観光どうでしょう
そう、観光を続けて、その次にやって来たのは、この辺りではいちばんの名所だと言う寺だ。
お山の上にあって、その頂上からの眺めが凄いんだとか。
そう言うわけで頂上に登って、その絶景を眺めていると、あちこちに面白そうなものが見える。
どこに行くか迷うな、と思っていると、アリシアちゃんも同じことを考えているらしい。
レンはと言うとその場所に行くこと自体には興味無さげだが、皆で行くこと自体は楽しいらしい。
「よーし、ここはいっちょ、サイコロで次に行く場所を決めるか。宮沢賢治」
宮沢賢治が博奕打ちみたいになってしまった。
「中々いい案だな。それなら不満も出まい。と、いつから錯覚していた?」
「なん……だと……」
「うん、それにどこに行くことになるかわからなくてドキドキするね」
「目によって行く場所はどうする? 宮沢賢治」
「お前に任せる。と、いつから錯覚していた?」
「じゃあ、お前が決めてくれ。宮沢賢治」
宮沢賢治が他人任せのダメ人間に!
あるいはこの場に宮沢賢治が居るみたいな状況に。
「あー……えーと……孝也、お前に頼む。と、いつから錯覚していた? ダメだなこれでは。そうだな……私は絶対にやらん。と、いつから錯覚していた? これもダメだ……」
話が進まないので、結局オレがやる事に。
「じゃあ、1が出れば、遠くに見える謎の櫓! そこには何がある! 2が出れば、やたらでかい煙突のある建物へ! その煙突の用途は何なのか! 3が出れば、あのでっかい川まで見物に! 4が出れば、ここよりも高いあの山の頂上へ! 5が出れば、遅くなるのも拙いしレンの家に! 6が出れば、覚悟はいいか? オレは出来てる。あらゆる手段を使って最速で我が家にいったん帰宅、そしてすぐさまUターン! 宮沢賢治!」
そう言うわけで、オレの所持品であるサイコロを振った。
「あれ? 結婚式もう終わったんですか? 速かったですねー」
我が家に帰って来れば、出迎えてくれたのはやはりシエルちゃんだった。
「いや、その、なんていうか……全てはサイコロの導きのままに……」
「?」
オレはそんな事しか言えなかった。
オレたちはいったい何をやってるんだ……。
で、その後本当にUターンしてレンの家に帰って来たんだった。
疲れた……本当に疲れた。
テンプラーフライヤーよりも、走った方が速いからって、レンとアリシアちゃん抱っこして全力疾走したし。
「……オレって、ほんとバカ。宮沢賢治」
「……分かって居たことだろうに、孝也。勢いに身を任せるとロクな事にならない……と、いつから錯覚していた?」
「分かって居ても、やりたくなっちゃうんだ……宮沢賢治」
ああ、本当に、オレ達はなんて無駄な時間を……。
「まぁ、とにかく、帰ろう……オレは疲れた……腹も減った……宮沢賢治」
「そうだな……母上が夕餉を作ってくれているはずだ……と、いつから錯覚していた?」
晩飯抜きの可能性があるのか……そう思いながらも、オレ達は家の中に入るのだった。
「あら……観光に行ってきただけのはずなのに、どうしてそんなにお疲れなんですか?」
割烹着姿の秋穂さんがまぶしい。
どうしよう、何故だか秋穂さんが途轍もなく優しい女性のように見えて来た。
「勢いって……怖いですね……宮沢賢治」
「宮沢賢治? どなたですか? レン、知っていますか?」
「母上が知らない事は私も知らないに決まっています……と、いつから錯覚していた?」
「はい?」
ダメだ。わけが分からない。
「罰ゲーム終了だ。観光は終わったんだ。だから罰ゲームも終了だ」
「あ、ああ。これでやっとまともに話せるな」
あれって結構疲れるんだよな。精神的に。
「まぁ、とにもかくにも、母上、お腹が空きました」
「はいはい。夕飯は出来ていますよ」
秋穂さんマジ良妻賢母。これで頭がもうちょいまともだったら……。
ああ、それから、年齢相応の見た目だったら……。
なんでオレの周りには年齢相応の見た目の人がいないんだ……。
トモエさんには完全に脈ないし……。
「くひひ、人生ってつれぇな」
「タカヤ、だいじょうぶ?」
心配そうにアリシアちゃんがオレの事を見上げてくる。
はぁ……アリシアちゃんの将来に期待しよう……。
え? レンの将来?
「…………」
「あら、孝也さん。どうかなさいました? そんなに私の事をじっと見つめて」
レンの将来はなんか暗そうな気がするんで、期待するのはやめとくか。
「おい、何か失礼なことを考えなかったか?」
「いや、別に?」
まぁ、秋穂さんは薬の影響だって言うし、そのせいだろう。
いや待てよ。今からでも解毒すれば……。
「そう言うわけで、秋穂さん。この薬を飲んでください」
「まぁ、媚薬ですか? ではいただきますね」
どうして媚薬ですか? って聞いておいて何の躊躇もせずに飲むんだ。
「孝也、一体何を飲ませたんだ?」
「俗に言うエリクサー」
「……またとんでもない物を出してきたな。それも腐るほど転がってるとかではあるまいな」
「オレもさすがにそんなに沢山は持ってねえよ」
オレって貧乏性だから、エリクサーは最後まで使わない性質なんだよね。
まぁ、ラスボス倒しても使われないままとかザラなんだけど。
「ふぅ。それで、どうしていきなり薬を?」
「いや、薬のせいでそんな風になってるって言うなら、解毒した瞬間に成長するんじゃないかな、って」
まぁ、見てわかる通り、全く成長してないけど。そこまで都合よくはいかないか。
ていうか、成長しなくなる毒薬っていったいどんな毒薬なんだ?
……脳下垂体を破壊するか、成長ホルモンの受容体を破壊するか、しか思いつかないな。
でもそんなことしたら、下手しなくても死ぬような……。
「まぁいいか。秋穂さん、晩ごはんにしましょう」
「ええ。さあ、どうぞおあがりになってくださいな」
さーて、晩飯はなんだろなー?
そのままにするか、成長させてあげるか、胸だけ成長させてあげるか。
とてもすごく迷う。どうしよう。
14日の17時に予約投稿してた……。




