表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらり異世界生活記  作者: 国後要
台所大往生編
PR
46/128

穴を掘れ。とにかく掘れ。意味は無くても掘れ

「お待たせ、サンドイッチセットだよ。今日のスープはミネストローネ。体が温まるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 たっぷりとトマトが使われたミネストローネはうまそうだ。

 サンドイッチをいただく前に、ミネストローネを一口いただく。うん、うまい。

 

 そしてサンドイッチにありついていくのだが、ため息が出てしまう。

 午前中いっぱい頑張って働いて一万ゴル。

 確かに悪くない稼ぎではある。むしろ割のいい仕事だ。


 しかし、ちょっと前までなら全然そんなことは無かった。

 オレにとってはほんの数十分で済むような仕事で数万ゴルが手に入った。

 ドラゴンを倒せば軽々と数千万ゴルが手に入った。

 

 あー……今更になって、あの時とかあの時とか無駄遣いしなけりゃよかったと思う。

 あの時に大金をばら撒いたりしなけりゃ、こんな風に苦労はしなかったろうに。

 後で悔いるから後悔って言うんだなぁ、ほんと。


「あーあー……智に働けば角に立って、情にさおなんとかすれば流されて、とにかく世の中は住みにくいな」


 この言葉の意味はよく知らんが、この状況じゃ間違いじゃないだろう。たぶん。


「それを言うなら智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。だと思うよ」


「ああ、そんな感じでしたっけ」


 適当に言ったらトモエさんが訂正してくれた。

 トモエさんはホント物知りだな。


「金策のために奔走してるんだってね」


「そーなんですよ……。無駄遣いしてるわけでもないのに、どうして金欠になるのやら」


「そりゃまあ、出費が多いからなんだろうね」


 身も蓋もねえや。


「なんか、割のいい仕事とか知りません? 適度に危険なのならやりますけど」


「うーん……僕の紹介出来る仕事で、実入りのいい物となると、ロクでもない仕事ばっかりだよ?」


「……具体的には?」


「意味も無く穴を掘り続ける仕事とか」


 意味も無く穴を掘り続けるのに給料がもらえる仕事って何?


「あの、穴を掘り続ける仕事ってどういう仕事なんですか? いえ、仕事の内容は分かるんですけど、意味は?」


「無意味って言ったでしょ? 意味なんかないよ?」


「なんでそんな仕事で給料がもらえるんすか」


「無意味な事をしている人間を見ると最高に楽しいんだって」


 ただの性悪じゃねえか。

 どう考えても貴族の道楽とかだな。受けるのはやめとこう。

 面倒ごとになりかねないし、不愉快だ。


「ちなみに、すごく可愛い子だよ。見た目は僕と同い年くらいかな」


「すいません、ちょっと詳しく聞かせて貰っても?」


「言っておくけど、既婚者だよ? あくまで見た目だし。実年齢はもっと行ってるよ」


「チッ、つまんねー」


 あー、どっかに優しくて、オレより一つか二つ年上で、エロ可愛くて、美人で、オレにべた惚れで、尽くしてくれて、お金持ちで、めんどうなしがらみが無い。

 そんなお姉さんいないかなー。ぜひとも結婚したいのに。

 あーあー。ほんと世の中うまくいかねーなー。


 そんなことを考えていると、からんからん、と店のドアベルが音を立てる。

 誰かが来店したのだろうと思ってそちらに視線を向け……。


「ぶほあっ!」


 ミネストローネふいた。


「トモエさーん、この子にごはん食べさせてあげてくれませんか? お金は払いますからー」


「うん、いいよー。でもその前に体を洗っておいで。シエルちゃん、お風呂に連れてってあげて。場所は分かるよね?」


 店内に入って来たのはシエルちゃん。

 うん、それはいい。それはいいんだ。

 ちょっと服が汚れてるくらいで、今朝見た時と全く変わってないし。

 そう、問題は、シエルちゃんの連れて来た子供。


「わかりましたー。それじゃあいきましょーか?」


「む、分かった。我に少々力さえ戻れば湯など使わずとも、浄化の法で体の汚れ程度落とせるのだが……嘆かわしい話だ、魔王たる我がこの体たらくとは……」


 無闇やたらと偉そうな口ぶり。

 小汚い格好に、薄汚れた体。

 年齢はおそらくだが五歳くらいの幼女。

 そして、ついさっき路地裏で見かけたガキンチョ。

 

 どう見ても魔王です、本当にありがとうございました。


「魔王?」


「あ、いや、えっと……ち、ちが……その、あ、あの……あ、そ、そう! 我が名はマオ! マオだ! 覚えておけ!」


 ちょっと苦しい言い訳だな……。


「わかりましたー。マオちゃんですねー」


 まぁ、シエルちゃんは素直な子だから、余裕で納得してるけど。

 ……アホの子とか言うな。素直な子なんだ。ちょっとぽんこつなだけなんだ。

 決してアホの子ではないんだ。覚えておけ。


「……マオちゃん、ねえ……」


 ここでオレは、そいつは魔王だ! と叫ぶべきなんだろうか。

 それとも、武士の情けとかその辺りで黙っててやるべきなんだろうか。

 そう思いつつ、シエルちゃんに連れて行かれる魔王を見送る。


「……魔王が元気になりますよーに」


 ちょっと悩んだが、信じて貰えるか怪しいので黙ってる事にした。

 ついでに、武士の情けで祈ってやった。


「どうしたの?」


 と、それをトモエさんに見とがめられた。

 まぁ、いきなり祈り出したら気になるのも当然か。


「いや、さっきの子、物乞いっぽかったですし。せめて幸あれと思って」


「なるほど。じゃあ、僕も祈ってあげようかな。可愛くなっちゃった王様に幸あれ、ってね」


 そんな感じで適当だけど、それなりに真剣に祈ってみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ