昼寝
教会の神父さんに相談して、式の予約を取り付け、親密な知り合い……もそんなにいないので話を回して。
そんな風に準備を終えて、結婚式がやって来たのは、シエルちゃんが結婚式をしたいと言い出して三日後だった。
その結婚式も、特筆して言うことはない。
実際、今回の結婚式もさして真剣なものではなかった。
まぁ、シエルちゃんを納得させるためだけの結婚式だ。
やってる事自体は本格的なものだったけどね。
正直に言ってしまうと、身内を集めてパーティーをしたと言っても過言ではないだろう。
シエルちゃん本人は楽しそうにしていたし、それでいいのだろう。
誓いの言葉は言ったけど、誓いのキスとかはしなかったしな。
まぁ、そのくらいのものだ。
正直、今回も婚約パーティーみたいなものだったわけだ。
……しかし、結婚する事が完全に確定になってんな……。
まぁいいけどさ。別に三人とも嫌いじゃないし、むしろ好きだし。
流されてると言えば流されてるけど、それもそれで構わない。
深く考えなくてもいいさ。バカになって生きてみりゃ楽しいもんなんだから。
「いやー、三人との結婚も終わったなぁ」
幼女ハーレムかぁ。うわー、死にてー。
まぁ、これで諸々の事は終わったし、ぐだぐだまったりと行こうか。
ここ最近は色々と大変だったし、グダグダ行こうぜ、グダグダー。
ぐだぐだする為に縁側で転がる。
今まで散々頑張ったんだ。オレがグダグダしたって、誰も文句なんか言わない。言わせない。
そう言えば、みんなはどうしてるんだろう。
あの魔王退治の旅の最中に出会ったみんなは。
アレックスは何をしてるんだろう。強い奴を求めて、旅に出たはずだけど。
アリエルは何をしてるんだろう。復讐は終えて、故郷に帰ると言ってたけど。
他のみんなも、どうしてるんだろう。レンは、ここに居るけれど。
「そうだ、そのうち、みんなに会いに行ってみるのも、悪くないなぁ」
昔を懐かしんでみるのも、悪くない。
皆で酒を酌み交わして、苦労話なんかしてみたら、きっと楽しいだろう。
そう思いながら、オレは今の自分の回りにいる皆を見る。
庭先ではレンとアリシアちゃんが二人で剣の稽古をしてる。
そこまで真剣なものではなく、ちょっと本格的なチャンバラごっこをしているような感じ。
中々楽しそうだ。あとで参加してもいいかもしれない。
視線を背後へとやれば、リビングのソファでは秋穂さんが編み物をしている。
編んでいるのはマフラーだ。数からして、みんなの分を編んでいるのだろう。
そして台所へと目をやれば、そこではシエルちゃんとトモエさんが楽しそうにおやつのケーキを作っている。
甘い匂いと、少しビターなチョコの香り。チョコレートケーキだ。
おやつの時間が少し楽しみ。
平和だ。
これが幸せって奴なんだろう。
そう思ったところで、腹の上に重みがかかる。
何かと思ってそちらへと視線を向ければ、そこには黒猫がちょこんと座っていた。
「おー、ロザリア。どうした。遊んで欲しいのか?」
あそべ、と端的に伝えてくるロザリアの声に応えて、オレはロザリアを抱き上げてやる。
腕にかかる重みは、最初に拾った時よりも少し重い。
「ツンデレな奴だなぁ、お前は。ちょっと大きくなったか?」
拾ってからまだほんの少ししか経っていないけれど、ロザリアはどんどん大きくなっている。
抱っこしてやれば、手にかかる重みは最初の頃とはぜんぜん違う。
ロザリアも成長してるってことだ。いずれ成猫になって、子供を成すのだろう。
「ん? 猫じゃらしで遊びたいのか?」
みーみー鳴いて、猫じゃらしで遊べ、と言ってくる。
なんだかんだで遊ぶのは好きなのだ。
オレはそれに応えて、猫じゃらしでロザリアと遊んでやる。
ふりふりと揺れる猫じゃらしの動き。
その動きにロザリアが追随して追っかけまわす。
飽きもせずにそうやって遊んで、そのうち疲れたロザリアがオレの膝の上で寝始める。
ネコは自分勝手なものだ。こういう所もかわいいものだ。
「昼寝か。オレも昼寝するかぁ」
暖かな昼下がり。その陽気の中で昼寝をしないなんてもったいない。
だから、オレは再び寝っ転がって、自分の腕を枕に目を閉じる。
みんなの声と、生活の中で生まれる音を聞きながら、静かにまどろむ。
起きているような、寝ているような。
そんな曖昧な境界の上で、夢うつつに。
言葉にしづらい不確かな幸せ。
朝目覚めて、二度寝をする時のようなふわふわとした感覚。
そんな幸せに包まれるように、オレは暖かい陽気を浴びながら眠りに落ちていく。
何か楽しい夢を見たい。
ちょっと退屈で、でも楽しい。そんな毎日のような夢を。
現実の続きを夢の中でも見たいなんて、わがままなのかもしれないけど。
まぁ、楽しいのだから、仕方ないよね。
そう思いながら、オレは完全に眠りに落ちて行ったのだった。
最終回みたいだけど別に最終回ではありません。
最終回が近いから追い込みとして連続更新してるわけでもありません。




