もういらない
毎日うだうだと過ごして、さすがに変わり映えもしない毎日には飽きてくる。
とは言っても、それを変える気力も無い。
あともうちょっとしてから、なんて思って惰性で過ごして早一か月。
「あー、ひまだぁー」
「タカヤさん、そんなにヒマなら送られてくるファンレターのお返事とか書いたらいいんじゃないですか?」
「いやー、あれはめんどくさくて……」
オレは一応世界を救った勇者なわけで。
その住所やなんかは一応秘密にしてるんだが、やっぱ完全に隠しきれるものではない。
なので、オレの家にはファンレターとか贈り物が届いたりする。
一通や二通ならお返事くらい出すんだが、流石に毎日何十通にもなると返事を出すのも苦痛で……。
なので、最近は見もしないで適当に放置してる。
悪いとは思うが、こっちもいらん苦労はしたくないのだ。
そんな話をして暫く経った時。
我が家に唐突に来客が来た。
「どちら様?」
家の扉から顔を出してみれば、そこには銀髪の女の子。
オレよりちょっと年下くらいか。15歳くらいかな。
「ここに来ればニートになれると聞いて来ました。養ってください」
「帰ってください」
働かざる者、食うべからずだ。
オレだって家事はやってるんだ。
洗濯はさすがにやれてないが、共用スペースの掃除とかな。
第一に見知らぬ子供を養う道理はない。
「いやいや、まずはお試しでいいですから」
「押し売りじゃないんだから、足挟むのやめて?」
「お家に入れてくれください。チミとアチキの仲じゃないか」
「お前の事なんぞ知らん」
「ひでぇ」
本気で心外そうな顔をしてるが、どっかで遭った事があるんだろうか?
うーん……この銀髪は目立つが、銀髪の知り合いは何人か居るし……。
服装も地味でありがちなものだし。
顔立ちは整ってるが……。
「ん、んー……? ちょっと、こう、髪をこうしてくれるか?」
もしや、と思って、自分の髪をオールバックにする仕草をする。
「しょーがネーな、タカヤんは。あっしのデコが拝めるのは旦那だけですぜ」
そういって、その子が髪を上げてデコを晒した時、ようやっと自分の中の記憶と、目の前の女の子が一致した。
「お前ジルか! なんでこんなとこに居るんだよ!」
「うちのダディが行って来いって言うから来た」
「そうなのか。まぁ、よく分からんが入れよ」
ジル。ファミリーネームは知らん。
銀髪でなんか強い剣士。旅の途中で遭って、少しの間だけ一緒に冒険をしたものだ。
それ以来一度も遭って居なかったが、いきなりここに来るとは。
なにがあったんだろうかと思いつつもジルを家に招き入れ、リビングへと案内する。
「すみません、秋穂さん。お茶お願いできます?」
「あ、お構いなくー。構うんならコーラとポテチ」
ねーよ。
「あらあら、またお妾さんですか?」
「ちがいますから!」
「お妾さんになったら養ってくれるそうだからなってやってもいいぜ」
「ならんでいいわ!」
相変わらずコイツの口調は安定しねーな。一人称すらコロコロ変わるし。
「で? いきなり何の用だ? 偽装結婚しろとかいうんじゃあるまいな」
「いやー、そんなことは言わないけど。ここに来たら養ってくれるって言うから」
「養わねーよ!」
「ケチなこと言うなよ。理想の男性のタイプとは違うけど、これでも我慢してやってんだから」
「失礼な奴だなお前は。こっちにだって選ぶ権利があるわい。そもそも理想の男性のタイプってどんなんだよ」
「ロジャー・ムーア」
「ジェームズ・ボンドなんかいねーよ! そもそもマイナー過ぎてボンドファンくらいしか知ってる奴いねーよ!」
そして、こいつは、実は転生者だ。
コイツの中身は日本人なのだ。
気付いたらこの世界に転生してたとか何とか……。
……ん? そう言えば、コイツの名前って、ジルだよな?
「……なあ、お前のフルネームって、ジル・ジャメシュ・エイミヤ?」
レンの家の書庫にあった、作者の頭がおかしいイソップ寓話集。
その作者の名前は、ジル・ジャメシュ・エイミヤだった。
思い出してみれば、絵とかなり似ているし、銀髪なのは一緒だ。
「あれ、なんで知ってんの?」
あってたよ……!
「よくもあんなキ印小説を!」
「お許しくださいタカヤ博士!」
「しょうがない、許す」
別になんか不利益被ったわけではないしな。
「で、ここに来た理由はなんなんだ? 正直早々に帰って貰いたいんだが?」
「え、っていうかマジでわからんちんなん?」
「分からんわい」
「手紙読んでないの?」
「読んでない……もしかして、なんか手紙出してたのか?」
「ウチのトーチャンが手紙を出してたはずなんだが……」
「なんて手紙だよ」
「友好の証に娘を上げるので、どうぞ妾にでもなんでもしてやってくださいって」
「…………マジ?」
「マジ」
「マージマジ?」
「マジーロ」
「ちょ、ちょ待てよ」
「キムタク乙」
「そう言うのは今はいい。ちょっと、それ、どういうことなんだ?」
「いわゆる政略結婚って奴じゃん」
オレもう何も聞かなかったことにして昼寝したいよ……。
急に出かける用事が出来てしまいました。
24時まで毎時投稿を続ける予定だったのですが、断念させていただきます。
帰りは日付の変わる直前になると思うので、感想返しなどはそれからさせていただきます。




