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だらり異世界生活記  作者: 国後要
郵便配達編
38/128

人工呼吸はキスではない

「はうあっ!?」

 

 びくんっ、と物凄い勢いで体が震えて意識が覚醒する。

 そして、オレの顔の目の前にはアリシアちゃんの顔があった。

 

「……ア、アリシアちゃん? 何をなさってるんでしょうか?」


「え、えっと……呼吸が止まってるから、人工呼吸をしないといけないって、レンちゃんが……」

 

「あ、ああ、そう……大丈夫、大丈夫だから、離れて? ね?」

 

 ふー……やべーやべー……意識が無い状態とは言え、色んな所に喧嘩を売りそうになったぜ。

 マジでやばかった……。

 

「ええと……何があったんだっけ?」

 

 そう思って起き上がると、そこは台所だった。

 アリシアちゃんの失敗で、ところどころ焦げてるな。

 どうしてオレはこんなところで意識を失ってたんだ?

 

「なにも覚えていないのか?」


「レン。ああ、何も覚えてないんだ」


「……そうか、ならばそれが幸せだ。もう忘れろ」

 

 え、なにそれ。凄い気になるんだけど。

 何があったんだ……? 思い出せ、オレ。

 くっ……なんだ……頭痛がする。

 思い出すなって、本能が警鐘を鳴らしている。

 舌の上に残る、冒涜的な味を忘れろと叫んでいる。

 

「一体、何が……」

 

「もういい。もういいんだ、孝也。無理をするな……」


「レ、レン……オレは……オレに、何が……」


「いいんだ。もう、いいんだ……あとは、私とシエルに任せておけ……お前にあんな思いはもうさせない……」

 

 よくわからない。

 だが、泣きそうな顔でもういいと言うレンの姿を見ると、オレは何も言えなくなっていた。

 ……忘れよう。何があったのかなんて。

 思い出すなと、オレの本能も言っている。

 だから、忘れよう……。

 

 

 

「ええと、それで、何があったかはよく分からないけど……なんでアリシアちゃんは落ち込んでるんだ?」

 

 視線の先にはどよーん、という擬音が凄い似合いそうな感じで体育座りをするアリシアちゃん。

 キノコとかカビでも生えてきそうだぞ。

 何があったんだ?

 

「まぁ、いろいろあるのだ」


「いろいろって?」


「いろいろあるのだ」

 

「いやだからいろいろって」


「いろいろあるのだ!」


「お、おう……」

 

 よくわからないが迫力で押し切られた。

 

「とりあえず、台所も職人さん呼んで直してもらうしかないな……」

 

 焦げたり水浸しになったりしてるくらいだから、根絶やしよりはマシか。

 とは言え、また出費が増えるな。

 台所さん魔改造計画を遂行する必要がある気すらしてくるな。

 魔改造が無理なら、こういうの直す魔法でもあればいいんだがな。

 

「まぁ、高望みしても仕方ないか……」

 

「そ、そーですよね。高望みはいけませんよね。だから、アリシアちゃん、そんなに気を落とさないで……」


「……でも、私……タカヤをあんな目にあわせちゃって……」

 

 なんなんだ……?

 

「し、仕方ないですよ。剣が使えて、お裁縫とかも出来るんですから……私はお裁縫できませんから、お相子ですよ」


「そ、そうだぞ。私はピアノなんぞは弾けんのだ。気を落とすな。十人十色というだろう?」

 

「えーと、よくわかんないけど、レンの言う通りだ。みんな違ってみんないいんだ。それもアリシアちゃんの個性だよ」

 

「そ、そうかな……?」

 

「うん、そうだよ」

 

 何か欠点があったとしても、それもまた人の魅力って言う奴だ。

 なんでもできる完璧超人とか居たら怖いし。

 

「じゃ、じゃあ、私が料理作ったら……」


「ヤメロ!」

 

 ……はっ、オレは何を……?

 

「やっぱりダメなんだ……ううん……いいんだ……私、他のところでがんばるから……」

 

「い、いや、今のは言葉の綾だよ。料理の味見くらいお安い御用だって」


「……ホント?」


「許してください」

 

 あれ、なんでオレは断ってるんだ?

 

「もういいんだ、孝也。これ以上やさしさで自分を傷つけようとするな」


「そ、そうですよ、タカヤさん。そのやさしさはタカヤさんを傷つけてしまいますよ。……味覚的な意味で」


 え、なんなん? 何があったん?

 

「まあ、とにかく……アリシア、すまないが今後台所への立ち入りを禁止させてもらう」


「うん……いいんだ……それが普通だと思うから……」

 

「……よくわからないが、まぁ、そんなに気を落とさず。そ、そうだ、今日は何か美味いものでも食べに行こう! 台所も滅んでるしな!」

 

「うん……」

 

 な、なんで落ち込む?

 

「孝也、お前はもう黙れ」


「お、おう。なんかすまん」

 

 どうやらオレが喋るだけで事態が悪化するらしいので黙っている事に。

 暫く女の子たち三人のやり取りを黙って眺める。

 

 数十分後、アリシアちゃんは落ち込みから立ち直る事に成功した。

 しかし、一体なんで落ち込んでたんだ? 料理に関係する事っぽかったけど。

 

 ……まぁ、考えても分かんないし、それはそれでいいか。

 とにかく、アリシアちゃんが立ち直った事の方が大事だ。

 うん、それでよしとしよう。

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