表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらり異世界生活記  作者: 国後要
婚姻届けは破れない
82/128

動物にだって俗物は居る

 ジルが我が家に加わったところで何か変わる事は無く。

 日々は平和に過ぎていく……のだが。

 生憎と今日だけはそうはいかなかった。


 四頭立てのどでかい馬車が、ユニコーンに乗った女騎士に先導されて我が家にやって来たのである。

 そーいえば、ジルが後で馬車が来るとか言ってたなぁ……。


「おい、そこの貴様。ここが勇者タカヤ・イチモンジの家か?」


 で、そのユニコーンに乗ったピンク髪の女騎士が横柄な口調で問い質してくる。

 ジルの護衛騎士かなんかだろうか。

 まぁ、ジルに護衛なんかいらないだろうけど。


「え? なに?」


「耳が遠いのか? ここが、勇者、タカヤ・イチモンジの、家か! と聞いている!」


「ええ? なんだってぇ?」


「ここが勇者の家か!?」


「とんでもねぇ、あたしゃ勇者だよ」


「は?」


「耳は遠くなるし、便所は近くなるしで、歳は取りたくねぇなぁ。もうちょっとゆっくり喋ってくれたらわかるから」


 ヒマなので庭でゴロゴロしていたのだが、こんな面白いものが来たとあっちゃあ遊ばずにはいられない。

 真面目そうな騎士はからかうと面白いのだ。


「で、なんだって?」


「し、失礼した! タ、タカヤ、私だ。覚えているか?」


「え? あんだって?」


「だぁぁぁぁぁぁ! ふざけるのもいい加減にしろ!」


 胸倉掴まれてガックンガックンとゆすられる。

 おお、痛い痛い。


「分かった。ふざけるのはやめる」


「この妙な付け髭も外せ!」


 変装のためにつけたヒゲとヅラも取られてしまった。


「で、あんた誰?」


 見たところ年齢は二十代に入ったくらいだが、こんなねーちゃんの知り合いは居ない。

 しかし、ユニコーンに乗れると言うことは……まぁ、需要はあるよね。


「私だ。ルミエだ」


「誰?」


「……わ、私だ。ほら、ルミエだぞ? 遊歴中の騎士で……」


「……誰?」


 本気で心当たりがない。

 ルミエって言う名前にも一切心当たりがない。

 遊歴中の騎士とやらにも全く心当たりがない。


「ははは……いいんだ、私なんて……その程度の影の薄ささ……」


「……なんか、ごめん」


 どうやら傷つけてしまったらしい。

 とりあえず慰めつつ、一応思い出そうと三秒ほど努力をしてみる。

 が、やっぱり思い出せないのでジルを呼び出すことに。





「おお、ルミエよ。死んでしまうとは情けない。二度と蘇らぬように、貴様のはらわたを食らい尽くしてくれるわ」


「王様は王様でも魔王とか斬新すぎる。全滅するとガチゲームオーバーとは」


 クソゲーすぎるな。

 いや、コンピューターRPGの原典に立ち返ってみれば正しいのかも。

 あるいは現実なら死んだらそこで終わりだしな。


「で、ジル。このルミエとやらはオレと知り合いらしいが」


「へー。わりとどうでもいい」


「オレもわりとどうでもいい」


 二人で妙なポーズをとりつつ言い放つ。

 そしてルミエとやらが泣きはじめる。


「あー、いーけないんだーいけないんだー。せーんせーにゆってやろー」


「へっ、オレわるくねーし。ルミエが勝手に泣いたんだし」


「せんせー、タカヤくんがルミエちゃんを泣かしましたー」


「あっ、せんせーにチクったなー」


 と、幼稚園児ごっこをするのだが、やっぱりルミエは泣き続ける。


「どーすんの、これ」


「さぁ……?」


 しかし、二十過ぎた大人が座り込んでめそめそ泣くって言うのも中々シュールな光景だな。

 なんて思っていると、ルミエの乗ってたユニコーンがルミエの頬を舐める。


「コルム……慰めてくれてるのかい?」


 心温まる光景じゃないか。


『ブヒヒヒ! めそめそ泣くルミエたんは可愛いのう! 後で慰めてやらんとなぁ! ブヒヒヒ!』


 ユニコーンが俗物じゃなければだが。


「ジルさんや、あんた動物の言葉分かるようになるかね」


「余裕」


 アイテムボックスからジルが頭巾を取り出してそれを被る。


『ブヒヒヒヒ! ルミエたんのほっぺは柔らかくておいしいのう! 涙も甘露じゃ! ブヒヒヒヒ!』


「うわぁ……」


 ユニコーンきめぇ。


「ルミエ、このユニコーン殺していい?」


「え、ええっ!? そ、それはいけません! コルムは私の相棒なのです! 何より、ユニコーンは清らかなる獣! 殺せば神罰が下ります!」


「タカヤ、ユニコーンって清らかな獣なの?」


「ただの処女厨」


「なるほど。なら問題ない。よし、殺そう」


 即断即決すね。

 ジルがデスサイズをアイテムボックスから取り出す。


「お、お許しくださいお嬢様!」


『そうじゃそうじゃ! ワシを殺せば神罰が下るぞ!』


 ふむ、と少し首をひねり……。


「女神アリなんとかー! コイツ殺していいー?」


『了承なのだー』


 おお、一秒で了承された。


「今日の晩飯は馬刺しだな」


「桜肉って美味しいよね!」


『め、女神様! なぜワシを見捨てたもうた!』


『だってお前きもちわるいのだー。そろそろユニコーンも代替わりしていい時期なのだー。それに、勇者の助けになるために作ったのに、役立たずだったのだー』


 へー、オレのために作られたんだ、コイツ。

 ……オレ男なのに?


『別にユニコーンは純潔の人間しか載せないわけじゃないのだー。純潔の女性しか載せないのは、ただの趣味なのだー』


「ああ、つまり、コイツはマジモンの処女厨と」


 救いようがねーな、ホント。


『ぐぬぬ……だ、だが、ワシとてそう簡単に殺せはせん! 矮小なる人間の身でワシを殺せると思うな!』


「フッ、我輩の辞書に不可能の文字は無い」


「それ落丁本だから取り替えて貰ったほうがいいと思うぞ」


「突っ込むんじゃない。とにかくアチキはお前ぶっ飛ばすくらい余裕で出来るんじゃ。覚悟せい!」


 そういってユニコーンに襲い掛かるジル。

 逃げ出しつつ、雷を落としたりとかし始めるユニコーン。


「晩ごはんまでには帰ってくるのよー。あと、すぐに始末すると鮮度が落ちるから、生け捕りにしてねー」


「分かったー!」


 それを見送りつつ、オレはへたり込んでいるルミエに手を差し出す。


「とりあえず、お茶淹れますんで」


「あ……はぁ……」


 ジルも速く帰ってくればいいんだがな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ