ぺんぺん草ってなんかエロく聞こえる
「さて、あたしたちは料理を披露したけど、タカネン坊主は?」
「あー、オレはダメ。料理出来ないんだよ」
「ふむ」
何しろ台所を滅ぼしちまったからな。
さすがにこの店の台所を滅ぼしちまうわけにはいかないだろう。
「料理出来なくてもアイデアは出せるじゃん。そのアイデアをこのジルが形にしてやろうと言うのだ」
「へっ……いいのか? オレのアイデアはとんでもねえぜ?」
「ほう……面白い、聞かせて貰おうか」
「オレのアイデアが着弾した跡にはぺんぺん草すら生えず、ガイガーカウンターがガリガリ言うぜ?」
「確かにとんでもねえ」
アイデアって言うか、ファットマンとかリトルボーイって感じだが、まぁいい。
「ま、タカネン和尚が料理出来ないなら仕方ないかあ」
「そうそう、仕方ない」
うむうむ、と頷く。
料理なんか出来なくたって仕方ないのさ。
さて、喫茶店で暫くのんべんだらりとお茶を楽しみ、特に出来る雑談も無くなった頃。
「いい加減、ルミエの性転換問題を解決しよう」
「ああ、そう言えばそんな設定もあったな」
オレが女の子になってるのもそれが原因だったな。
ルミエを男に戻さない限り、オレも男に戻れないのである。
「設定言うたんなや」
だって、積極的に解決しようって意思が見えないんだもん。
自分から男に戻る手段探そうって言う意気込みが見えないんだよ。
なんつうか、男には戻りたいけどこのままでもいいかな? って言う雰囲気が。
流されてる感じするんだよね、ルミエから。
「で、タカネン僧正。世界を旅してまわってたんだし、何か強力な解呪の魔道具とか知らないの? ユニコーンの呪いを解けるくらい強力な奴」
ふむ……心当たりは幾つかないでもないが……。
ユニコーンの呪いを解くには無理だろうな。
「うーん……知らねえな」
「そっか」
どうしたもんかねぇ。
ジルもルミエもなんか悩み始めてるし。
「……」
「……」
「オレは何も知らねえ」
「え、うん、分かったから」
「……」
「……」
「オレは何も知らねえ!」
「いや、分かったっての!」
「……」
「……」
「オレは知ら」
「だから分かったって言ってんだろハゲ!」
ジルがキレた。キレやすい子供って怖いわ……。
「しかし、こういうのは魔法使いの領分だよな。人体に詳しい魔法使いに心当たりないか?」
「んー、あちきは知らんねぇ。医者に掛かって何とかなるようなもんではないし」
「だよなぁ」
一応トモエさんにも聞いてみるか。
トモエさんも強力な魔法使いなんだし。
「トモエさーん、ルミエの呪いを解く方法に心当たりありませんかー?」
「呪い?」
「はい、呪い。ユニコーンの呪いで女にされちゃったらしいんですよ」
「ああ、なるほどね」
んー、とトモエさんが顎に手を当てて少し考えたかと思うと、目を閉じる。
「うーん……そう言うタイプかぁ」
もうわかったのか。はえーな。
「どういうタイプですか?」
「肉体を女性に転換したのは永続的な物と言うか、肉体を変成させたんだね。つまり、魔法で女性になってるんじゃなくて、元から女性だったってことになってる」
つまり、体を取り替えたようなものか。
「そして、それを永続的に保つ順次更新型の呪いがかかってる。元は体の怪我や、魔法による変性を解除する為の呪い、と言うか加護なんだけどね。かける時の肉体情報に依存するタイプの奴だから女性に戻っちゃうんだろうね」
なるほどな。
まず体を本質的に女へと変換してしまう。
そして、その状態を記録する魔法を使う。
体が変性したり怪我をしたら、その記録を元に肉体を再生する。
そうする事で女の状態を維持してるわけか。
「かなり面倒な型の呪いだね。しかもかなり高度。精神から魂まで完全に女性化って言うのはめったにないね」
「えっ」
精神から魂まで女性に……?
「あの、それってつまり、今からルミエが男性に戻っても……」
「うーん、自分の肉体と精神に乖離が生じるから精神的に問題が出ると思うよ? 魂も女性の物に変質してるから、拒否反応で病弱になるだろうし。魂と精神まるごと戻せるなら話は別だけど」
これ完全に詰んでね?
どうにもならんよね?
「……ルミエ、諦めろ」
「そ、そんな……な、なぜ……どうして……」
あー……また泣き出してしまった……。
「だって、魂まで男性に戻す性転換の道具なんて思いつかねーし……」
「あちきもさすがにそんなスゲーのは持ってないなぁ……」
うん、完全に詰んでる。
どれくらい詰んでるかって言うと、九回裏ツーアウト出塁者無し、点差100点、チームメイト全員負傷って感じだ。
もちろんこっちが負けてる側でな。
イチローならなんとかしてくれそうだが、生憎医者のイチローは居ないのだ。
「まぁ、ルミエの折り合いがつくまで、オレも女のままで居るからさ……ほら、その、頑張りなよ」
「そ、そうそう。あたしも応援するから。あたしはルミエの味方だよ」
「僕も出来るだけ応援するよ。相談にならいつでも乗ってあげるから」
とにかくルミエが不憫でならない。慰めてやらなくては……。
「そうだ! ルミエ、飲みに行こう。オレの奢りでさ。好きなだけ飲めよ、今日は」
「今タカネン大僧正がいいこと言った! そう、飲みに行こう!」
「は、はい……うう、今日は飲んでやるーっ!」
そう、飲むがいいさ。飲んで、嫌なことはみんな忘れちまえ……。
ぐでんでぐんに酔えば、嫌なことも忘れられるさ……。




