罰ゲームは厳しくないと面白くない
まぁ、観光と言っても、特に観光地でもない場所で見るものはさほど多くなく。
ぶらぶらと散歩して、面白い物を見つけたらちょっと見てみる。
そんな感じで時間を潰していると、あっという間に夕方になってしまった。
「は、ははは……や、やっと、やっと帰って来れた……宮沢賢治」
「ああ……終わった……終わったんだ……私達は、ちゃんと帰って来れたんだな……と、いつから錯覚していた?」
「なん……だと……」
まだ終わっていないって言うのか、オレたちの辛く厳しい観光は……。
「か、観光って、こんなに大変な行事だったんだね……」
どうしてただの観光だったのにオレたちはこんなに疲労困憊になってるんだろう。
こんな事になった理由を思い返してみる。
そう、あれは……今から三十六万……いや、一万四千年前だったか。
まあ、いい。
オレにとっては、ついさっきの出来事だが……。
君たち(?)にとってってはたぶん、明日の出来事だ。
「……君達って誰だ?」
「……孝也、お前は疲れてるんだ。休め」
その通りかもしれない。
さて、それで何があったかと言うと……。
それは昼食を取って観光に乗り出した直後の事だ。
「ただ歩き回るってのもヒマだし、しりとりでもしよう」
ヒマだったのでそんな事を提案した。
無言で歩き続けるって言うのはなんか気まずいし。
かといって雑談できるほど話題が豊富にあるわけでもない。
なら、しりとりでもしてた方がいい。
「しりとりだったら私しってるよ。シエルにおしえてもらったから」
「レンも分かるよな?」
「無論だ。魔王退治をしていた時、お前の唐突なしりとりに一番付き合わされたのは私だ」
そう言えばそうだったな。
最初はボロクソに負かしてたんだけど、後になってからは強くなってきたんだよな。
「せっかく三人いるんだし。罰ゲームをやろう。ビリが罰ゲームってのも芸が無いし、二位が罰ゲームな。で、罰ゲームは最初に決めておいて、紙に書き出しておこう」
いわゆる勝ち抜き戦で、これは高度な戦略性を必要とされる戦闘だ。
つまり、早々に脱落して罰ゲームだけは回避するのか。
あるいは、勝利を目指して誰かを蹴落とすのか。
あるいは、ある程度の言葉を消費してから脱落する事で他の誰かの足を引っ張るのか……。
実に戦略性の高いしりとりと言えよう。
「いいだろう。鬼畜な物をやらせてやる」
「ソフトなので抑えとけよ。あんまやるとめんどい」
昔旅してた時は、無茶の効くような間柄だったから鬼畜な罰ゲームやったなぁ。
女湯に突撃して来い、とか。
……今考えると、レンを女湯に突撃させても何の問題も無かったな。罰ゲームになってなかった。
「罰ゲームかぁ……うん、わたしも一生けんめい考えてみる」
そう言うわけでしりとりが始まる。
「ビール」
「ルーベンス」
「スール」
「ルルイエ」
「エール」
「ルーン石」
「帰服し奉る」
「ルートビア」
「アール。面積の事だ」
「瑠璃」
「リール」
「涙雨」
「ウラジミール」
オレがレンをルで攻め立て、レンがそれに的確に返答を返し続ける。
やるじゃないか、オレのル攻めをここまで回避するとは。
ちなみにアリシアちゃんは初っ端からレンにウ攻めを喰らって脱落してる。
「ル、ルーメン……あ、いや、待った。今のはちょっとしたミス……」
「ダメだ。お前は負けたんだ」
「クッ……仕方あるまい」
そして、レンの引いた紙に記されていた単語は酷く端的なものだった。
そして、その端的な言葉には尋常ではない厳しさがにじみ出ていた。
即身仏になる。
書かれていたのはそれだけ。
しかし、その罰ゲームがとんでもなく厳しいのはよく分かる。
「こ、この罰ゲームを書いたのは誰だ!」
「あ、それ私」
え、アリシアちゃんが書いたの?
「アリシアが書いたのか!?」
レンが書いたんだと思ってた……。
即身仏なんて厳しすぎる罰ゲーム、レンくらいしか書かないだろう。
「うん。すごく厳しい修行だって聞いたから、罰ゲームにぴったりだと思ったんだ」
「ちょっと厳しすぎるんじゃないかな……」
即身仏になると言ったら、それは誤解を恐れずに言うと、自殺してミイラになるってことだ。
罰ゲームとして厳しいなんてレベルではない。
「まぁ、これは厳しいなんてレベルじゃないから、別のにしようか」
「そ、そうだな。別のにしよう」
そう言うわけで、レンが新しく紙を引く。
さて、今度の罰ゲームは何かな?
エクストリームスポーツ・ハラキリ。
あ、これはオレが書いた奴だ。
二回連続で厳しいのを引くなんて運の悪い奴だ。
「……これはもしや、切腹しろと言うことか?」
「介錯は任せろ」
名刀ハエ叩きを取り出しつつ言う。
名刀ハエ叩きは街中で出しても怒られないんだぜ。
まぁ、その代わりに馬鹿を見る目で見られるけど。
「まぁ、冗談だけどな。ほら、別の引けよ」
「……全く、貴様らは」
結局、レンが次に引いたのは語尾に、と、いつから錯覚していた? ってつけるものだった。
これもオレが書いた奴だ。
その後もしりとりは続き、オレは語尾に必ず宮沢賢治をつけることに。
これもオレが書いた奴だった。
アリシアちゃんは、その場で百回転してから800メートル走をやって、危うくゲロインになりかけた。
これはレンが書いたものだった。
そんな風になりながらも、オレたちは観光を続けてんだ……。
それで、その後は何があったっけ……。




