成り行き任せ大作戦は最強である
おしかけ女房さんを連れて自宅へと帰る。
どうして、こんなことになってしまったんだ。
わけがわからないよ。
「あの、なんだか焦げ臭いですけど……」
「ああ、台所が滅んでさ」
「滅んだ!? え、滅んだんですか!?」
「うん、滅んだ」
「どういうことですかそれ!?」
「見てみれば分かると思うよ」
そういって、シエルちゃんを連れて台所へ。
そこには全体的に焼け焦げた台所があった。
「な、なんですかこれ……爆弾でも爆発させたんですか?」
「うまくかまどに火がつかなくってさー。めんどくさいから火炎魔法使ったらこんな感じになっちゃって」
「か、火事になっちゃいますよそんなことしたら!」
「うん、なりかけたよ。なんとかしたけど」
いやー、あれはビビった。
けっこう威力絞ったのに、一瞬でフライパンの卵は炭化したし。
火事になりそうになったから、水をぶちまけて消火して。
それで、オレに料理は向かないと悟ったのだ。
「もうっ! これじゃあご飯も作ってあげられないじゃないですかっ! お掃除します!」
「あ、うん。なにすればいい?」
「あ、タカヤさんは待っててください。お掃除は妻の役目ですから!」
「ああ、うん……」
とは言ってもシエルちゃんだけにやらせるのもどうにもなあ。
けどオレがへたに手伝ってもロクな事にならないし。
どうしたもんかなぁ、と悩んでいると、ふとある事に気付いた。
「成り行きに任せたけど、台所は片付くな。やっぱ成り行き任せ大作戦スゲェ……」
さすが、この世界に来てから常に実行し続けていた作戦。信頼度がハンパじゃないぜ。
「あ、タカヤさん。お昼ごはんは食べますか?」
「ん? ああ、食べるよ」
掃除をしているシエルちゃんの質問に答える。
朝ご飯はサンドイッチだけで済ませるから、昼はがっつり食べる派なんだよね。
「何が食べたいですか?」
「そうだなぁ。うーん……」
「そ、それとも、わたし……? なーんて……」
「……シエルちゃん意味わかってんのそれ?」
「えっと……ぎゅって抱き締めあうんですよね?」
色んな意味で涙が出そうになった。
「よーし、じゃあシエルちゃんを食べちゃおうかなー。ぐわおー!」
「ひゃー!」
シエルちゃんをぎゅーっと抱っこ。
うわ、腕にすっぽり収まる感じがすごく心地いい。
「よっしよっしぃ。お昼ごはんはどっかに食べに行こうか。一時から仕事だしね。仕事場に行く途中で食べた方がいいんだ」
「あ、そーなんですか? じゃあ、私はお留守番を……」
「いや、シエルちゃんも行くんだよ?」
なんでナチュラルに留守番?
「あっ、そーでした! あのあの、何食べにいくんですか?」
「シエルちゃん何食べたい?」
何時もは行きつけの食堂で食べるんだけど、あそこは荒っぽい客も多いし、別の店に行った方がいいかな。
「えっとですねー、うーん……おいしいもの?」
すげぇ……こんな玉虫色の回答聞いたことない……。
「あー、なら、シエルちゃんの好きな食べ物は?」
「あ、ジャガイモ好きです!」
「ジャガイモ?」
「はい! 茹でたジャガイモが好きなんです!」
シンプル過ぎて連れて行く店に困る。
「そ、それ以外では?」
「トモエさんの作ってくれたピザが好きです」
「ピザかぁ、いいね」
昼ごはんにはちょうどいい感じだしねぇ。
……昼ごはんもトモエさんのお店かぁ。まぁいいけど。
「トモエさんって料理上手だよね。シエルちゃんは上手なの?」
「トモエさんにたくさん習いました! トモエさんにはまだまだ及びませんけど、がんばりますよー!」
ふぁいとおー、と言った感じで拳を振り上げるシエルちゃん。
ちっちゃい子供って、和むよね。
「よーし、じゃあ、掃除がんばってトモエさんのお店行くかー! オレも手伝うぞー!」
「タカヤさんお掃除出来るんですか?」
「出来ないよ?」
「えっと……私がやるから、おとなしくてみててください」
オレは心に色々と深刻なダメージを負った。
その後、後は職人を呼んで修繕して貰うしか無い程度に掃除を終えて、オレとシエルちゃんはトモエさんの喫茶店にやって来てた。
「いらっしゃい。あれ、タカヤくん。シエルちゃん返しに来たなら受け付けないよ? ちゃんと幸せにしてあげてね」
「あーはいはい。今度は昼ごはんを食べに来たんです」
「あ、そうだったの? ご注文は?」
昼時だからか、少しばかり込んでいる店内。
その店内の適当な席に座りつつ注文を告げる。
「ピザお願いします。シエルちゃんもピザだよね?」
「はいっ! おいしいのおねがいします!」
「任せておいてよ。とびっきりおいしいの食べさせてあげるからね」
ぐいっ、と腕まくりをしたトモエさんを見て、ふと思いついた事を口に出す。
「トモエさん、膝って十回言ってください」
「え? 膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝、膝……言ったよ?」
「オレ達が注文したのは?」
「ピッツァ」
納得いかない。
「よし、じゃあ作るね」
「はーい。あ、考えてみると、このお店でお客さんになるの初めてですっ!」
「お、そーなのか。じゃあ、今日は記念日だなー。おなか一杯食べなよ」
「お言葉に甘えます!」
「よっしよっしぃ」
シエルちゃんの頭を撫でる。うん、いい撫で心地。
なんてことをしていると、この店の常連客がシエルちゃんがやめちゃったことについて問い質す事態に。
それにシエルちゃんはちゃんと説明をして、オレはロリコン野郎と罵られた。
納得いかない。




