勇者の格に応じて光るらしいよ。
魔王倒した時は目も開けられないくらい光ってたし。
「ぐ、ぅ、うう……ば、馬鹿な……そ、その剣は……貴様……勇者か……!」
あれ、まだ生きてた。
そう言えば、あの結界って本来は対聖剣用なんだっけ。
弱体化してたとは言え、勇者として弱体化してたオレの剣じゃ仕留められなかったか。
「しょうがないな、もう一発……」
「お、鬼! 貴様は鬼か! 死人に鞭打つ気か!」
「生きてるじゃん」
魔王だからぶっ飛ばしておかないとな。
「おのれぇ! 今は退く時か……! さらばだ!」
あ、転移して逃げやがった。
まぁいいか。また弱体化するだろうし。
オレの勇者の役目は終わったんだから、わざわざ倒さなくても問題ないだろう。
「さて、帰るか」
「せやな」
「そう言えばルミエは?」
「そこに転がってる」
ジルの指差した先にはゴミの山に塗れて倒れてるルミエの姿が。
おお、まるで酔っぱらいが行き倒れたかのようだ。




