ジャア・アズナブル
「我を崇めよ! 我が名は一文字高音! 超絶最強美少女なり!」
ずばーん、と店内へと飛び出し、ジルに指先を突き付けて叫ぶ。
「病院行け」
ジルが冷たい。
「でもまぁ、うん、確かに美少女。いや、美幼女。なぁ……スケベしようや……」
「お断りします」
どう考えてもオレが受け側ですよね。
そもそもジル相手にそんな感情が湧かないって言うね。
「確かにお似合いです、勇者様。いえ、しかし、その、お似合いと言うのも……」
「オレは気にしない! 性別の壁を超越したところに居るからな、オレは」
「はぁ、そうですか……」
ルミエは細かいことにこだわるんだから。将来ハゲんぞ?
いや、性別が変わった事が細かい事かは怪しいが……。
「ところでタカネん」
「……タカネンって言うと、なんか小坊主みたいじゃね!? タカネンや、お経を唱えなさい、みたいな。これってトリビアになりませんかね?」
「ハッ! た、確かに……これは九分咲きは間違いない……満開も行ける!」
マジかよ、トリビアの種もらえちゃう? やっべーな。
「まぁ、冗談は置いといて、お前ら何やってんの?」
なぜかジルはエプロンを身に着けている。
ルミエも同じ鎧の上からエプロンを身につけている。
「ヒマだから店の手伝い」
「へー……」
ヒマだからってやり始めるもんなんだろうか。
なんて考えてると、オレの後ろからトモエさんが戻ってくる。
「ありゃ、お手伝いしててくれたの? ありがとね」
「あちきは全然気にしないってばね。ところで、拙者の料理を見てくれ、どう思う?」
「凄く、おいしそうです……」
ジルって料理出来たんだなぁ。
おろしハンバーグっぽいけど、実にうまそうだ。
「食っていい?」
「はい、タカネ、Jリーグハンバーグよ」
「いっただっきまーす」
「もりもり食べて強くなってね」
どこらへんがJリーグなのかはよく分からないが、とにかく食べてみるか。
さっそくナイフとフォークで切り分け、一口。
「ンまい! おろしポン酢がシャッキリポンとして……この、ぬるみが……」
「ぬるみ……?」
「なんだよ、ルミエはぬるみを知らねーのか。旨み、甘み、苦味、酸味、塩味の五大要素の他に隠された味だ」
「他には、怨み、辛み、嫉み、えぐみと色々あるぜよ。驚いたがか?」
何やら三つほど明らかに味ではないものもあったが、まぁ気にしない方向で。
「けど、このハンバーグ本当にうまいな」
「Jリーグ的に考えて、年取る薬混ぜ込もうかと思ったけどやめといた」
「オチとしては弱いな」
「そう言うことするのは料理に対する侮辱だからね」
おお……ジルがなんかカッコイイこと言ってる……。
いっつもこんな感じで真面目だったらいいのに。
まぁ、ジルは20秒以上シリアスすると、SAN値が削れるから仕方ないな。
「まぁ、とにかくうまいな。トモエさんも食べてみます?」
「どれどれー? ん……美味しいね。ジルちゃん料理上手だね」
「でしょでしょ? あたいってば本能的に良妻賢母タイプだから」
「え? なに? 聞こえなかった」
「アテクシの怒りが有頂天になった。お前マジかなぐり捨てんぞ」
「オレのログには何もないな」
そんな感じでおふざけしつつ、今度はルミエへと目線を向ける。
「ルミエたんの料理はー? オレ、ルミエたんの料理食ってみたし」
「あー、ぽっくんも食べてみたいでござる!」
「じゃあ僕も僕も。僕も食べたい」
「い、いえ、私の料理など皆様に振る舞う程の物ではなく……」
ふむ、賛成と否定の両方が出たか。
「まぁ、多数決だからな。賛成が否定の数万倍居るし」
「そんなに人がいましたか!?」
「聞きたいかね? 昨日までの時点で99822人だ」
「いや、いませんよね! そんなにいませんよね!」
「こまけぇこたぁいいんだよ。とにかくルミエも料理!」
「うう……しかたありません……味の保証はできませんが、努力させていただきます……」
そんな感じでルミエが料理を始めたのを楽しく見守る。
ちょいとぶきっちょな感じで、あわあわしながら料理してるのが高得点。
トモエさんとジルも同じ意見らしく、噴きこぼれそうな鍋に慌てるルミエを見てニヤニヤしてる。
そして、数十分をかけてルミエの料理が完成する。
出来上がったのは、スパゲッティだ。
でっかいミートボールが入ってて、某怪盗三世が某偽札を巡る城で食べてたのと同じ奴だ。
「スパゲッティ・ウィズ・ミートボールです。その、貧相な料理ですが……」
「まぁ、とにかく食ってみようぜー」
おのおの取り分けてさっそく試食。
他にも試食したいと喫茶店の来店者が言うので、十人ほどでちょっとずつ試食だ。
「うん……うん……」
「ど、どうでしょうか?」
「うん……こう、リーズナブルな感じがしていいな。オレは好きだよ」
実に庶民的な感じがしてオレは好きだ。
こう、がっつり食いたい時の気分にしっくりくる感じ。
「そ、そうですか! あの、味の方はどうでしょうか?」
「リーズナブルだな」
不味くは無いが、飛びぬけて美味いわけでもなく。
程ほどにうまい。ありていに言うと、普通。
「……それ以外にはないんですか?」
「じゃあ、アズナブル」
「アズナブル!?」
「なるほど、三倍の安さ、と」
「そんなに安く在りありませんよ!?」
まぁ、とにかくルミエの料理は程々に食える事が分かった。
うん、それだけ。
Q.タカヤの性別が変わるとどうなる?
A.特に何も変わらない。
Q.しいて言うなら?
A.馬鹿さ加減が加速する
Q.他には?
A.みんなと一緒にお風呂に入る事を可能とする




