将棋も賭け将棋があったりする
あれからいろいろ。
手紙を届けに行った神殿での土産話というほどでもない話をしたり。
土産物についてちょっと話したり。
買ってきたお土産のクッキーでおやつにしてみたり。
そして、夕飯はちょっとお高いレストランにごはんを食べに行ったり。
そんなこんなであっという間に時間は過ぎて、もはや夜の帳も落ち切った時刻となった。
寝るにはちょっと早いが、やる事も無くて寝るしかない。
そんな感じの微妙な時刻。
何か暇潰しでもあれば、と思うのだが、やっぱりそんなものは無い。
どうしたもんかなあ、と首を傾げていると、レンが何やら箱を乗せた板を持ってやって来た。
「なんだそれ?」
「将棋だ。知っているか?」
「お、知ってる知ってる。出来るのか?」
暇潰しにちょうどいいな。レンもヒマだったんだろう。
しかし、そんなもんがあるなら最初から出して来ればいいのに。レンも人が悪いな。
「無論だ。強いぞ」
「やろうぜやろうぜ」
スキルの恩恵を受けては居ないけど、暇つぶしに将棋はけっこうやってたんだ。
10歳の幼女に負けるほど弱くはないぜ。
そしてオレはボッコボコにされた。
「うおお……な、なぜだ……こんな……そんな……馬鹿な……こんなの……ありえない……ありえない……!」
ぐにゃあ……って気分だ……なぜだ。
強すぎるぞ、レン。
「打ち手が滅茶苦茶だな。確かに悪くはないが、定石を知らねば簡単に勝てはせんぞ」
「うぬぬ……こうなれば、必殺技を使うしかないようだな」
「必殺技……?」
「往くぞ! 奥義! 盤面返し!」
将棋盤の端っこを持ち上げて駒をざらー。
「ああーっ!? き、汚いぞ孝也! それでも男か!」
「勝てばいいんだよ!」
「今のは人として負けたぞ!」
確かにその通りかもしれない。
「はぁ、オレの負けか……チェスなら負けないのに」
「む、そうなのか?」
「ああ、めっちゃ強いぞ」
そう言うと、アリシアが目を輝かせてリビングから出て行った。
そして、息を切らしてチェスボードを手に戻って来た。
「も、持ってきたよ! チェスボードとチェスの駒! やろ!」
「ああ、いいけど……」
どうしてそんなに慌ててるんだ?
そう思いつつ、チェスボードの上に駒を並べて行く。
「私が最初ね。こっちをこう」
「んじゃオレはこっちをこう」
「それじゃあここをこう」
「ならオレはこう。はい、オレの勝ち」
「え?」
「いや、オレの勝ち」
まだ勝負は決してないけど、このまま最善手を打ち続ければ最短で十八手、最長でも七十四手でオレの勝ちが確定する。
それを証明するようにチェスは進んでいき、五十手ほどでチェックメイトをかける。
「わー……ほんとに勝っちゃった。でも、なんでショーギはあんなに弱かったの?」
「チェスはギャンブルの一種だから」
ギャンブルスキルに該当する遊びだから、異常に強くなれるんだよね。
ポーカーとかもかなり強くなれるし。
でも、将棋はその対象外だから強くなれないのだ。
「つまり、何か賭ければ強くなるのか?」
「多少はな」
金が絡んだ状態の勝負だとギャンブルスキルの補正を受けられるから、多少は強くなる。
でも、チェスのように最善手が分かるほどではない。
これは止めた方がいいんじゃないかな、って言うのが勘で分かるくらいだ。
「お前も難儀な性格だな。賭け事でなくては本気になれんとは……」
「別にそういうこっちゃないんだがなぁ……」
純粋にギャンブルに該当しないから恩恵を受けれないってだけで……。
そこらへん、オレってちぐはぐなんだよな。
チェスはやたらめったら強いのに、将棋とかになると途端にド下手くそになるって。
まぁ、そんな感じで暫く時間を潰して、寝る時間に。
今日もいろいろあったなあ。
特に家に帰って来た時は驚いた。何しろリビングの壁がなくなってたし。
それから台所で……なんだ、頭痛が、する……。
思い出してはいけない事のようだ……忘れよう……。
そう思いながら、自室のベッドに倒れ込む。
ふー、シーツが気持ちいい。体も綺麗にしてきたから、なおさら気持ちいい。
今日は遠出をした帰りだったので、風呂に入って来たのだ。公衆浴場だけどな。
ここらは気候が乾燥してるから、毎日入らなくても特に不快ではないのだ。
それに遠いから行くのめんどいんだよね。
「さあて……寝るか。明日も楽しい日だといいな」
ベッドに潜り込み、シーツを被って目を閉じる。
ほんと、こんな楽しい日が毎日続けばいいのに。
そして、オレはゆっくりと眠りに落ちて行った。
「よくぞ来た勇者よ! さあ! 我に復活の祈りを捧げよ!」
「寝させろよチクショオオオ!」
またもや見覚えのある魔王城の魔王の間。
そこでオレは、ここにオレを呼び出したのだろう魔王に怒鳴りつけた。
楽しい日は欲しいが、こんな面倒くさい日はいらん!
24時間24話連続投稿と言ったが、キリがいいので25話連続投稿に。
今日はマジで疲れた。もう二度とやらない(たぶん)
今後は1日1話くらいの更新になると思います。
別作品の更新もそろそろ始めますしね。




